第八世代(2110〜)
2110年。
世界は、原因不明のウイルスが世界を席巻しました。感染経路は飛沫感染。
感染力も極めて高く、子供や老人が亡くなるケースもございます。
治療法はなし。ワクチンや特効薬は発見に至るまでどのくらい時間がかかるかすらわかりません。
人が集まること=死のリスクという認識が常識化し。芸術祭やイベントの開催そのものが疑問視されます。
もう一つ、この街を中心に活動している宗教団体の指導者に、坂上家次男な音が就任しました。
教義と芸術を融合させたカルト宗教の指導者。
「神は語らず、描くのみ」という理念の元、他者の作品破壊や無許可壁画などが横行します。
また、この時代に活躍している主な芸術家に……
・坂上秀(坂上家正統の芸術家。インスタレーション等。)
・坂上直人(宗教と芸術の相互性。ストリートアートがメイン)
・池田 朔(遺伝子的な空間把握障害を診断され、大殺界で右目を失う。池田の血が濃すぎる。詩画集『朔ノ書』が世界的人気に。)
・池田 灯(写真集『消灯』にて、池田家の闇を外部に暴いた)
・山浦 響葉(山浦家から生まれた天才ピアニスト)
・山浦 灯湖(山浦家次女。商店街を記録する画家)
がいます。
[ケースA]
2110年の坂上家の状況です。
坂上家立地:坂の下に駅があり、勾配の上に立っている。 住宅街で、周りは宗教活動が盛んである。
信者以外の人間を、咎めるわけでもないが勧誘は続き、暮らす身としては窮屈。
何せ急勾配のてっぺんに家があり、車がないと生活は不便である。
現在、教団による『芸術家荒らし 行為』が行われている。 静かな住宅街につき、感染症の影響は少ないが、交通の便の悪さから救急車の到着が遅れる可能性がある。
坂上家夫:坂上透(第七世代、坂上透に準ずる)2110年夕暮れ芸術祭準優勝に輝く。 弟とは、立場の違いから敬遠になった。
坂上家妻:アンジェラ・坂上。外国人で、熱心なイスラム教信者である。 この町の宗教の在り方にに疑問を持っている。本人も女優・ダンサーである。 結婚後に感染症が世界的に広まり、未だ披露宴を挙げられていない。
坂上直人:透の弟。宗教の指導者にまで上り詰めた。芸術に関しては過激な思想を持っており、 他人の財産を傷つけることも芸術だと思っている。
長男:坂上 透真(2111年生)
[0~10歳]
早くから父親の仕事に興味を持ち、自宅地下にある無人展示室で育ちます。そこで「展示=気配の変化」として学びました。
5歳にしてで初の作品『影だけの来訪者』を制作。
それはセンサーで人が近づくと影だけが動くインスタレーションのようです。……5歳で!?
10歳の頃には外界との接触をほとんど絶ち、**“記録を残さない展示”**に強く傾倒しました。
[ 10~20歳]
16歳で自作の展示空間『無再生領域』を父に披露しました。
叔父にあたる坂上直人の教団から「魂を閉じ込める儀式」と誤認され、強い干渉を受けますが、拒絶していきました。
2120年時点、あらゆる「見られる行為」そのものに批判的な立場を取っているとっています。
次男:坂上 直哉(2114年生)
[0~10歳]
名前の由来を問うたとき、「叔父のようにはなるな」と言われ、強烈な違和感を抱きます。
一時期、教団の子供会に参加。グラフィティを描いていたが、
7歳のとき叔父が他人の作品を破壊する現場を目撃し、以後離反します。
[ 10~20歳]
芸術と宗教の間で模索を続け、**“説法グラフィティ”**という独自ジャンルを確立したそうです。
文字によるメッセージとビジュアルの融合を追求します。
教団内部においても“危険思想者”と見なされるが、諦めず対話を試みます。
2120年現在、町の路上を「対話の壁」として再利用するプロジェクトを主導しています。
長女:坂上 ラヤ(2107年生)
[0~10歳]
母・アンジェラの元で、クルアーン朗唱と中東舞踊を自然に覚えました。
6歳のとき、町内の宗教行列を“異なる祈りの形”としてスケッチし、祖父に激怒されました。
[ 10~20歳]
表現ジャンルは「身体=言葉の代替」。
声を使わず、舞踏と祈りを融合させたパフォーマンスを研究します。
自身を「沈黙のミナレット(塔)」と呼び、映像にも記録を残さない方針に。
2120年現在、複数の国際芸術大学からリモート招聘を受けております。
三男:坂上 澄(2112年生)
[ 0~10歳]
感染症パンデミックの最中に生まれます。病弱で、人との接触は家族にも制限されました。
手話や筆談ではなく、光と影で意思を伝える独特のスタイルを持つようになりました。
