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第四夜◇I・N・T 攻防

皇樹の悲しいくらいにどうでもいい秘密発覚。

「モモたん……?」



なんだかその響きにはなんとな〜く聞き覚えがあった。なんだろう……確か……


“モモたんが画面からでてク〜ル”


 そうだ、皇樹が実体化しようと目論んだゲームのキャラクターだ!

『モモいきマス!! メテオアタック!!! えいっ!!』


ギャギャギャギャギャギャギャガ!!!!


少女達が華麗に舞うと一斉に光線が雨あられと降り注ぐ。大変メルヘンチックな光景だが、攻撃の渦中にある二人はたまったもんではない。

「な、なにボーっとしてる蒼天の狼!! 早く千の殺し技とやらでなんとかしてくれーーーっ!!」

辛くも障壁によって攻撃を防ぎながらも、宗彰は慌てて皇樹を小突く。

「……で、出来ない!!」

「へ?」

「モモたんを傷つけるなんて僕には出来ない〜っ!!!」

「ちょっ、そんなこと言ってないで撃破しないとこっちが傷だらけのローラに!!!」

「黙れクソ虫!! モモたんは……っ、モモたんは僕の初恋の人なんだぁ〜〜〜〜〜〜っ!!!」


 うわあ……………。


知りたくもない皇樹の秘密を知ってしまった……。初恋がよりにもよってゲームのキャラクターとはもう悲惨すぎて形容のしようがないな……。思わず不覚にも涙がこぼれそうになる。

いやいやいや、今はあきれている場合ではない。生命の危機に瀕しているのだ。宗彰は腰の青刀を抜き切っ先を額にあてがうと神経を集中する。

「……破っ!!!」

紫電一閃、鋭い剣尖が一度に三体をなぎ払う。モモたん……もといウイルスバスターはほとばしる光塊へとなって消し飛ぶ。すばやく剣先を切り返し脇に飛び込んできた一体を真っ二つに斬りおろすと、間髪いれずに背後に襲い掛かる二体に衝撃を叩き込んで吹っ飛ばす。

「うわぁぁあ〜っ!!宗彰が幼女を斬った!! 幼女を!!!」

「うっ……落ち着け……、あの姿はまやかしだ。無事に帰れたら本物のモモたんがまたモニター越しに笑いかけてくれるって……。」

宗彰は力無く弁解する。プログラムだとわかっているものの、なんだか猟奇殺人者のようでいただけない気分である。それにしても何ゆえウトガルドのウイルスバスターがゲームのキャラの姿を……? ウトガルドのプログラマーに熱烈なゲーマーでも居たのだろうか……。なんにせよ最悪のチョイスである。

『やってくれまシタネ……?』

たった数秒のうちに仲間の半数を失った少女達が、躊躇するように二、三歩後ずさるとキッと眉を吊り上げる。

「皇樹、戦うのが嫌なら今のうちにさっさと逃げるぞ!!」

宗彰は皇樹の首根っこをひっ掴むと空を蹴って跳躍すると一気に距離をあけ突き進む。少女達の姿がみるみる豆粒大に遠のいて行く。

『逃しませんよ〜!! モモ、頑張っちゃいますよ〜? 抹殺モードへシフト。擬態解除シマス………。』

遥か彼方となった標的を睨みすえ、少女達の身体が赤い光に包まれる。と、少女達の姿がみるみるうちに変身する。真っ赤に燃えるようなオーラを纏い、爪は鋭く伸び、口は耳元まで裂け、全身の筋肉が隆起し先ほどの可憐な姿は跡形もない真紅のグリフォンへと変貌を遂げていく。

「うっぎあああぁぁぁモモたあああぁぁぁぁぁん!!!!!!」

『グォォォォォォォォォォオオオオオオ!!!!』

悲惨としかいいようのない皇樹の悲鳴と、グリフォンの咆哮が共鳴する。本性をあらわにしたウイルスバスターが天を引き裂くような咆哮を轟かせ、先ほどとは段違いのスピードで追いかけてくる。みるみるうちに二人との距離が縮まっていく。

「ぎゃああああ三倍速い!!! 赤い!! なんか三倍速い!!!」

「くっ!!」

宗彰は追いついてきた一体の額めがけて力いっぱい剣を振り下ろす。

カキィン!!

予想外の鈍い反動と硬い手ごたえに逆に腕がしびれ、無傷の化け物がニヤリと笑う。……しまった、障壁!!!

『ガァッ!!!』

「ぐはっ!!」

化け物の一撃が宗彰の腹にヒットする。障壁により致命ダメージは吸収されたものの激しい衝撃に一瞬意識が飛び、グラリとバランスが崩れ谷底へと真っ逆さまに落ちていく。落下先には光の渦巻く激流がまちかまえ……。

「宗彰ぉっ!!!!」

危機一髪で皇樹の展開した六角障壁ウインドウが手荒く彼を受け止めなんとか身を立て直す。油断した……。剣を障壁に突き立てて頼りない足場を固定すると、気合を入れなおす。

『死ネ!!』

膝をつく宗彰にグリフォンが一気に襲い掛かるが、今度はすんでのところでうまく力を脇にそらすと腕を掴み合気道の要領で投げ飛ばす。もちろんボディに追加効果即死の一撃を打ち込むのを忘れない。

「はぁっ、はぁっ…………はぁ……焦った……。」

「くそ〜〜……よくもいたいけな僕のハートをと宗彰を傷つけてくれたな〜〜〜っ!!! もう容赦しないぞっ、行けっ! ロジックボムボム皇樹スペシャル!!!!!」

残った真紅のグリフォンたちへ、ボムというよりは核弾頭ですといった感じの鮫ミサイルが正確に発射される。一撃必殺、次々と撃墜されたグリフォン達がみるまに光の濁流へと飲み込まれていく。

「……さようなら、僕の初恋……っ……。」

「……とんでもない悪女だったな……。」

そんな最終兵器があるなら最初っからそれ使ってくれよ……!!! 宗彰が心の中で突っ込んだ事は言うまでもない。









すみません・・・。

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