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第十夜◇悪い奴ほどよく眠る?


『ゲブラーエリア大破、研究エリア大破。セフィロトエリア火災発生。宇宙外壁殻大破。酸素濃度急速に低下。被害拡大。……生命維持機関に被弾。重力異常増大。減圧防御隔壁作動……効果ありません。十分後に当コロニーは崩壊します。速やかにシャトルにて重力圏外へ離脱してください………』


耳を疑うような被害報告が矢継ぎ早に彼女の耳に飛び込んでくる。

「 ……こりゃーさっさとずらからねえとクソヤベぇな……」


金色の瞳がキラッと光る。ついつい目ぼしい物を物色していて思ったより時間を食ってしまった。

気がつけば唯でさえ入り組んだ回廊に分厚い障壁が降りて、まるで迷路である。

とんでもない事が起こっているらしい。先ほどの震動を皮切りに、次々に激しい衝撃が下から響いてくる。極めつけはさっきの光の柱だ。敵襲か、はたまた事故か……?


「ったく、何も俺様が居るときにゴタゴタしてくれなくってもいいだろ!!!」


 さっき見た電光情報板によると、ここからまっすぐ直進すれば小型ドッグがあるはずである。が、今マサの前には分厚い防御隔壁が通せんぼしている。遠回りをしている暇はない。


「ちっ、しゃらくせえっ!!!」

ゲンコツで思いっきり殴りつける。信じられないことに厚さ数十センチはあろうかという障壁に大穴が開く。


「はっはっはっ、はぁ……………痛あ……」


流石に無理があったらしく涙目で真っ赤に腫れあがった拳をふぅふぅと吹く。気を取り直して顔をあげたマサは絶句した。


破壊した障壁扉の先に、ニメートル感覚で点々と障壁扉が続いていたのだ。


「…………そりゃないぜセニョリー……。」


こりゃもう辞世の句でも詠んだほうがいいかもね? そんな考えがちらりとマサの頭をよぎったとき……。


ドオオン!!!!


突如凄まじい轟音と共に、血まみれの少女が弾丸のように床を貫いて現れ倒れこむ。


「なっ、なななな!?」


「いたぞっ! 撃て!!」


目が飛び出さんばかりに驚くマサを尻目に、次々と駆けつけた兵士の一団が銃弾の豪雨を少女に浴びせかける。ふらつく少女の身体がいびつに痙攣し、みるみる蜂の巣となる。相手は丸腰……それどころか丸裸の少女である。


「な、なんて事をしやがる………………っ!!」


思わずマサは瀕死の少女に駆け寄り抱き寄せる。こんな年端も行かぬ少女をよってたかって惨殺とは、ウトガルドの奴らはみんなキチガイになっちまったのか?


「どけっ女! そいつは………………!!」


兵士が悲鳴にも似た怒号を発する。だがその言葉の終わらぬうちに、腕中の少女がピクンと震えたかと思うと手を翳す。一瞬の凄まじい閃光。兵士達が悲鳴すら残さずに灰となる。


「う…そだろ……?」


カラ カラン カン


 奇妙な音に見やれば少女の傷口が次々と銃弾を吐き出していく。あれほどの傷がみるまに完治し、血にまみれた姿もよく見れば総て返り血である。


「………冗談きついぜセニョリー……。」


呆然と少女を抱きしめたまま立ち尽くす。

が、すぐに、まだこんなに残っていたのかと驚くほどの兵士の軍勢が押しよせ二人を包囲する。


「゛そいつ″をこっちへ渡せ!!!」

兵士が声を荒げる。一瞬迷ったがマサはすぐに結論をはじき出した。このイタイケな少女がとんでもない化け物で、兵士達が血眼で銃撃を打ち込むのは心の底から納得がいった。

何より自分は急いでいる。この非常時に面倒ごとはゴメンだ……。

(じゃあな、悪く思うなよ……)

不意に少女が顔を上げる。間も眩むほどの美しさ。あ、と思うまもなく少女の大きな瞳がマサの視界に飛び込んでくる。


 その瞬間、マサは果ての無い銀河へ放り出されたような気がした。長い睫の奥から、夜空に金粉をばら撒いたような青い瞳が震え、彼女の脳に直接訴えかけてくる。

 助けて……


 頭が真っ白になっていく。倫理の秩序がひっくり返り、抗いようの無い力が彼女の心を支配していく。気を失いそうな美しい瞳。見るもの総てを虜にして離さない……。


 気がつけば、マサの拳は兵士をブッ飛ばしていた。ぐったりとした兵士を引っつかむと、恐るべき馬鹿力で次々と障壁扉を破壊しながら駆け去っていく。


「なっ、何をする!!!」


 背後から集中砲火が浴びせかけられる。

どうしたんだ俺!? 

