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この結婚、死んでも嫌です【連載版】  作者:
第四章 石の謎

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石の謎ー4


 あら? なんだか急に感情的になったわ、と違和感を感じた。もしかしたら、自白剤が効いてきたのだろうか。でも何かを飲ませたようには見えなかった。

 兄も変化を感じたのか、ちらっとブライアン様の方に視線を投げる。


「私からも質問しよう。侯爵家の使用人としてジェイソンのことをどう思う?」


「優秀な近衛騎士で、裕福で地位もあり、女性にもモテる。何不自由の無い身の上だったので、残念だと思います」


「そうだな。だがメリーとの醜聞が表に出た。メリーはそんなに魅力的だったのかな」


「さあ、男好きするタイプの美女だったと聞いたけど。どうでしょうね。ぱっと見がいい女なんて掃いて捨てる程いる」


「二人は花嫁が死ねば結婚できると思っていたようだが、男爵家の婚外子では、侯爵家が許さないだろうに。君はそれに賛成したんだろ? 計画が甘いとは思わなかったのか?」


「そんな計画うまくいくはずがないのは分かってました。私は単に乗っかった振りをしただけだ」


 男は凄く嫌そうな顔をしている。感情がむき出しになって来たようだ。

 まだ少し理性が残っているようだが、本当の事が混ざってきている?


「メリーに薬を渡したそうだな。メリーとの接点は? 薬を何と交換した? 金か?」


「二か月前、あの女が毒薬を探していたんだ。俺はそれを知って接触し、薬を調達してやった。小出しに少しずつ渡す予定だった」


「ほお、なぜ? ただでか? お前もメリーに惚れたのか?」


 兄が嫌な感じに笑いながら、男に聞いた。


「馬鹿な事を言わないでくれ。あの女は、とにかく侯爵夫人になりたがった。現実が見えていない、愚かな女だ」


 そう言って息を荒くした。

 怒らせると、自白剤の効き目が上がって行くように見える。そういった性質の薬?


「あの薬と交換に、この女のアクセサリーを持って来るよう言った」


 私の方に顎を振って、そう言う。

 兄が一発殴って来ると言うのを、私は止めた。

 すると、男の横に座っていたブライアン様が、無造作に男の頬にこぶしを叩きこんだ。結構いい音がした。


 これにはびっくりした。

 荒っぽい行動をするのを今まで見たことが無かったが……そういえば彼は近衛騎士なのだ。

 私はなんとなく、少し兄の方に体を寄せた。


「あ、失礼。ちょっと我慢できなくて」


 そう私に断ってから、「口には気を付けてもらおう。令嬢と呼べ」と凄んだ。

 男が唇の横に付いた血を舐めて、ふふっと笑った。


「ずいぶんと熱くなりやがって。令嬢に惚れてるのか?」


「ああ、悪いか? お前には関係ないだろ」


「ほおお。それはそれは、羨ましいこった。いい女だな」


 まあ、何を言い合っているのだろう。

 私が兄の袖を引っ張ると、兄が二人の会話に割って入った。


「おい、お前この石について教えてくれよ。これ何なんだ」


 兄が金色のキャッツアイを指に摘まんで突き出すと、男は面倒臭そうにそれを見たが、猫の目の模様だと気付くと目の色が変わった。


「それを寄越せ。それは我が国の物だ」


「知らないね。これは妹の持ち物だよ。こんなちっぽけな石が何だって言うんだ」


 兄はわざと相手を怒らせようとしている。怒りが自白剤の効果を進めると考えているようだ。効果は抜群で、男はつばを飛ばして叫んだ。


「ベルシア国の王家の宝だ。そんなに無造作に持つな。不心得者」


 兄はちょっと体を引いて、こっちを見た。私もぽかんとしてしまった。


「この石が? なんでおばあさまが持っていたの?」


 私は思わず口走ったが、男は答えない。やはり怒らせた方がいいようだ。


「これに何か秘密でもあるのか? 割ってみようか」


 兄が凄い事を言い出し、さすがに私も引いた。

 だが、案の定、男は真っ赤になって怒った。


「やめろ。王を守護する石だ。割るなんて冗談じゃあない。返してくれ」


「その他国の王家の宝を、なんでうちの祖母が持っていたんだ?」


「前王陛下がこの地を外交で訪れた時、お忍び旅行で出会った娘と、結婚の約束をした。その娘に渡したそうだ」


「まさか、それが祖母だって言うのか?」


「そうだよ」と言って男は上を向いて笑った。


「陛下は帰国時の事故で、数ヶ月分の記憶を失った。だからこの石は、事故で失われたと思われていたんだ。ところがだ。陛下が亡くなる少し前に記憶を取り戻し、ここにあることが分かった」


