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ダークサイド  作者: Fluffy
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やんごとなきお方と彼女の関係性2/2


 暁人が朝起きると、丹の姿はなかった。


 それどころか、彼女は行方をくらませた。学園にも姿をみせず、家族にも幼馴染たちにも知らせず行方不明となった。暁人は使えるツテを全て使って彼女の行方を調べたが、全く情報を掴めなかった。


 婚約者を裏切って丹と寝てしまった罪悪感はあったが、それよりも彼女が無事でいるかどうかが気がかりだった。それからは花桜里と顔を合わせるのも気まずく、花桜里と過ごす時間は減っていった。花桜里と会う暇があるのなら、丹を探したかった。


 もう丹に会うことは諦め、どうか彼女がどこかで幸せに暮らしていますように。そう思い始めた時だった。花桜里との関係も冷めてしまった頃、黄輝がどこからか丹を見つけてきた。


 その知らせを聞いて真っ先に彼女の家に駆けつけた。


 面会拒否。門前払いをされた。まさか皇族が五大夫にそんな扱いを受けるとは思ってもみなかった。それが丹の意思だと知らされた暁人は、あの夜のことはなかったことにして今後過ごさなければならないことを酷く憂いた。


 そんな中で花桜里と会っても全く笑えない。花桜里の側には常に丹がいたのに、今は丹の姿はどこにもない。暁人は学園を卒業して丹との接点はより少なくなっていった。


 そしてあのデビュタントを迎えた。


 花桜里は当然のように暁人にエスコートを依頼してきた。丹もデビュタントに参加するのか?誰が彼女をエスコートするのか?そんなことを花桜里には聞けなかった。


 会場に行った暁人は業界の重鎮たちと挨拶をしながら黄輝と共にエスコートする時間になるまで待機していた。会場に丹がいないか探してしまう。だが、彼女の姿は一向に見えない。思わず暁人は黄輝に尋ねた。


「丹は、今日出席しないのか?」


「さあな。丹音(あかね)さん曰く、今朝は行きたくないと駄々を捏ねていたらしい。まあ、(アイツ)が来たところでお前が心配をする必要はない。お前は自分の婚約者だけ見てろ。よそ見してると花桜里(女王様)の機嫌が悪くなるだけだ」


 黄輝は丹の出席には興味のないように暁人に答えた。暁人も黄輝がそう言うのなら、丹は来ないだろうし、来たところで自分が彼女と言葉を交わす資格がないのだと感じざるを得なかった。


 だが司会のアナウンスが始まり、社交界デビューする令嬢とエスコートの男性の名前が呼ばれていく中、司会が彼女の名前を呼んだ。暁人は驚いて令嬢たちが出てくるステージを見て彼女の姿を探すが、一向に出てこない。


 会場はざわつき、ステージとは反対方向を見ている人が何人もいる。暁人も皆と同じ視線の方を見ると、そこには1年間会いたくて会いたくてしょうがなかった彼女が知らない男性を連れてこちらへ向かってくる姿があった。


 美しくドレスアップされた彼女に目を奪われるよりも、暁人は彼女が連れている男が何者なのか気になってしょうがない。暁人の隣に並んだ丹と彼女が連れてきた男。横目でじろじろ見るわけにもいかなかった。今すぐにでもその男が誰なのか彼女に問い正したかった。だが暁人はできなかった。気持ちが互いに冷め切っているであろう自分の婚約者を見るしかなかった。


 音楽が流れて各カップルが踊る中、丹が知らない男に微笑みながら踊る姿がちらつく。暁人と目が合うと勢いよく目を逸らす彼女。やはり彼女に避けられているのか。そう実感した暁人は一気に奈落の底に落とされた気分だった。


 


 あの日、丹と一言でも言葉を交わしたくてダンスが終わった後に彼女を探した。テラス席に彼女と先ほどの連れの男がいるのが見えた。割って入るわけにもいかず、二人が席を立つのを待とうと、窓際に佇んでいると黄輝がテラスに出ていく。そのまま様子を見ていると、連れの男がすぐ席を立って一人でテラスから会場に戻ってきた。

 

 あそこに入っていける黄輝の度胸は羨ましかった。暁人が連れの男に一言『彼女と話したいから彼女を貸してくれ』と言えば、きっと彼女と二人きりになれただろう。皇族に逆らう術師はいないのだから。


 黄輝と丹が何を話しているのか聞きたくて暁人はテラス席の横の壁に寄りかかって耳を澄ませる。何か言い合いをしているようだがよく聞こえない。声を聞くためにテラスの入り口に入ろうとした時、花桜里が暁人の元へやってきた。


 そして右手を振り上げて勢いよく暁人の頬を叩いた。


 何が起きたのか暁人は一瞬わからなかった。当然、会場中の視線を集めることになる。皇族としてはあるまじき恥であり、花桜里は皇族への反逆罪に問われかねない。混乱する会場を前にどう対処しようか暁人が迷っているうちに、テラス席にいた黄輝が駆けつけて花桜里を取り抑えた。

 

 『どうやら花桜里は寄っているようだ。誰だ?彼女に酒を飲ませたのは?まだ未成年だぞ』と気を聞かせて会場中の視線を逸らしてくれた。


 丹を見つけ出したのも黄輝、花桜里を抑えて周囲が疑念を抱かないように気を利かせてくれたのも黄輝。黄輝に頼りすぎているのが不甲斐なく思えた。だが暁人はこの機会を逃すわけにはいかない。テラス席には今、丹が一人でいるのだから。


 丹のもとへと向かうのは早かった。あれだけ避けられ、いざ目の前にいると会うのを躊躇していたというのに。勢いというのは大事だな。暁人はそう思った。


 気づけばテラス席に座る丹を抱きしめていた。


 丹は抵抗する。


 『ちょっと、離して』


 『嫌だ』


 『ここがどこだかわかってる?!みんなに見られる!』


 『僕は君が好きなんだ』


 『…ヤメテ……それはあなたの勘違いよ、勘違い…だから忘れて!』


 『…あの夜のことは忘れられない。なかったことになんてできない…だって、僕はずっと、ずっと昔から君のことが好きだから』


 『やめてよ…なんで?なんで忘れてくれないの?私が間違ってたの、あなたに頼んだ私が…花桜里は私の親友なの!あなたは、花桜里の彼氏で、婚約者…お願いだから、もう私を巻き込まないで!』


 丹の抵抗が激しく、暁人は取り付く島もなかった。彼女を抱きしめていた腕を弱めると、籠から放たれた鳥のように飛んでいってしまった。それでも彼女のことが忘れられず、この思いをどうしていいか分からずにいた。


 黄輝はどうやら暁人と丹の関係について何か知っているように見えた。暁人を見る目がそうだった。だからデビュタントのあの日、騒ぎが起こった後に少しではあるが暁人も黄輝に事情を打ち明けた。だから暁人は今度は黄輝に全て打ち明けて楽になろうと、黄輝の住むホテルを訪れて彼を待っていたのだ。


 だが現れたのは丹を抱き抱えて部屋に入っていく黄輝だった。

 

(だからデビュタントの日、テラスで丹と黄輝が二人で話していたのか?丹をエスコートした名前も知らない男から黄輝が丹を勝ち取ったということか?)


 困惑と同時に一気に押し寄せた絶望感に耐えられず、暁人は黄輝の住むホテルを後にした。 



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