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第一世代(1900〜)


夕暮れ町、1900年。



 [ケースA]

 ケースAのお家は、長い長い坂の上にあります。なので、『坂上家』としましょう。

 1900年の坂上家の環境はこんな感じです。


坂上家立地:坂の下に駅があり、勾配の上に立っている。

      住宅街で、周りは宗教活動が盛んである。    

      信者以外の人間を、咎めるわけでもないが勧誘は続き、暮らす身としては窮屈。    

      何せ急勾配のてっぺんに家があり、車がないと生活は不便である。


  坂上夫:平凡なサラリーマン。 年収は450万。無趣味で灰色の人生。


  坂上妻:弟が引きこもりで、母親が弟を溺愛している。息子には真っ当な道に進んでほしい。



      さて、この家ではどんな子供が、何人生まれるのでしょか。

      彼らが成人するまで、現実的な視点で想像してみましょう。



■ 家計の現実と立地環境を考慮した場合:

 ・父の年収450万円なので地方か郊外都市の坂上であればギリギリ戸建てが可能。

 ・生活に余裕はなく、車もなく、子育ての負担は母親が多く担うことになります。

 ・宗教活動が周囲に根づく圧力環境は存在するとします。

 ・二人目を産むか迷ったが、なんとか頑張って二人産むことにしました。



◆夕暮れ町1900年、 坂上家の子どもたち


【長男:坂上 航平こうへい

   航平は、生まれた瞬間から、「あなたには期待してるのよ」という母親のプレッシャーを一身に受けることになります。


   母親が弟(=航平にとっての叔父)を嫌う反動として、**「真っ当に、社会に受け入れられる人間であれ」**と、教育が行き届くことになります。


   父は優しいが影が薄く、あまり家族内での意思を持たないようです。

   なので航平にとっては頼れる存在ではなく、「仕事で疲れている人」として映っていました。


幼少期(0~6歳)

   航平は、母親の顔色をよく見る、情緒的に敏感な子として育ちます。

   2歳の頃に、妹芽衣が産まれます。

   航平には母親からルールが課せられていました。

   近所の友達とは遊ばないことです。

   なぜなら、坂上の家の周囲は、何年まえから根付いているのかわからない宗教活動が盛んでした。

   僕も〇〇君と一緒がいい。などと航平が口にした瞬間に、母親の顔が変わりました。

   外出禁止令が出たのは、どうやらこの日からです。   


小中学生(7~15歳)


  真面目で成績はそこそこ良いけれど、コミュニケーションに臆病なようです。母親の影でしょうか。

  「うちは周りと違う」という感覚により、自己肯定感が育ちづらいのかもしれません。

  母の過干渉に疲れを感じながらも、「母の期待に応えることが正しい」と信じるようになりました。


高校生(16~18歳)

  高校受験に失敗してしまったみたいです。

  母親が設定したハードルが高かったのでしょう。

  進学校には行けませんでしたが、親の望む「公務員」になる道を意識し始めます。

  坂道の生活、バスも車もないことにうんざりしながら、「自分の家が貧しいのでは?」と疑い始めたのはこの時期でした。

  妹に対しては責任感を抱きつつも、**「お前は自由に生きろ」**という矛盾した態度をとることで、自分を守っていました。


大学生~20歳

  奨学金とバイトで大学に通うようになります。

  哲学・文学・社会学など、“世界の構造”を知ろうとする分野に強く惹かれるようになりました。

  しかし一方では自分と似た「息苦しさ」を抱えた人としか話が合わないみたいです。

  よって、成人しても恋愛には奥手でした。

  愛された経験が乏しく、距離の取り方が極端なのが原因みたいです。

 

  ……続いて、妹を見てみましょう。



【妹:坂上 芽衣めい

 兄との立場の違いは、芽衣は母親にとっての「もう一度やり直せる育児」の対象であることです。

 性別が同じな自分と、重ねあわせたのでしょう。

 これもよくあることなのですが、兄に母親の期待が集中しているぶん、芽衣は「自由にさせてもらっているようでいて、実は支配されている」という特殊な構造の中で育つ。

 母の理想像(=お淑やかで上品な女性)を無意識に演じるようになります。


幼少期(0~6歳)

 女の子らしさを褒められる一方、「お兄ちゃんのようにしっかりしてね」と言われ続ける。

 外出禁止令が出たのは兄と同じタイミングでした。

 以降、外部との接触が薄くなります。

 ある日、クラスの友達の家庭で宗教的な祈りの儀式に同席し、強い違和感と恐怖を覚える一方で、

 クラス同士の輪に入れない自分が悲しく映ったことでしょう。



小中学生(7~15歳)

 学校では明るく活発。家では「理想の娘」を演じるようになります。

 実は他人の顔色に非常に敏感で、疲れていることが多くなりました。

 兄との関係は「尊敬と苛立ち」が混在。特に兄が受験に失敗したあたりからは、

 母との間で兄のことを話題にしないという暗黙の了解があるようです。


高校生(16~18歳)