何やってんの俺!? 

 きゅっと、少女がマサの腕を握る。すうっと嘘のように迷いが消えていく。そうだ、俺は……俺は!!

「うるせえ! 俺は……、俺は可愛い女の子の見方だ―――――――――っ!」


泣き声にも似た絶叫が崩れゆくコロニーに木霊した。


***




総てが漆黒の闇に呑まれていく。

もうじきここも崩壊する。比類なき権勢を誇ったウトガルドの総てが崩れていく……。


「クレア!! これは一体どういうことだ!!!」


ウトガルドは女に掴み掛かる。


「申し訳ありません……不足の事態がおきまして……。」


「ふざけるなっ!! R―UR:1の拘束をわざと解いたのは貴様だろう……貴様しか出来ないはずだ!!!」


「あら、お戯れを…………」


 ゴツン


否定する言葉とは裏腹にクレアは男に銃口を突きつけて微笑む。


「だって、あんなに美しい宝石は最高のパーティーでお披露目しなきゃ、勿体ないじゃない………」



***



星ひとつもあろうかというコロニーが崩壊していく。巨大な権勢を誇った欲望のすべてが星海に呑み込まれていく……マサの瞳に、ついさっきまで自分の居た場所が映る。


「信じらんねえ……あの蛇の本陣がこんなわずかな時間で……明日の宇スポの見出しは決まったな………」


「…………。」


マサは窓にへばりつくようにして、歴史の一ページになるであろう光景を見物する。自分は安全圏にいるのをいい事に野次馬根性まるだしである。

「まっ、きゃつらもずいぶんと悪でえ事やってたからな。因果応報って奴だぜ!!」


「…………。」


彼女は今、ドッグにあった小型宇宙艇を頂戴して航行している。あの少女も連れて。少女はあれほどの大破壊を引き起こしたのが嘘のように、毛布に包まって淡く息づいている。


「なあ、おめえ、よかったら俺と盗賊やんねえか? なっ!! 俺とおめーならあっという間に大金持ちになれるぜ……!! うしし!!!」


「…………。」


…………。


 少女は、マサの言葉にも眉ひとつ動かさず、じっと銀河のような瞳で虚空を眺めている。痺れを切らしたマサが少女への顔を覗き込む。


「なあ。お前さんよー、だんまり決め込むのもいいけどよー、この命の恩人様に名前くらい教えてくれたってバチは当たんないと思うぜ?」


「な、ま…ぇ……?」


 少女が小さく呟き、不思議そうにマサを見やる。

「そ、名前。あんたの名前。あぁ俺はマサ。アンタは?」


「なまえ……わたしの…………」

すっ、と少女の青い瞳に光がともる。輝く砂塵をちりばめたような銀河の瞳が、遠くを見つめる。遠く、ぼやけた夢の中で聞いた声が頭に響く………………………




「る、り………………瑠璃。」


ぽつりと呟いたきり、少女は深い深い眠りへと堕ちていく。それから、マサが何を聞いても目を覚ますことは無かった……やがて、彼女のやわらかい唇に、そっとマサの唇が押し当てられた事にも気付かなかった。



果てしなく続く星の海に、ちらちらと小さな星屑たちが頼りなく瞬いていた。





イヤッフー!終わった〜い!

 いや、終わってないけど、全然終わってないけど…っ。

とりあえず、以前に書いた分は全部アップしました。書いた事、すっかり忘れてました。読み返しました。精神的にキました。

いやもう、クッソ長いの話なのに、こんな所まで読んで下さって…(る人いるのかしら?)、なんて暇人…ゲフン、本当に有り難うございます!!愛してます!!居たら!!


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