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この結婚、死んでも嫌です【連載版】  作者:
第四章 石の謎

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石の謎ー3


 着替えは済ませていたので、髪の毛を整え直し、軽く化粧も直して出掛ける準備をすませた。その間に、ベルがハンカチを綺麗に整えて、畳んでくれていた。


 従僕に兄の部屋に案内されると、二人が待っていた。

 二人共着替えたようで、兄もブライアン様も、実用的で簡単な白いシャツにベストという服装に変わっている。

 兄は元々剣術の練習着だったのであまり変わらないが、ブライアン様のそういう姿は初めてで、ドギマギしてしまう。華やかな服装も素敵だけど、こういったシンプルな服装の方が美しさが際立つようだ。


「ありがとうございます。私たちのために」


 私がそう言うと、ブライアン様はこちらにスッと近付き、私の手を取って口づける。 

 思わず、びくーんと手が持ち上がってしまった。


「あ、あの、こういうご挨拶には慣れていなくて。失礼しました」


 彼はいたずらっぽくニコッと微笑み、「あなたのなさることなら、何でも嬉しいです」と言った。


 さっきの寂しげな様子はどこに?

 心配して損したような気分になった。

 先にハンカチを返しておこうと思い、畳んでもらったハンカチを差し出した。


「汚れを拭って、チャックの噛み跡に刺繍を追加しました。気に入っていただけるといいのですけど」


 彼はにこにこしながらハンカチを受け取り、広げた。

 ハンカチの反対側、チャックの噛んでいた辺りに、青い花の群生が広がる。

 今までのハンカチより、広げた時のインパクトは倍くらいもある。やっぱり彼の青は美しい。その青の花の周辺を、柔らかな薄緑の葉が包み込んでいる。


 それを見て無言のブライアン様。


「力作なのですけど、お気に召しませんか? すみません。私もう一度直しますから、返してください」


「いいえ。こんな素敵なハンカチは見たことがありません。感激して言葉を失いました」


「うん、凄いな。お前の刺繍の腕は凄いよ。それに肝が太い」


「まあ、どういう意味よ」


「副団長殿、チャックがいたずらをするたびに、このハンカチは豪華になっていって、その内に、全面が青と薄緑で埋まりそうですね」


 兄はそんなことを言って笑う。


「チャックの前にこれを出したら、そうね、また咥えて離さないかも。そうしたら、また刺繍を追加します」


 ブライアン様は嬉しそうに、「その時はまたよろしく。こういう追加なら大歓迎です。全面が刺繍で埋まったら家宝にします」と笑ってくれた。


 そして、ハンカチが汚れたら困るから、兄の部屋にハンカチを預けると言った。


 今からすることは、綺麗事ではない。心してかからないといけない。

 私はおばあさまの扇子を持って来ていた。これを見せていいのかどうか不安だったけど、これがすべての元なのだ。見せて聞いたほうがいい事もあるだろう。


「おい、ちょっと見せてみろよ」


 そう言う兄に、扇子を渡す。兄は机の引き出しから道具を出して来て、器用に扇子の要を外した。

 銀の蕾は左右から組み合わされているようで、扇子から外すと簡単に二つに分かれた。そして中からコロンと丸い石が転がり出て来た。


 金色のキャッツアイの石。

 一センチにも満たないこの石が何だと言うのだろう。だが私の死に戻りがこの石のせいなら、凄まじい力を秘めていることになる。


 私は石を手に取った。金色の輝きが増したように見える。

 指でつまんでしげしげと見つめた。


 それを兄に渡すと、金色の輝きは薄れた。ブライアン様に渡しても同じだ。

 私の手元に戻ると、またもや輝きが増した。


「私が触ると、輝きますね」


「そうだな。なんだろうな」


「よくわからないが、マリア嬢が持つと光るっていうのは、隠しておいた方がいいかもしれないな。逃がす気は無いが、万が一のことを考えたほうがいいだろう」


「では、行きますか」


 そう言って兄が先頭に立って歩き出した。

 賊は騎士団の宿舎に監禁しているそうだ。気が重いが行くしかない。


 宿舎に入ると、何人かがそこにいて、私たちを出迎えてくれた。


「エリック様、賊の頭以外はこっちの二部屋に押し込んであります。本人から名前と今回の役割について聞いて、お互いの関係も確認済みです。何人かは身元も分かっています」


「そうか、ご苦労。まだ関係がはっきりしないから、そのまま監禁していてくれ。絶対に逃がすんじゃないぞ」


「はい。それから外の荷ですが、ちゃんと物が入っています。新品で高級品ばかりです。それに関して捕まえた奴らに聞いたら、全員知らないと言っています」


「それはおかしいな。これだけの荷を買い集めるのは大変だ。一人では出来ないだろう。全員に、いつ荷を馬車に運び込んだか聞いてくれ。協力者がこの中にいて知らんふりしているか、もしくは他にいるかだな」


