プロローグ
オレの名前はベネディクト・ケイン。現在15歳。
ただの森の近くに住んでいる少年だった。
オレの人生があんなにもあっさりと変わってしまったのは、あの女と出会ってから。
フランシーヌ・カヴァデイルだ。
あいつは最悪。
魔性の女というのはフランシーヌのためにある。
きれいな紫の髪に、きれいな赤紫の目。
あと、体型もいい。頭もいい。性格は・・・最悪。
魅入られると死ぬ悪魔、見たいな伝説、あっただろ?
あんな感じ。
性格は、とにかく女王様気取り。ちっちゃい女の子がやってる女王様ごっこを捻りに捻ってマイナスの方向にもって行くとああなるんだと思う。
でも普通の人間は、その魅力に抗えない。
まさに飛んで火にいる夏の虫。
オレは、たまたま森の中を探検していた。
探検と言っても、きれいに木が等間隔で植わっている所をぶらぶら歩いているだけに過ぎない。
ここらへんは、わが国ファチマ王国において、最大の林業の・・・
何だったかな。まぁ、田舎って事だ。
だけど、この森は広い。
奥の方も整備されているのだろうか。
急いで奥の方まで行こうとした。でも、行けるわけない。
等間隔に木が生えてるんだ、しかも同じ木が。
どっから来たか分かんなくなるのは当たり前だ。
よく考えると、こんなに奥(家から遠く)まで来たのは初めてだ。
母さんか父さんとなら来れる。母さんも父さんも林業をやってるから。
林業なんて木を切って帰って、それを加工するか、家具にするかだ。でも、方向感覚はバッチリになるっぽい。
ま、どうにかなるか。
そんな事を考えてたら、小道に出ていた。オレの下にある線だけ草がない。地面には、足跡が無数にある。人間の足跡と、馬の蹄?
馬なんてこの時代、政府のお偉いさんしか乗れない。
何で知ってるかと言うと、オレのおじさんといとこが牧場をやっているからだ。いとこ曰く、
「あたしんちはせいふのえらいひと・・・きょっかきょくむだいじんさんがのるおうまさんをしょだててるんだからね!」
だそうだ。国家国務大臣が言えてなかったのは言うまでもない。
でも、乗馬を習った。一生それを生かす機会なんてないと思うけど。
もしかしたら、政府のお偉いさんが来てるのかもしれない。
でも、こんな田舎の森の奥に何がある?
宝石があるわけでもない、金持ちがいるわけでもない。
オレだったら首都で遊びまくるけどな。
ここまでで、かなりの距離・・・いや、かなり奥まで来た。案外狭い。
かすかに何か聞こえる。
かすかどころじゃない。すぐ近くだ。
とっさにオレは、小道を外れて木が生い茂ってる方にルート変更。そのままなるべく音を立てずに、幹を潜ったり、飛び越えたり。
次第に声に近づいていった。
「・・・だ。・・ま・・おろせ。・・・このたわけがっ!」
「このたわけが」だけ声がでかい。オレは会話を聞き取ろうと近づこうとした。
ミシッ。
おっと。木の枝を踏んじまった。そーっと顔を上げると、仮面の目とバッチリ目が合った。
長いコートに仮面。仮面と言っても、柄も形も様々。そしてオレは奴らを知っている。
ある日の新聞の記事を思い出す。
「仮面舞踏会と言う集団は、王国内で最大の盗賊だ。だから、一般人は決して目を合わせてはいけない。
あいつらは誰のものであろうと盗み出す」
やばい。
目が合った。
プロローグとエピローグ、どっちがどっちなのか分からなくなる時がある・・・。