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この結婚、死んでも嫌です【連載版】  作者:
第三章 お守り探し

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襲撃ー3

感想ありがとうございます。

全部読んでいます。この先もお楽しみ下さい。

誤字脱字報告も、非常に助かっています。ありがとうございます。


 前方でドアが開き、庭師が二人飛び出してきた。一人は手になたを持っている。

 なたを持っていないトムが母を受け取り、凄い速さで屋敷に向かって走った。

 ものすごく速い。

 

 母は荷物のように抱えられている。騎士の御姫様抱っことは、だいぶ様子が違って見える。

 もちろん母は憤慨しているが、実際はそれどころではないのだ。

 頑張ってトム、と心の中でエールを送った。


 その後ろを、なたを構えたニックが周囲を警戒しながら続いた。

 母を抱えていた騎士は、後方に戻り、もう一人と一緒に追手を追い払い始めた。


 私は後ろを振り返って、初めて追われていたのに気がついたのだった。


 なぜ私たちを追うの? 

 もう一度後ろを見て、理由がわかった。

 門が閉じられている。いつの間に?


 賊は外へ逃げられなくなったので、人質を取ろうとしているのだ。

 私か母が捕まったら、こちらは誰も手を出せなくなる。 


 門前には騎士が一人立ち、門を破ろうとする馬車と争っていた。

 その騎士は、手綱を御者から奪い、馬を放しているようだ。すでに二頭の馬が敷地内を興奮して走っている。

 兄とブライアン様はあの男と向かい合っている。そしてその他の者達が私を追って来ていた。

 

 走らなくては。


 ドアの前の階段が目の前に迫ったところで、ドアが開きロイドが出てきた。


「お嬢様、頭を下げてください」


 叫ぶのを聞いて私はしゃがんだ。

 その頭の上を、かぼちゃが飛んで行った。

 その後ろを、ジャガイモとキャベツが、それを追い越して、鍋が回転しながら凄い勢いで飛んだ。


 あら? 何、これ! と見上げる。雰囲気が全く違うけど、夢?


 階段の踊り場に、シェフのジョンを先頭に、厨房のメンバーが立って、野菜や鍋をぶんぶんと投げている。


 その後ろに立つのは、洗濯係の女性達。頼もしい感じの腕。

 交代した彼女達は、洗濯の叩き棒と、洗濯板を投げている。かなりの威力だ。

 我が家の騎士たちは、「もういいぞ」と、止めにかかっている。


 ちょっと見とれている私を、ロイドが引っ張って階段を登らせ、ドアの内側に引き込んだ。ベルがしっかりと後ろにくっついて入ってくる。

 母は、と問いかけると、「裏口から無事に逃げ込んでいます」とロイドが答えた。


 そしてがっちりとドアに閂が掛けられた。


 兄が遅かった理由が、これだった。

 ロイドの報告を聞いて、兄は母と私が人質に取られなければ、勝てると判断したそうだ。

 私達を屋敷に戻してから、捕縛開始の予定だが、もしタイミングが狂った場合、どうやって二人を無事に屋敷に逃がすか。それで、腕力のある職種の使用人達が集められた。

 兄の作戦は大成功だった。


 庭師二人は、木の切り株を抱えて運ぶのに慣れているので、母の搬入役を任された。

 庭師には、実は武器が沢山ある。

 なたが一番威力があるから手にしていたが、飛び道具も持っていた。

 鋭い刃を持つナイフやハサミを、作業着の道具掛けにたくさん突っ込んでいる。これをかなり正確に投げられるのだ。

 

「マリアは足が速い。自力で駆けられるだろう」


 兄は、そう言っていたそうだ。そうだけど、なんとなくムッとする。


 ドアや窓を全てしっかりと閉めたら、外の音はあまり聞こえなくなった。一階の窓には外に飾り格子が付いているので、破って入ってくることは出来ない。

 

 でも、外の様子が気になって仕方が無かった。相手は九人いるのに、こちらはブライアン様を含めて六人。大丈夫なのだろうか。


 不安で震えていたら、ドアを叩く音が聞こえた。

 その場にいる全員が飛び上がったと思う。

 

