その7 獅子と羊
家を出ると此所は町で有り、すぐそこが市場であることが分かった。どうやらこの世界では魔法を使用出来る者も居るみたい。
…先ほどからメチャクチャ痛い視線を感じるのだが……。矢張り格好がミニスカでピンクだからかな?
「君は何処から来たんだい?」
薔薇を口に銜えてる…凄く古典的なヤツが話しかけてきた。…あぁそうか。今は美少女になったらしいな。
どうりで嬉しくない視線な訳だ。だってそうだろ?男に見られて嬉しい男がいた方がキモイと思うわ…。
「ロイ、この子は記憶を無くしているの。ちょっとそっとしといてあげて。」
妹が上手くごまかしてくれた。ナイスッ琴音!だが…琴音よりも可愛い設定なのか?
どんなけ可愛いんだよ、今の自分…。
「今のヤツはロイ・マルグス。町一番の女好きでモテ男ランク10位には入るらしいわよ。私には良い所がさっぱりわかんないケドねッ。」
でも、ロイとか言うヤツは確かに格好良かったと思う。少なくとも転生前の俺自身よりは。(そんなモノ比べようが無いのだが…)
「あれは何だ…?」
そう言ってデカ過ぎる建物に向かって指を指す。
「あれは今から行く所。まー行けば分かるッ!いっくよぉぉ!!」
…妹よ、異世界に来てからキャラ変している気がするのは俺だけか?こんなキャラじゃなかったよねッ!?妹なら何しても可愛いがッッ!
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「やっほぉ~、お久しぶりでぇーす!」
「あッ!マリアちゃん、久しぶり~~ッ!」
妹に向かって「マリアちゃん」と呼ぶ声が妙に気になる。こっちの名前だろうか?
「あッ、こっちではマリアって呼ばれてるからー。琴音でも別に良いけど…」
「マリアちゃんッ、その子は??」
ここでも男が寄ってくる事寄ってくる事……。その芽が何か怖いわッボケ!荒い鼻息が聞こえて来そうな勢い。獅子に狙われた羊にでもなった気分。
「この子、新入りなのさ。可愛いだろぉ~~ッ!シオンって言うから。」
「シオンちゃんッ宜しくねッ」
俺はシオンと言う名前の事になった。ってかされた。男にハーレムされても嬉しくないんじゃボケ!!おほんッ口が悪くてすみませぬ。
「俺とチーム組まない?」「俺ッ」「僕と…」
「あッ、ごっめーん。もうマリアが組んでるから無理なのッ。」
「ええー」
俺の知らない所で勝手に話が進んでいくが、全く理解出来ない…。
「じゃッハイこれ。それを胸に押し当ててッ。」
そう言って渡されたのは、鍵の様な物体。変なマークが刻まれている。
「こうか…?」
その瞬間、鍵の様な物体は心臓の方にに飲み込まれ、消滅していた。
「ようこそシオン、我がギルドへ!!!」