「まあ、そんな事情があるなら、そう言ってくれれば、お返ししたのに」


 私が思わず言うのと、兄が、不思議そうに呟く言葉が被った。


「そんなに大事なものを、何で渡して行ったんだろうな」


 男の怒りが大きく再燃したらしい。


「そうだ、国の宝だぞ。女に、一番大切な物を預けて行ってと言われたからって、そんな物を渡すなよってことだ。全く端迷惑な」


 そうね。私もそう思う。思わず大きく頷いた。


「いや、渡すだろ。俺だったら、多分渡す」


 ブライアン様が言い出した。さっきから、なんとなくブライアン様もおかしい。


「これ、お返ししましょうか」と兄に提案してみた。


「待て待て、たぶんそんな簡単な話じゃないはずだ。おい、全部洗いざらい話せ。お返ししますね、で済む話じゃないんだろ? 問題が無ければ、我が家に内々で打診したんじゃないのか?」

 

 兄に言われて、男はげんなりしたような顔になった。


「前王陛下が本当に愛した女に対して、前王妃様と、その息子が腹を立てている。つまり今の王だな。あまり夫婦仲が良くなかったのは、お宅の祖母君のせいだとさ」


「そんなことを言われても困るわ。もうおばあ様はいないのよ」


 思いがけない話に私は声を上げてしまった。

 だって、その話、もう殆ど言いがかりだと思う。


「経緯は分かった。ところで、この石は何か力があるのか? それともただの王家の象徴的な物か?」


 やっとブライアン様がまともなことを言った。


「王族とその石は契約を結ぶそうだ。王は強い願いを込めて石に祈り、石はその願いに応える。それが契約となり、それから王が次の者に石を譲るまで、石は王を守護するそうだ。本当かどうかは知らないがね」


 嫌な予感がして、兄とブライアン様の方を順に見た。兄の頬が引きつっている。


「それは王以外でも契約できるのか? 例えばうちの祖母が契約していた可能性とかはあるのか?」


「さあ、どうだろうな。だが二か月前まで前王陛下が契約者だったのは確かだ。なにせ、四十年ほど前の事故では、馬車が崖から落ちても生きていたんだ。その後の暗殺も失敗続き」


「暗殺しようとしていたのか!?」兄が呆れたように聞き返す。


「王は多方向から狙われる。身内からもな。その王が二か月前に亡くなったから、今のその石は無契約の状態だ」


「ほおお。じゃあ、俺が今願い事をして契約を結んだら、俺を守護するのか?」


 兄は引きつったまま無理やり笑って聞いた。

 ハハハと男が笑い出した。


「それじゃあ、誰に渡るかわかったもんじゃない。前の持ち主が認めた人物にしか受け継がれないのさ。前王陛下は、孫の王太子に譲ると宣言されたそうだ。残念だったな」


 兄がこちらを見る。ブライアン様もこちらを見ている。

 またもや血の気が引きそうな気分だ。私は急いで聞いた。


「誰が守護されているのかは、どうしたらわかるの?」


「守護されている人物が触ると光るんだとさ。それでわかる」


「間違えて他の人間に守護が移動してしまった場合は、どうなるんだ」


 兄は相変わらず、片頬を引き吊らせている。


「さあな。俺はただの密偵だから、詳しいことは知らない。だけど代替わりの儀式のメインが、この石の譲渡宣言だからな。現在の王の時から現物無しだが、それでも形としての儀式は残っている。もしそんなことが起こったら大騒ぎになるな」


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私生活バタバタして読めないうちに完結してた! しかもなんかすごい秘密出てきた! 急いで読みたいような、じっくり読みたいような…
あかーん!とんでもねぇ裏事情聞いてしまった感がすごい
面白い。 王様、本気で王太子に譲るつもりで『孫に譲る』としていたら、何故か主人公に所有権が移動してしまった。 という事だとしたら闇が深そう。 まあ単純に宝石の近くにいたも孫が優先されただけだとしたらま…
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