異世界転生の代わりに、僕たちは同じ夏の日を繰り返す
異世界転生を断り、望んだこと。
「ほーんと、1時間に1本しか来ない。バス」
「田舎だからね、仕方ないよ」
セミの大合唱がうるさいな。そう思いながら、少年は日傘を差している。
「手、疲れない?」
「君が日焼けしたら大変じゃないか。
それに、僕は高2だ、力だってあるさ」
「たった1日なのに。
過保護」
クスクス、と同じ17歳の少女に笑われる。
少女は木のベンチに座り、少年はその隣に立っている。
「どうせなら最終バスまで待っていようよ」
「じゃあ、途中で弁当を買ってくるね。コンビニがあるから、歩いて15分の所に。
何がいい?」
「何でも食べれるもんね。
ま、いいや、今日は適当で」
「わかった。
ジュースは、まだあるね。塩飴は」
「本当に過保護」
真昼の田舎。
緑はあり、セミも鳴いている。
通行人はいない。いたとしても、2人には関係ないだろう。
そして、夜。
「あーあ、今日も終わっちゃった。
明日は何しよっかな。前の今日はかき氷巡りをして。泳いでみよっかな、明日、次の今日は。人生初めてのプール! とか。
病院帰って寝よ」
懐中電灯で照らしながら、2人で夜道を歩く。
街灯はなく、やはり通行人もいない。2人だけが住んでいる廃村、ということはなく、普通の田舎なのだが。
ふと、少年が立ち止まる。
「おっと。
どうしたの?」
少女もビックリしつつ止まる。
心配そうに、少年は覗き込む。
「今日、楽しかったかな。1日中、朝から夜まで、バス停でバスを待っていただけで」
1時間に1本来たバス。
2人を乗せようとし、前の扉が開く。それに、「違います」というように、少年は微笑み手を振り、「何だ?」と運転手は不思議ながら閉めて去っていく。
それだけの、1日。
「もっと、楽しくできたんじゃないのかな、僕」
バン、と少女は彼の背中を叩く。
背が小さく、力も弱いので、痛くはないが。
「私は当たり前のことをさせてもらえなかったんだよ。だから、前の今日も楽しかったし、前の前の今日も楽しかったし、この今日も楽しかった。
異世界転生を断って、私はこれを望んだ。間違っていないよ」
満面の笑みで、言う。
「なら、いいんだけど。
僕も、君と、こうすることができて、よかったって思うよ」
「よーし。
私が満足するまで楽しむぞ! 完全に満足するまで!」
「そうだね」
そして、朝。
「今日は、っと」
起きたらすぐに、彼はスマホで日にちを確認する。
「うん。
繰り返している」
ベッドから出ると、
「病院に迎えに行こう。今日も元気なはずだから」
『同じ日を繰り返す』
ただし、それに気付いているのは、少女と、小さい頃から過保護で恋人な少年だけ。
それが、『異世界転生』を断り、望んだこと。
少女は、異世界で転生をしない。死んだら、眠ってるときみたいに、無、何も感じず、何も思わない。夢を見ていないときの、それ。
『少女が完全に満足するまで』
同じ日は繰り返される。
ありがとうございました。