 外出禁止令が軽減されたことをいいことに、交友の輪を広げるようになります。

 しかし家を出る勇気はなく、坂の上の暮らしと「母の視線」が常に自分を律します。

「私って誰なんだろう」とノートに書き残しながら、SNSに傾倒していき、“元気な女の子”を演じるようになります。


大学生~20歳

   家を出たがるものの経済的な自立の仕方がわかりません。仕方がないので実家通学。

   女友達の間では“聞き役”ポジションに。

   恋愛に関しては相手に合わせすぎて壊れるタイプのようです。

   この時期、兄と大げんかをします。


   「芽衣は自由でいいな」と言われたのが原因でした。

   

   いつしか芽衣は、「自由に見えるよう演じてきただけ」と気づき、ひそかに泣くことがあるようです。



結論……

   



子ども数

2人(兄・妹)

家の環境

坂の上/宗教圧力/車なし/狭い社会圏

両親の影響

父は無力な空気感/母は強い反面教師として育つ

子の特徴

長男:内省的な秀才、母の期待の生き写しに

長女:明るく見せるが繊細、自由の幻想に囚われる

将来の傾向

どちらも**「閉じた坂の上の世界から出ようとするが、心は縛られたまま」**







 * * * * *



 [ケースB]

 ケースBのお家は、家の前に大きな池があるので『池田家』としましょう。


 1900年の池田家の環境はこんな感じです。

 ケースB、池田家。

 池田家 立地:代々からの大地主の家で、近くに立派な池がある。    

       この家の『長男』は、10代のどこかに必ず大殺界が訪れ、大病or大怪我を引き起こす。   

       場合によってはそこで死ぬことも。    

       近くに家はなく、外部との接触は元々薄い。    

       莫大な額の家賃収入が毎月入ってくる。  


   池田夫:怠け者。うつ病の傾向がある。親離れできておらず、無趣味である。    

       家族や他人に対して一切の興味を持たず、親の介護のことばかり考えており、    

       親を二人とも良い施設に入れる傾向にある。  


   池田妻:親が厳しく、自分の判断で大きな決断をしたことがない。    

       結婚も、親からの命令で、親が選んだ人を夫とする。    

       結婚してからは恋愛癖が生じ、ホスト通いがやめられなくなる。


   池田家を取り巻くポイントは3つです。


•一族の思想として「長男は潰れる」が内在化しているため、祖父母筋が強く後押しして複数人の子を作らせるようになります。

•夫は無気力だが「子を作る」ことには拒否しません。

•母は親に言われるままに出産します。愛着も育児感情も希薄です。


◆ 長男:池田 祥馬しょうま

【0~6歳】

 「池田の長男は10代で壊れる」と親族間で話題になるが、祥馬本人は知るよしもありません。

  長男にして母からの愛情は少なく、養育は家政婦や祖父母が担ったみたいです。父は存在感がありません。

  屋敷のまわりには友達はいませんでしたが、その代わり自然に囲まれ、昆虫や池の魚に関心を抱くようになります。


【7~12歳】

 勉強は苦手だが運動神経は良く、近隣の名門小に通うも、友達との付き合いは不得手なようです。。

 自転車で坂道を猛スピードで下るのが好きな、やんちゃな子です。

 一度、祖父から「お前はこの家を継げない」と冗談めかして言われ、何かがおかしいことを悟る一方、

 自分は期待されてもいない人間だと言うことを幼少期にして受け入れねばならなくなりました。


【13歳:大殺界】

 中1の冬、友人宅から帰る途中に坂道でスリップし、電柱に激突。脳挫傷で2週間意識不明という大事故を起こします。

 奇跡的に一命は取り留めるが、左耳の聴覚を永久に失い、軽度の言語障害が残ることに。

 親族は「これで済んだのは幸運」「死ななかっただけマシ」とつぶやきました。


【14~20歳】

 学校は続けるが、周囲とのコミュニケーションが疎外的になります。

 次第に自宅で農業や池の掃除に関心を持ち始め、「外ではなく内にある仕事」を模索するようになります。

 内装業の専門学校に進学しようとするが、祖父に「分家に行け」と宣告され、家を出されました。




 続いて、弟たちの人生です。




◆ 次男:池田 ゆう

 祥馬の事故を受け、一族が最も“本気で育てよう”とする子。

 幼少期から家庭教師と習い事漬け。

 母は感情的にすでに他の世界ホストクラブにいるため、祖母・伯母などの“家の女たち”が湧を教育。


【~12歳】

 兄に代わり、礼儀、和食、筆跡、座礼、剣道つまり「昔ながらの日本男児」になるよう、祖父やその部下たちに鍛えられます。

 本人は苦しいながらも、「兄より期待されている」ことに誇りを持つようになります。


【13~20歳】

 偏差値70の高校に入学。政経を志すが、「家業を継げ」と言われ理系の大学に進学します。

 最終的には家の資産管理を一手に担う役目へ。

 しかし、ハンディを負いながらも自分の道を見つけた兄のことを心から尊敬しており、

 「あの人が事故に遭わなければ、俺はここにいない」と、陰の罪悪感を抱えて生きることになります。



◆ 三男:池田 悠翔ゆうと

