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異世界転生の代わりに、僕たちは同じ夏の日を繰り返す

作者: 禅謝
掲載日:2025/12/19

異世界転生を断り、望んだこと。

「ほーんと、1時間に1本しか来ない。バス」

「田舎だからね、仕方ないよ」


セミの大合唱がうるさいな。そう思いながら、少年は日傘を差している。

「手、疲れない?」

「君が日焼けしたら大変じゃないか。

それに、僕は高2だ、力だってあるさ」

「たった1日なのに。

過保護」

クスクス、と同じ17歳の少女に笑われる。


少女は木のベンチに座り、少年はその隣に立っている。


「どうせなら最終バスまで待っていようよ」

「じゃあ、途中で弁当を買ってくるね。コンビニがあるから、歩いて15分の所に。

何がいい?」

「何でも食べれるもんね。

ま、いいや、今日は適当で」

「わかった。

ジュースは、まだあるね。塩飴は」

「本当に過保護」


真昼の田舎。

緑はあり、セミも鳴いている。

通行人はいない。いたとしても、2人には関係ないだろう。




そして、夜。


「あーあ、今日も終わっちゃった。

明日は何しよっかな。前の今日はかき氷巡りをして。泳いでみよっかな、明日、次の今日は。人生初めてのプール! とか。

病院帰って寝よ」

懐中電灯で照らしながら、2人で夜道を歩く。

街灯はなく、やはり通行人もいない。2人だけが住んでいる廃村、ということはなく、普通の田舎なのだが。


ふと、少年が立ち止まる。


「おっと。

どうしたの?」

少女もビックリしつつ止まる。

心配そうに、少年は覗き込む。

「今日、楽しかったかな。1日中、朝から夜まで、バス停でバスを待っていただけで」


1時間に1本来たバス。

2人を乗せようとし、前の扉が開く。それに、「違います」というように、少年は微笑み手を振り、「何だ?」と運転手は不思議ながら閉めて去っていく。

それだけの、1日。


「もっと、楽しくできたんじゃないのかな、僕」


バン、と少女は彼の背中を叩く。

背が小さく、力も弱いので、痛くはないが。


「私は当たり前のことをさせてもらえなかったんだよ。だから、前の今日も楽しかったし、前の前の今日も楽しかったし、この今日も楽しかった。

異世界転生を断って、私はこれを望んだ。間違っていないよ」

満面の笑みで、言う。


「なら、いいんだけど。

僕も、君と、こうすることができて、よかったって思うよ」

「よーし。

私が満足するまで楽しむぞ! 完全に満足するまで!」

「そうだね」




そして、朝。

「今日は、っと」

起きたらすぐに、彼はスマホで日にちを確認する。


「うん。

繰り返している」

ベッドから出ると、

「病院に迎えに行こう。今日も元気なはずだから」


『同じ日を繰り返す』

ただし、それに気付いているのは、少女と、小さい頃から過保護で恋人な少年だけ。

それが、『異世界転生』を断り、望んだこと。

少女は、異世界で転生をしない。死んだら、眠ってるときみたいに、無、何も感じず、何も思わない。夢を見ていないときの、それ。


『少女が完全に満足するまで』

同じ日は繰り返される。




ありがとうございました。

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