表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この結婚、死んでも嫌です【連載版】  作者:
第四章 石の謎

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

35/40

混乱ー1


「あ、急がなくては。置いていかれてしまいます」


「マリア嬢」


 ブライアン様が呼び止めた。そして私の腕を引く。

 踊るようにクルッと回され、私は彼の腕のなかに捕まってしまった。


「乱暴で申し訳ない。でも、あなたは、捕まえておかないと、すぐにすり抜けて行ってしまう。お答えを聞かせてください。どんな答えでも、受け止めます」


 真剣な目がすぐ上にあり、私を見つめている。

 自分でも驚くくらい素直に答えが口から出た。


「あなたのことが好きです」

 

 嬉しそうにブライアン様の瞳が笑った。そしていたずらっぽく尋ねる。


「エリックよりも?」


「当たり前ですわ」


 私も笑ってしまった。その私に、笑いながらブライアン様が聞いた。


「じゃあチャックは?」


「チャックの方が好きです」


 すごく自然に口から出た言葉に、私はびっくりした。

 そしてブライアン様の笑顔が固まった。

 刺繍をしながら考えていたことが、そのまま口をついて出てしまった。

 彼はしばらく私の肩に顔を伏せていた。ゆっくりと顔を上げると聞いた。


「じゃあ、人間の男では、私が一番ですか?」


「はい、一番好きです」


 不安だったので、思いっきり言い切ってしまった。


「それならいい。チャックを超えるよう頑張ります」


 少し無理をしているような彼の顔が胸に刺さる。申し訳なくて身の置き所が無いが、ほっとしたのと、安心したのとで泣きべそをかいてしまう。


「こんな素敵な方が、私なんかを好きだなんて、信じられないわ。今度は都合の良い夢を見せられているのかしら」 


 なんだか、思ったことをそのまま口にしている気がする。


「あの。もしかして、お薬がまだ残っています? 私、変なことを色々口走っている気がします」


 えっと言って、ブライアン様が指輪を確認する。振ってみて首を傾げ、鼻に近付けた。


「いいえ、そんなに長く持ちません。香りが出始めて十分ほどで揮発しますから。もしかしたら、すごく薬の影響を強く受ける質なのかな」


 それは困る。思ったことをペラペラ喋りだしたら、とんでもない事を言いそう。


「指輪は仕舞いますから。大丈夫ですよ」


 そう言って、宥めるように私の手を取った。


「ありがとうございます。やっぱり、刺繍と甘い物とブライアン様の瞳だわ」


「はい?」


 ダメダメ、やっぱり思った事が、そのまま漏れている。


 私は口をハンカチで覆い、反対側を向いた。


「気にしなくてもいいです。楽しいことばっかりおっしゃってますから」


 そう言って笑いながらエスコートしてくださった。

 まさに夢のようだ。


 屋敷に戻ると、ホールでロイドが待っていた。


「エリック様の部屋に、夕食のご用意をいたしました。こちらへどうぞ」


 部屋に入ると、お兄様は探るように私たちを横目で見てから、ニヤッとした。


「何か良いことがありましたか?」


「ああ、マリア嬢に、人間の男では一番好きだと言ってもらえたよ」


 そう言って吹き出した。

 私はまだ薬の影響が残っているのか、一緒になって笑ってしまった。


 兄はポカンとしていたが、「そりゃ、何なんだ」と呟いた。


「私の恋敵はチャックだ。強敵だな」


 ロイドが、ささっと部屋を出ていった。やはり陽気な質のようだ。


「お前なあ……もういいか。こちらにどうぞ、副団長」


 兄が示す先のテーブルには、たっぷりと料理が並べられている。それから、少し投げやりに言う。


「さて、どこに座っていただけばいいやら」


「人間では一番なんだから、マリア嬢の隣だろ」


「それでいいんですか? まあそちらの椅子をどうぞ。その横にマリアだな」


 それで二人で並んで座ることになった。緊張するかと思ったけど、凄く自然な気がした。

 ブライアン様の隣が落ち着く。思わず顔を見合わせて微笑み合った。

 多分、同じことを考えたのだと思う。


「マリアを助けてくれる人が見つかって良かった。この先、一筋縄ではいかなそうだしな」


 しばらく、何事もなかったかのように、三人で食事をした。二人はせっせと食べている。

 私はプディングやケーキを大きくカットして皿に盛ってもらった。


「そろそろ重たい話に取り掛かるか。マリア、気分は?」


 甘いケーキが、緊張した気分をぼんやりとした感じに緩めてくれている。

 兄に問われて、「大丈夫です」と即答できるくらいに。


「ロイドは一緒に聞いてくれ。おばあさまに関わる話なんだ。知っていることがあれば、教えてほしい」 


 兄は扇子をテーブルに置き、その横に石を置いた。


「賊の狙いはこの石だ。ベルシアの王が、昔おばあさまに渡したそうだ。石だからアクセサリーにしてあると思っていたようだな。ところが、扇子の要の飾りに隠されていたんだ」 


「大奥様愛用の扇子でございますね。いつも持っておられました。ご実家から持ってこられた品です」


 そういえば、おばあさまは、恋人に約束を破られたんだわ。それをどう思ったのだろう。

 約束の時に受け取った品を、なぜずっと持っていたの?

 これが大切な品だと分かっていたから? 

 それにしては日用品扱いだし、これでお祖父様やお父様をピシピシ叩いていたのよね。


 色々と腑に落ちないことだらけだ。一つ謎が解けて、また別の謎を抱えてしまったらしい。


「おばあさまは、お祖父様のことを愛していたのかしら。幸せそうだと思っていたけど、違ったのかしら」


 ロイドは私のほうに向き直った。


「私が見てきた大奥様は、お幸せそうでした。前伯爵様とも仲が良くて、よく笑っておられましたね」


 やはりわからない。

 おばあさまは、その相手への想いを吹っ切れたの? 多分そうよね。


「その過去の問題が今に蘇った。ベルシア国の王族が、この石を取り返そうとしている。持っているのはマリアだというところまで調査済みらしい。ついでに昔の恋敵の子孫に報復したいようだ」


「ああ、それは⋯⋯」


 ロイドが絶句する。


「マリア嬢は、しばらく王宮で第二王子殿下に仕えたほうがいいかもしれない。今日、王子に持ちかけられたんだ。チャックの世話係として働かないかって」


 ブライアン様が言い出した。


「へえ。王宮で王子の側近く仕えるのだったら、安心だな。いいかもしれない。俺も時々様子を見に行けるし」


 突然の提案に驚いたが、この屋敷にいたら皆が危険な目に遭うかもしれない。

 王宮に入ってしまえば、相手も手が出せないだろう。


「それがいいかもしれないわね。私、お受けしようかしら」


 その時、外でドンッと大きな音がして、窓ガラスが揺れた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ドンドンしているのが実はチャックであった チャックの本当の姿は異世界転移したチャック・ウィルソンで 最後みんなでチャック・ウィルソンの肉体美に酔いしれるエンドだったら どうしよう……
おばあさまがマリアそっくりなら若い頃は恋に鈍くてベルシア王の気持ちも通じてなくて王様の一人相撲だった説とかありそう笑
え!こわ、何事!?敵襲?敵襲か!!?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