8歳のとき、部屋の窓に“光の点字”のような配列を設計し、母アンジェラがそれを解読したそうです。
[ 10~20歳]
一切の言語・記号を拒み、光と風と温度のみを用いた「無言の詩」を制作しました。
2120年時点、最も謎多き存在として注目されているが、本人は一切発信をしませんでした。世間からは、大一翔(坂上一翔)の再来と呼ばれます。
2121年、**坂上家の屋敷の天井に彫った「光の章」**が密かに鑑賞されました。
坂上家(2120)
•第八世代は、言語や記録・観賞の在り方を再定義する世代へと進化。
•坂上直人の影響を受けつつも、全員が「言葉や信仰の暴力」に対し別の形で答えようとしている。
•次回芸術祭が開催されるとすれば、坂上家の子供たちは“無音の反論”を示すことになるだろう。
* * * * *
[ケースB」
2110年の池田家の状況です。
池田家立地:代々からの大地主の家で、近くに立派な池があるが、埋め立てられて今は更地である。
この家の『長男』は、10代のどこかに必ず大殺界が訪れ、大病or大怪我を引き起こす。 場合によってはそこで死ぬことも。
近くに家はなく、外部との接触は元々薄い。 莫大な額の家賃収入が毎月入ってくる。
一族の血にこだわり、その思考は年々強くなっていく。 坂上家が因縁の相手であり、坂上直人が芸術界にもたらしている影響を特に蛇蝎のごとく嫌っている。
池田家夫:池田 朔(第八世代、池田 朔に準ずる)2110年の夕暮れ芸術祭では『空間の失調:朔ノ書・終章』でグランプリに。
これにより、池田の血こそが芸術の至高であると言う考えから抜け出られなくなる。
池田の家系に池田以外の血が混ざることを毛嫌うようになる。 妹であり、失踪していた池田 灯を強制的に連れ帰り、妻とした。 2120年度は、『観賞者ゼロ』と言う作品で優秀賞を受賞している。
池田家妻:池田灯(第八世代、池田灯に準ずる)家を出ていたが、2110芸術祭で優秀賞を受賞したことで身元がばれて、兄の妻にされる。
失踪直後に坂上直人の講演会に出席していたとして、 一族からは人間扱いを受けておらず、あくまでも『産むだけの機械』として幽閉されている。
長女:池田 澪奈(2111年生)
[ 0~10歳]
生後3か月で最初に発した言葉が「終わり」だったそうです。
5歳を最後に一切の言語を失います。以後、部屋の壁に**「緻密な渦模様」**を描き続けるようになります。
渦模様は常に左回転で、池田朔の『朔ノ書』の未収録断章と酷似していた。と言う逸話が残っております。
食事もほぼ液体のみで生きている状態に。
[ 10~20歳]
12歳で自室を封鎖され、映像記録も不可になりました。
「彼女の意識は内側に向きすぎている」と判断されたようです。
17歳時、彼女の部屋から漏れ出す奇妙な音響振動が話題となり、それについて池田朔が「娘は既に“書き終えている”」と回想しています。
2120年時点、芸術家かすら判別不能な存在に。人間とすら呼べるか怪しい。
長男:池田 澪真(2114年生)
[ 0~10歳]
生まれつき右半身に麻痺があり、医師からは「長く生きられない」と診断されます。
だが朔は「これは池田家の血が不要な部位を削った結果」として医療行為を拒否したそうです。
7歳時、身体を石膏で固めた装甲のような義肢を与えられ、「生体彫刻」として扱われたのだとか。池田氏の考えていることはよくわかりません……。
灯は泣きながら看病しますが、会話は禁止されています。
[ 10~20歳]
14歳で“動かない展示”として地下展示空間に常駐されています。人間としては扱ってもらえてないようです
来客はゼロだが、ネット上で「観賞者がいないこと自体が完成」とする匿名ファンサイトが立ち上がります。池田の周りも異常ですね……
16歳のときに一度心肺停止を起こすが、3分後に蘇生。以後、目を閉じたまま生活します。
やはり、人間として成長できないようです。
次女:池田 澪々(2117年生)
[0~10歳]
妊娠初期の超音波検査で“双子”とされたが、出産時は1体のみでした。
幼少期から極端な色彩過敏を示し、黒・白・赤の三色以外は視界に入れられません。
池田家内では“色を食む子”として特殊な彩光食(LED色調食)で育ちました。
9歳の頃から、自身の皮膚を写し取った印刷物を壁に貼る行為が始まりました。
[ 10~20歳]
13歳で「自分のもう一人の声」をテープに吹き込みますが、録音は一切残らなかったようです。
15歳時、自身の部屋を**反射材と白布で埋め尽くし、「自分の輪郭を溶かす儀式」**を開始しました。
