その1 天使が舞い降りる
ムサい男子校から帰宅する俺は家に帰るのを急行していた。
やっと…やっと今日の疲れと、男のムサい臭いが全部癒される!!
俺の中の、俺の為の、俺だけの所謂俺の天国で天使が待機している家へ。
俺の脳内はそれだけだった。
「只今……。」
可能な限り冷静に呼び掛け、そして天使を待機するのだ。そこで数を数える。いち…にい…
『さん!』
「お帰りぃ~!」
俺の中で叫んだ声と天使の声はハモり、良いハーモニーを紡ぎ出す。
ロリ系な服の天使は俺の前に姿を現した。
彼女の名は、神岡琴音(14歳)中学生。序に童顔なので小学生にも見えるその姿は、俺の妹ながら妹は良く出来た美少女だと思う。褐色な髪の毛に雪のような肌。つややかな肌からは妹の香り(ローズに近い香りなんだよな。)
琴音の細い腕が前に出て、俺は鞄を預ける。それが何時もの日課であり、俺の癒しで有り、俺の癒しである。(ここ注目!二回…いったよな?重要だからだぜ?)
「隼くん、じゃぁぁん♪今日はオムライスだってぇ~!」
無邪気過ぎる笑顔が俺に向けられる。毎度この瞬間はキュン死に直然だ。誰が見ても俺と妹の血が繋がってないのは見当がつくだろう。血…鼻血出そうだぜ…オイ。
「……そうだ。はいコレ。琴音欲しがってたろ?」
鼻血は出せない…俺が…俺が、引かれてしまう…。ガンバレ!俺。
琴音が欲しがっていたブレスレット。今学校で大流行してるとか言ってたから買ってきたのだが。...少し甘やかし過ぎか?
「隼くん!大好きぃ!」
そう言って見せる笑顔に俺は相当弱いと思う。甘やかしすぎだというのは承知の上なのだ。しかし笑顔を見ると如何しても止められないのが現状だ。
●○●○●○●○
翌朝、学校にて
「隼人、今日渋谷行かなねぇ?」
友達の広大からの誘いだった。...確か琴音は出かけるって言ってたっけ。家に天使が居ないのであらば、俺が帰る必要性も無いのだ。
「今日はフリーだし大丈夫かな」
「って!お前は何時もフリーじゃねぇのか?」
「...そーだな。」
俺は妹と比べ(血が繋がっていないから当たり前だが)凡人だ。コレといった特技も無ければ勉強も普通。因みに俺の辞書にモテ期と言う言葉は無い。
広大は何だかんだ言ってモテる。チョコを翌年も10個近く貰っていた。...いやそれ以上かもな。持てる癖に俺と何か連んでるから、つくづく持った得ないヤツだと思う。
...。
「別行動で。何かあったらメールなー。」
「ああ」
着いてからそのまま広大と別れ、適当にブラブラしていた。ソレだったら一緒に行く意味が無いと言うツッコミをどうかこらえて欲しい。俺は男ながら東京の街をブラブラするのが結構好きだ。ただ時間が過ぎるだけなのに一瞬一瞬が不思議と体に刻まれる。コレは妹以外の唯一の『癒し』だった。
急に喉が渇いたから建物の間にある、つい最近見つけた自販機へ向かう。人通りが少ない所。
そこで予想もしなかった人物に出会う事となった。
....あの後姿、琴音か?
琴音らしき人が建物と建物の間で縮こまっていた。
....何やってるんだ?
お尻を地面に付けない体育座り状態。短すぎるスカートからは、太ももがちらつかせていた。
...少しは用心しろよな。
お前みたいな美少女は東京で何があるか分からねぇのにな。妹は下を向いて何かをブツブツ言っている。
「おぃ....」
....琴音。そう言い掛けた時だった。
「グォォォォォ.......」
竜巻の様な風が一瞬にして起こり、俺の体は宙に舞った...はずだ。
そこからの記憶が無い俺には断言する事が出来ない。
俺はどうなるんだ!?
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