「頭の男は気がついたか?」


「はい。二名が部屋内で監視しています」


「わかった」


 男を入れた地下の部屋は、鉄格子の向こうにあった。


 私は兵舎に来ることも無いし、ましてや罪人を押し込める地下牢など、あることすら知らなかった。

 恐々と歩いていたら、ブライアン様が手を取ってくれた。


「不安になると思いますが、それだけ警戒したほうがいい相手だと言うことです。私もエリックの処置に賛成です」


 部屋では二名の騎士が、入り口と男の横で監視をしている。

 男は木の椅子にぐるぐるに縛られ、さるぐつわをされている。あまり特徴のない平凡な顔だちで、今は全く無害な人物にしか見えない。


「ご苦労。上に行って休んでくれ。それから、俺達が戻るまで、ここには立ち入り禁止だ」


 騎士達が階上に上がり、ドアが閉まると、途端にシンとした。


「では、副団長。お願いします」


「うん。まずはさるぐつわを取らないとな。それは俺がやる。君たちはちょっと離れていてくれ」

 

 ブライアン様はそう言って、男に近付いた。

 自白剤というのは、いつ飲ませるのだろうか。何も持っていないように見えるけど、丸薬なら、それこそ爪先くらいの物だろう。


 期待して見守ったけど、特に何かを飲ませる様子もなく、尋問が始まった。

 ブライアン様は男のすぐ横に、兄が正面に座り、兄が質問をした。


「まずは、お前の名を言ってくれ」


「マルコです。お詫びの品をお渡しするためにこちらに出向きました。私はディール侯爵家の使用人です」


「その使用人が、なぜ盗まれたこのアクセサリーを持っていたんだ?」


 そう言って、兄が私のアクセサリーを、男の目の前に並べた。そこには扇子も、練香もある。


「それは、拾いました」


 私は、あまりに見え透いた男の言い訳に、衝撃を受けた。それが引いてから、そう言い張れば、それは嘘だと決めつけるのも難しい事に気付いた。

 この男、慣れているんだわ。そう感じた。やはり、普通の人間ではない。


「この屋敷には、何をしに来たんだ?」


「お詫びの品を届けに」


「そういう嘘はもういい。侯爵家はそんな使者も荷物も送っていないそうだ。ところで、あの荷はどこから調達した?」


「侯爵家のジェイソン様から、これを持って行けと言われただけなんです。本当にそれ以外、私は何も知りません」


「ふうん、ジェイソンからか。それはうまい言い訳だな。死人に口無しか」


「何の話です?」


「気にするな。大したことじゃあない」そう言って兄は話を終わらせた。

 

 男には思いがけない流れだったのか、うっと詰まった。ジェイソン様の死について、感情的にならずに軽く流されるとは思わなかったのだろう。


 男は兄から視線を移し、ブライアン様、それから私の順に様子を窺い、そこで表情をゆがめた。


「おいおい、噂と全く違う。何が大人しくて何も言えない令嬢だ。見る目が無いにもほどがある。人が死んでも自分が襲われても、びくともしていないじゃないか」



 

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― 新着の感想 ―
家電ある世界観じゃなさそうだしアイロンに使うお湯は、お茶用にいつも沸かしてるのかな? それとも化粧直すだけでもアイロンがけをお湯沸かすところから始めて釣り合うくらい時間かかるものなんだろうか?
関係ないことで煽って冷静さをなくさせて本命の話を誤魔化す
負け犬の遠吠え乙、って感じですね~。 直前まで従者気取ってたくせに。 あ、もしや自白剤効いてきた!? 実行犯がジェイソン&メリーとして。 黒幕がこいつ一人だけとは思えないですね。 毒薬を用意して貰う…
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