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第三夜◇I・N・Tネットワーク

2人はウトガルドの本社コロニー潜入を目指すが…


あとにはブリッジにただ一人、満面の笑みでバイバイと手を振る百合香が残るのみ。


やがて、その手も動きを止める。降ろそうとしてふと、百合香は胸元のネックレスへと手をやった。凍てつくように透き通った水晶の中に、小さな青い炎が煌々と燃える美しい宝玉。その宝玉をそっと指で包み込むと、緩んだ口元がきゅっと引きつり、その美しい顔がくしゃっと苦悶と不安に歪む。


「許してね………こんな…………こんなすべにしか思いつかない愚かな私を…………どうか……どうか無事に生きて帰ってきてね…………」


百合香の、普段からは想像もつかぬ弱々しいその祈りを、凍てつく星々の闇だけが聞いていた。






***




頭から氷水に浸かったような、凍りつく軋みに全身が悲鳴をあげた後、ゆっくりと体温が戻ってくる。


無事にI・N・Tネットワークへと入れたらしい。


「チックショウあのアマ、ぜぅえっつあい生きて帰ってきてやる…………それでもってあの女に体中の毛穴と言う毛穴がニキビになる呪いをだな……!!」


どうやら皇樹も無事なようだ。


 宗彰は、深く息を吸い込んで呼吸できることを確かめ、あたりの様子を伺う。これが、普段眺めているウインドウの中の世界……?


 彼の体は淡い光が流れる宙域高空を漂っている。その遥か下方には虹彩の濁流が連綿と続き、細く幾重にも枝分かれしてゆく。さながら光情報の渓谷だ。


「ひゅう〜、あれがこのI・N・Tネットワークに溢れかえっている光情報の流れってわけか…うへえ、あっちなんかの滝みたいだぜ……宗彰気をつけれ、あの光の波に触れたが最後一瞬にしてジュッ! だぞ。ただでさえ僕たちはこの次元の異端者。物理的存在確立を制約されるんだから……。」


「それは……スリリングだなあ……。」


谷底の激流を見下ろし、宗彰はクラリとめまいを覚える。やや絶景すぎる見晴らしである。肝心なことに気がついて宗彰は不安になった。


「ウトガルドへ行こうにも、どっちへ行ったらいいんだろう?」


「ぐふっふっふっ、君の相棒様のこの頭脳をお忘れかね??電脳と名の付くものにかけちゃあこの皇樹様にお任せあれよ!! まずは現在地だな……アドレスNo.00879−4637289−70342496609へアクセスルート表示。」


 とんでもなく長い番号をスラスラと暗唱する皇樹に宗彰はちょっと驚いた。


言い終えた皇樹の周りに色鮮やかな光のキーボードが次々と現れ、得体の知れない文字系列が高速で画面に流れていく。


「う〜ん、どうやら姉上がウトガルド情報領の国境線スレスレまで運んでくれたみたいだな………ルート検索実行。目的地、ウトガルド本社コロニー……おぉ8Hit! 危険度Sか……危険、ドS……さぶ。……最安全ルート絞込んでナビシステムへ記入。」


皇樹は、目で追えないほど目まぐるしく変わるウインドウ相手にぶつぶつと呟くと、ハイスピードでキーを叩き込んでいく。



「ようし! ナビシステムが勝手に目的地へ周辺空間を方向転換してくれるようにしたから、僕らはただ真っ直ぐ前へ進むだけでいいぞ……な、なんだ宗彰その目は」


「………な、なんだかカッチョイイぞ皇樹……」


「なっ……!? バッ!! ななななんだよ急に………!!!!」


賛辞の言葉をかけたのに、皇樹は何故か怒ったように朱に頬を染めると、そのまま逃げるようにふよふよ先に進んでいってしまう。不可解に思いながらも宗彰も置いてかれまいと後に続く。


「い、いいか、ここから先はウトガルドの情報領域だ! なにが起こるかわからないから覚悟しとけよっ! ……ほ〜ら、言った先からもうおいでなすった。」


光の射す前方遥か彼方から、白い楕円球状の小型機動端末が三機、こちらにむかって飛んでくる。


「な、なんだあれ?」


「決まってるだろ、敵さんのウイルスバスターがこの世界で具現化されたものさ!早速俺たちをかぎつけてやってきたな〜。」


『ソコノ、ニ、ジョウホウタイ、テイシシテクダサイ、アナタタチノミモトヲカクニンシマス』


ウイルスバスターが合成音声を発する。


「突っ切るぞ!!」


 皇樹が障壁ウインドウを纏って加速する。と同時に宗彰の周りににも障壁が展開される。宗彰も足がかりに固定ウインドウを蹴って一気に加速し、一瞬のうちにすれ違うとあっという間に距離を離す。


ぎゃんっ!!!


とり残された三基が互いに顔を見合わせる。



『ういるすトニンシキ。セントウもーどおん、テキ、ショウキョシマス、ショウキョシマス』


ちゅいーん!!


がががががが


ビービー


ウイルスバスター達のスピードが一気に増し、てんでばらばらにビームを放ちながら宗彰たちを追う。


「うあっ、ま、まずいぞ皇樹!!」


「しつこいなあ……よーし、皇樹様特製トロイの木馬お徳用パック発動!!!」


皇樹が叫ぶと子供のおもちゃのような木馬がぽんぽんと現れ、ウイルスバスターに接触するやいなや爆発する。当に瞬殺。


「うおおー凄いぞ皇樹!!!普段のヘちょっぷりからまるで別人みたいだ!!!」


「はっはっはー、蒼天の狼と呼んでくれ。」


宗彰が喜んだのもつかの間で、すぐさま後方の空間が揺らぎ新たに敵影が現れる。それも今度は大量に。


「……!! また来たっ!!」


「ぬはははは、まっかせなさい!! 何基こようと同じこと。この千の殺し技をもつハンター皇樹様が殲滅してやろ…………う!?」


不敵な笑みを浮かべていた皇樹が凍りついた。


どうやら今度は先ほどの哨戒用の端末ではなく本格的に武装特化されたウイルスバスターらしい。……が、気になるのはその容姿である………星型の杖を持ち、桃色の髪の魔法少女チックな少女達……電脳世界のウイルスバスターというには似つかわしくない非常に可愛らしい姿である。

『アナタ方が不正あくせすぷろぐらむデスネ? 悪い奴はモモがやっつけちゃいマス!!!』


少女の一人が可憐な声を発した。



「そ…そんな…モ……、モモたん……っ!!!」


皇樹が震えた声でうめいた。さっきまでの威勢はどこへやら。




…は?



モモたん…?



なんだか、もの凄〜く、嫌な予感がした……。

モモの元ネタ気付いた方…すみません。やっちゃいました。

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