四曲目
またもや毎日更新ならず。
次からはちょっとだけがんばる!
二日目の昼。
オレは、洞窟の入り口の手前にある茂みでドジ・・・いや、ドニという奴と一緒に見張りをしている。
でも、もしかしたら犯人は透明人間なのかもしれないと思い始めているところだ。
いや、それとも見間違いとか。
「こないんだけど」
「やっぱ、透明人間なんすかね」
「リスの見間違いなんじゃないかな」
「そうっすね・・・。巨大リスだったら見間違えるかもしれないっす」
こんな会話をひそひそとやり取りする事6時間。
何にも起こらない。仕舞いには雨まで降り出した。
「お前、雨男だろ」
「違うっすよ。これは不吉な事が起こる兆候かもしれないっす」
「それより、お腹空いた」
「じゃ、これあげるっす」
ドジはオレに固いパンと硬いチーズをくれた。
この硬いは尋常じゃない。ドジ曰く、
「新入りは硬すぎて歯が折れちゃう奴もいるんすよ。そいつらは入る資格がないって事で、最後に幹部達にグサッと・・・」
だそうだ。
でも、運のいい事にオレは折れなかった。
あと、ドジは最初に聞いた言葉-――あの暗号を教えてくれたりもした。
看守に聞くと、ドジは言語に関しては最強らしい。5カ国語ぐらい覚えてるらしい。
でもオレが習ったのは、まだAからLにあたる部分だけだ。
次は、MからZを教えてもらわないと・・・。
「あっ、なんか来たっす」
ドジの指差す方向を見ると、茂みがワッサワッサと揺れていた。
そして、そこからネコが顔を出す。
オレはそのネコを抱き上げようと近づいた。
「うわっ!だめだよ、ネコさん!」
少年の声だ。次の瞬間、オレの頭がその少年だと思われる奴の手によって押さえ込まれた。
「捕まえたって・・・あれ?」
茂みの後ろにいる少年は、ようやく頭がネコのものではないと気付いたようだ。
手をパッとオレの頭から放すと、茂みを掻き分けてこっちにやって来た。
「あっ!すみません、すみませんっ!」
「いや、別にいいけど。それより、何でこんな所に・・・」
「ああ、僕は記者なんですよ。ウィリアム新聞の。クルト・アンヌッカといいます。うちの新聞社は、この辺りに仮面舞踏会の派生組織でもないかと探ってましてね。僕はこの辺りの担当なんです」
仮面舞踏会、と聞いてオレ達は顔を見合わせる。ドジの顔は軽く引き攣っていた。
たぶん、オレの顔もそうなっていたに違いない。
「で、あなた達は何をしてるんですか?」
「オレ達は、キャンプに最適な場所を探してる所なんです。ここあたりは、自然も多いし、あっちの方に川もあったし」
オレは急いで仮面をポケットに仕舞おうとしているドジを体で隠そうとしながら言った。
何割かは嘘だけど。川なんてあるはずがない。
「あっしたちはキャンプ会っていう所の幹部なんっすよ。だから、場所選びをしなくてはいけないんす」
「そうなんですか。じゃあ、ここの辺りの地理にも詳しいですよね?もしよかったら、組織がいそうな所を教えてくれませんか」
丁寧な若者だ。あ、オレも若者か、一応。
「うーん」
オレは考える振りをしてから言った。
「この辺りには洞窟とか、人が住めそうな所はいくらでもあるけど・・・」
「えっ、本当ですかっ!教えてくださいっ!」
目を輝かせながらせがんでくる。
でも、ドジが代わりに言ってくれた。
「でも、今からだと大変っすよ。雨も降ってるし、ここは複雑だから迷う可能性も高いし。だから、明日の朝9時に会いましょう。ここでね」
「そうなんですか・・・。でも、ありがとうございますっ!」
ドジが抱えていた猫を受け取り、少年は元気よく去っていこうとする。
それを慌てて後ろから呼び止めた。
「待って!いつ頃から探ってたの!?」
少し遠くなってしまった少年は、くるりと振り返って言った。
「一週間ほど前からです!それじゃあ、また明日!」