 全員で、じっと声が掛かるのを待った。


「おい、終わったぞ。開けてくれ」


 兄の声だった。

 ロイドがすぐにドアの閂を引き抜こうと手を掛け、それから聞いた。


「マイクは無事ですか?」


「ああ、無事だ」


 マイクって誰? そう目で問いかける私にロイドが、「合言葉です」と答えた。


 ロイドがドアを開けると、そこに兄とブライアン様が立っていた。

 敷地内に、賊が倒れているのを、庭師のトムとニックが、縄で縛ってまわっているのが見える。

 

「お兄様、よくご無事で」


 兄がちらっとブライアン様の方を横目で見て、「副団長殿が助太刀に入ってくれていたからな。楽勝だったよ」と言った。


「ありがとうございます。ブライアン様」


 それから続けて兄に聞いた。


「他の皆は大丈夫? 怪我はしていない?」


「ああ、あの男以外は、酒場で雇われた雑魚ばかりのようで、手ごたえが無かったから。事情が分からないから、なるべく傷つけずに捕縛した。あいつらは多分、反撃されるなんて考えてもいなかったんだろう。もしお前の話を聞いていなければ、危なかった」


 それからしばらく黙って考えていた兄が、もう一度言いなおした。


「いいや、そうじゃない。運が良かったんだ。このやり方だと俺は気付かない。気付いても荷の搬入だと聞かされたら、気にも留めないだろう。あの男は母か侍女を脅して案内させてから殺し、目的の品を手に平然と出て行ったはずだ」


 私の体がブルッと震えた。


「あの男は捕まえたよ。気絶させたから、後で尋問する。ところで、おばあさまの扇子の話で、あの男が急に態度を変えたが、扇子がその探し物だったということか?」


「ええ、多分。目の模様の宝石を探していたらしいから」


「ふうん」と言って、布袋を私に差し出す。その中に、盗まれたアクセサリーと扇子や練香が入っていた。


「あの男の懐に入っていたよ」


 私はいつもの扇子を手に、要の部分をしげしげと観察した。

 銀細工で、爪位の大きさの花の蕾の形をしている。蕾は内側に透明ガラスのようなものを抱え込んでいた。キャッツアイだと言われても、見えているのはほんの数ミリなので、全くわからなかった。


「これは、分解してもらわないとわからないわ。母は見たことがあるような口ぶりだったわね」


 それで、まずは母に聞きに行くことになった。

 その前に、後片づけに走り回っている皆にお礼の言葉を掛けた。


「今日はごちそうとお酒を出すわね」と約束をしたら、皆の顔がパッと明るく輝き、歓声が上がった。 

 

 それに兄が加えた。


「ジョン。厨房の負担にならないよう、凝ったものではなく、豪快な肉の丸焼きを出してくれ。たっぷりとな。先日作ってもらった串焼きなんか、絶品だったよ。それとワインもバンバン開けてくれ。皆のおかげで、多分数人が命拾いした」


 浮き浮きした様子の使用人達と真反対に、部屋で休んでいた母はご機嫌斜めだった。


「いったいなんだと言うのです。あんなひどい扱い有り得ません。全く人を物みたいに!」


「母上、彼らは侯爵家の名を騙った賊です。あのまま屋敷に入れていたら、母上は殺されたかもしれません。いいえ、たぶん殺されていました」


「何ですって。だけど、あの品物は? あんなに荷を持って来る盗賊なんている?」


「見えている分だけで、箱は空かもしれませんよ」


 ブライアン様が、いたわるように母に告げた。

 母は、はっとしたように黙る。私も思わず納得した。積まれた箱の中身は見ていないから。 



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― 新着の感想 ―
私の中でお母様は市原悦子(家政婦は見た!の人)でキャスティングされてます。 何故だろう、好感度が下がらない。
空けてなかったのか。 トロイの木馬的な意味で、奥に賊が入ってたのかと思ってた
この察しが致命的に悪い女が社交の要(女主人)では、この家は社交界で舐められまくっているのではないだろうか……
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