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銀の英雄と世界を覆う噓  作者: hini
1章 訓練編
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1-モノローグ

修了試験がすべて終わり、小屋へ戻ると、

私の机の上に一通の文書が置かれていた。


差出人は――リュシアン殿。


胸の奥に、嫌な予感が広がる。

私はそれを否定するように、そっと紙を手に取り、ページを捲った。


内容は成績優秀者の配属先、

ペアでの配置指定、

各部隊への割り当て人数。


どれも想定の範囲内だった。


……最後の一文を見るまでは。


――レイル・アルバートとアスカ・ウォーカーは、必ず調査隊へ入隊させること。


思わず、目を疑った。


調査隊は魔族との正面衝突こそ少ないが、

遭遇率は高い。

しかも戦闘部隊と違い、物資も支援も限られている。


アスカはともかく――

レイルを、そんな場所へ送るわけにはいかない。


レイルの剣術は、対魔族戦を想定していない。

あの剣は、人を守るためのものだ。

魔族相手では、おそらく通用しない。


……自殺行為だ。


私は文書を読み終えると、

その足でレガルド城へ向かった。


――


「リュシアン殿! これは明らかに適正ではありません!」


執務室に入るなり、私は声を荒げていた。


「こんなの、レイルを死なせに行かせるようなものです。

彼には警備隊が適任かと」


リュシアン殿は、私の言葉を遮らずに聞いていた。

そして、ゆっくりと頷く。


「ラセルさん。あなたの意見は正しい。筋も通っている」


一度、言葉を区切り、続ける。


「ですが――僕は、レイルくんとアスカくんを

この国の未来を背負う人材だと考えています」


「あなたから聞きました。

二人は互いに切磋琢磨し、

一緒にいることで強くなる、と」


私の目を、まっすぐに見据えて言う。


「それを踏まえた上での、決定です」


さらに、静かに。


「ラセルさん。

指導者として、彼の命を守ろうとするあなたの姿勢は尊い」


だが、と言外に含ませながら――


「しかし、死地でしか学べないものもあります」


私は言葉を失った。


反論は、いくらでも思い浮かんだ。

だが、どれも口にすることはできなかった。


「……リュシアン殿に、そう判断される理由があるのであれば」


私は、視線を落とす。


「私は、反対しません。失礼しました」


深く頭を下げ、執務室を後にする。


扉を閉めたとき、ようやく理解した。


リュシアン殿は――

私には計り知れないほど、大きなものを背負っているのだと。



――――――

 ――王国歴143年7月1日 未明


目を覚ますと、あたりはまだ暗闇に包まれていた。

横を見ると、ミレアが静かに寝息を立てている。


起こさないように、そっと身を起こした。


俺は、みんなの顔を一人ずつ眺める。


……色々あったな。


それでも、この一年を楽しく過ごせたのは、間違いなくこいつらのおかげだ。


カレン。

アルト。

ミレア。


そして――レイル。


誰一人欠けていたら、

俺はここまで強くなれていなかったと思う。


中でも、レイルは特別だった。


他の三人も最高に頼れる仲間だ。

けど、レイルだけは何かが違った。


初めて、龍脈車の荷台で会ったときからだ。

根拠なんてなかったけど、

「ああ、こいつは俺を超えていくな」

そう思った。


実際、竜核の試験では――

俺は、何の役にも立たなかった。


チームを乱して、

迷惑をかけて、

足を引っ張った。


それでもレイルは、

竜核を抱えて走り続けた。


あの背中を見たとき、

俺は心の底から思った。


――お前しか、相棒はいない。


相変わらず、理由なんてなかったけどな。


そこからだ。

俺は、レイルに負けないように努力した。


けど結局、

王国兵器の扱いと武術以外――

何一つ、勝てなかった。


それでもいい。


俺は、お前を超える。


だから――

お前も、今まで通り俺を超えていけ。


それが、

俺の相棒としての責任だ。


――――――


 ――王国歴143年7月1日 5:45


仲間の声で、私は目を覚ました。

窓から差し込む朝の光が、彼の背中をやさしく照らしている。


寝ぼけたまま目を擦っていると、

彼はドアの前に立ち、一度だけこちらを振り返った。


「みんな、本当にありがとう」


それだけで十分なのに、彼は笑って言い足す。


「次に会うときは、剣一本で、もっと強くなってるから」


少し間を置いて――


「じゃあ、俺。先に行くよ」


振り返らない背中。


気づけば、私は小さく呟いていた。


「……変わらないね。優しいの」


彼は、その言葉を聞かずに部屋を出ていった。


ふと隣を見ると、ミレアが泣きそうな顔をしていた。

私はそっと、彼女の隣に腰を下ろす。


「……レイルのこと、心配?」


ミレアは小さく頷いた。


「兵器が使えないのに、どうして警備隊じゃないのかなって……」


言葉を選ぶように、続ける。


「優しさって、調査隊では……心を壊す欠点になることもあるでしょ」


俯いたまま、ミレアは言った。


「レイルさん、兵器のことがあってから、

ずっと無理して私たちと一緒にいようとしてた気がするの。

……壊れないか、少しだけ心配で」


その空気を破るように、アスカが笑った。


「安心しろって!」


いつもの調子で、肩をすくめる。


「あいつには俺がいる。

俺が強くなるのは、あいつがいるからだしな」


少し考えるようにして、付け足す。


「だから多分、俺たち一緒の配属なんだろ。たぶんだけど!」


その言葉に、場の空気がふっと緩んだ。


「アスカくん……レイルくんを、お願いします」


「私からも。

どうか、壊れないように見ていてあげて」


アスカは、迷いなく笑った。


「おう! 当たり前だろ!」


Twitter(X)でも進捗や設定について呟いています


→ https://x.com/do16294?s=21&t=Gi9tqh5ZSyqRTyQ3uDwMHQ

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