現在、母・灯の“生きた鏡”として家内に扱われていますが。それが芸術家かどうかは議論が分かれています。
総括:池田家(2120)
•三人の子どもたちは全員、芸術家ですらなくなっている可能性がある。
•池田朔は「芸術を“継がせる”段階は終わった。我々は“表現する遺伝子”そのものを育てている」と公言。
•池田家では現在、「表現者の死体化」こそが最も完成度の高い作品形態とされている。
•外部はもはや立ち入り不可能。感染症の侵入も拒むが、それ以上に“家そのもの”が外界との断絶装置と化している。
* * * * *
{ケースC]
2110年の山浦家の状況です。
山浦家立地;池田家とまでは行かなくとも、裏に山を持つ地主である。 あたりは、住宅街で周りの人間との交流は多い。
山浦 陽太、山浦 彰映、山浦 嶺3代にわたり、芸術の街を盛り上げてきた。
街までのアクセスは良く、徒歩圏内に商店街や、スーパー、 劇場にアトリア、本屋に映画館など、立地的には恵まれてるといえる。
が、感染症の影響を一番受けた場所と言える。
山浦家夫:山浦 嶺(第八世代、山浦 嶺に準ずる。)父を継いで、夕暮れ芸術祭理事になった際にはその芸術評価の手腕が疑問視されたが、
2110年、2120年と過酷な環境下で芸術祭を成功に導き、人々の尊敬を集めることになる。
山浦家妻:(第一世代、山浦家妻のファクターを使用)優しく愛情深い母親だが体が極端に弱く、あまり出産向きではない。
年に一度は大病を患い、ことあるごとに入退院を繰り返す。あまり長生きができない身体である。責任感が高く、無理をしがちな性格である。
2120年には、親戚の山浦 響葉が芸術祭でグランプリをとる。
長男:山浦 悠季(2110年生)
[ 0~10歳]
夕暮れ芸術祭が無観客で再開された年に誕生します。出生届もオンライン提出となりました。
感染症対策のため、両親以外と顔を合わせたことがほとんどない幼少期を過ごします。
父・嶺の仕事を通して、“見えない舞台裏”への理解が自然と育まれます。
小学校には一度も通わず、すべてをリモート学習で修了しました。
[ 10~20歳]
感染症対策が進む中、「芸術を届けるルートそのもの」に関心を抱きます。
15歳でデータ構造と暗号技術を学び、芸術アーカイブの管理に参加しました。
18歳で**「都市芸術のバックヤード」展を企画**。自らは何も創らず、すべてを“支える構造”であることにこだわりました。裏方気質。
現在は「父・嶺の思想を言語化できる唯一の人間」と言われています。
長女:山浦 結葉(2113年生)
[ 0~10歳]
母の体質を強く受け継ぎ、出生直後から心肺に問題を抱えてしまいます。
自宅2階の“静養室”で育ち、紙と鉛筆しか使えない日々を過ごします。
8歳で手記『私の今日』をつけ始め、それが“詩のようである”と話題になります。
[ 10~20歳]
感染症の不安の中で、**“死ぬまでに遺すべき1冊”**を主題に活動を開始します。
17歳で書き上げた『明日も、在るとして』は、町の若者の間でベストセラーとなります。
「芸術家ではなく記録者」と自称しますが、その抒情的文体には響葉の血を感じる者も多いと評されます。
現在、病弱なまま在宅で創作と教育に従事します。
次女:山浦 環(2117年生)
[ 0~10歳]
幼少期からピアノに触れ、響葉を「神様のいとこ」と呼ぶほどの崇拝者となります。
7歳にして初のリモート発表会『窓辺のリズム』を行うが、同年感染症に罹患してしまいます。
回復するも、聴覚と肺機能に微細な後遺症を残してしまいます。
[ 10~20歳]
音楽の道を一時断念するが、響葉からの“音は聞かずとも触れられる”という助言で復帰します。
14歳で触覚楽譜”の開発に携わります(指の感圧で音の高さを可視化する技術)。
音楽家とは言えないが、“音を編む設計者”として芸術家たちを支える存在に成長しました。
現在、芸術系福祉に進むか、町づくりに進むかで進路を迷っている状態です。
総括:山浦家(2120)
•子どもたちはいずれも創作“そのもの”よりも、芸術を支える仕組み・記録・環境に関心を向けている。
•嶺の背を見て育った彼らは、決して華やかではないが、**芸術という“火を囲む者たち”**である。
•山浦家は今後も、祭を守る人間の系譜として静かに、けれど確かに続いていく。
坂上家は順調に芸術家の血を後世に受け継ぎましたが、池田家が少し心配です。
山浦家の本家は、やはりこの街を支える裏方を多く輩出してますが、分家はきっと芸術一家に育っていることが予想されます。
分家といえば坂上直人が指導者の教団の行方も気になります。