 長男は“呪われ”、次男は“聖職”を帯びているため、三男は比較的自由に育てられました。

 母が最も愛情をかけた時期に産まれたため、唯一「家庭の空気」を知らない。

 子どもらしく伸び伸びと育つが、結果この家庭を一番俯瞰的にみれる立場にあり、「この家は異常である」と感じるようになりました。


【~20歳】

 兄二人が「池田の構造」に絡め取られていくのを目の当たりにし、自分は家を出る決意をします。

 高校卒業後は地方大学に進学し、大学3年で屋敷から完全に縁を切りました。

 その後は全国を回っただの、気ままな風天になっただの、色々な逸話がありますが、

 完全に自立した大人には、なれたようです。






結果……




長男

祥馬

“壊れる運命”。事故で左耳を失い、家から外される。感受性が豊かで孤独。

次男

最も期待される。「お前が継ぐしかない」と教育される。内心は罪悪感と重圧に苦しむ。

三男

悠翔

家庭の呪いから距離をとる。最も「自由」な精神を持ち、家を捨てる可能性が高い。






 * * * * *



 [ケースC]

 ケースCのお家は、家の裏に立派な山があるので、「山浦家」としましょう。


 1900年の山浦家の環境はこんな感じです。

 ケースC 山浦家。

山浦家立地:池田家とまでは行かなくとも、裏に山を持つ地主である。 あたりは、住宅街で周りの人間との交流は多い。    

      街までのアクセスは良く、徒歩圏内に商店街や、スーパー。    

      本屋に映画館など、立地的には恵まれてるといえる。


山浦家夫:人情に厚く、子供には厳しいが、愛情を持って育てる傾向にある。      

     父親になることが長年の夢で、産まれた暁には野球を教えたいと思っている。      

     職業は運送業。帰りが遅い日も、帰って来られない日もある。


山浦家妻:優しく愛情深い母親だが体が極端に弱く、あまり出産向きではない。      

     年に一度は大病を患い、ことあるごとに入退院を繰り返す。      

     あまり長生きができない身体である。      

     責任感が高く、無理をしがちな性格である。


     さて、この家ではどんな子供が、何人生まれるのでしょか。

     子供達が成人するまで、現実的な視点で想像してみましょう。

   

     この家のポイントは2つ。


    ・父親は子どもを強く望むが、母親の体がもたず、出産は一度が限界でした。


    ・両親ともに「もう一人欲しかったけど無理だった」と胸を痛めつつ、そのすべての想いが一人息子に集中することになります。


     


・長男「山浦 陽太ようた


【0~3歳】

   陽太は両親の深く、真っ直ぐな愛情の中で育ちます。

   ベビーベッドのそばには父の手作りのモビール、母が録音した童謡のオルゴールがあります。

   ですが、母は産後すぐに持病が再発し、陽太を抱っこできない日も多いようです。

   父は仕事柄、夜中にしか帰宅できないので、子どもに会うためだけに途中下車する日もあったんだとか。

   しかし陽太は、温もりを欲する一方で、それが物理的に満たされないことに寂しさを感じ始めます。



【4~6歳】

   母の入院が多くなり、陽太は日常的に「お母さんはどこ?」と聞くようになりました。

   保育園では明るくふるまうが、周囲の大人の表情を読み取りすぎる子になってしまったようです。

   父の野球好きを受けて、グローブを買ってもらうが、キャッチボールの時間は週に数回あるかないかなのだとか……

  「次の土曜はパパと遊ぶ」と期待しても、運送業の父は急な配達で来られない。

  そうなると『大人の事情で愛が届かない』経験が積み重なっていくようになります。


【7~12歳(小学校)】

   野球チームに入団します。父が時間を作っては応援に来るが、母は病院から録画で観るようになります。

   試合には……他の家庭と違って両親が現地で応援に来ないなんてこともありました。

   顧問の先生や、近所のパパ、ママに送迎をお願いするなんてこともあったようです。

   キャプテンシーがあるが、プレッシャーに弱く、自分がミスすると涙が止まらなくなるようになります。


   母の退院を何より喜ぶようになります。

   母の体調次第で、陽太の生活も天候のように揺れるのだとか。

   家では「頑張らないとお母さんが悲しむ」と思い、“良い子”としてふるまいすぎる傾向が強まります。



【13~15歳(中学)】

   中学でも野球を続けるが、急激に「負けず嫌い」になります。これは父親の影響ですね。

   この頃に、母が大病を患い、手術を受けることになりました。この時、初めて父が泣く姿を見て、陽太は「この家を背負うのは自分だ」と思い込み始めます。

   学校では優等生。教師にも気に入られるが、自分の感情を誰にも見せなくなります……。


【16~18歳(高校)】

 強豪校には進学せず、地元の高校で野球を続けながら、母の看病もする日々を送ります。

 この頃から、父との関係は良好ですが、父を「限界のある存在」として少しずつ見下すようにもなります。

 一方で、母が「無理してでも卒業式を見に行く」と言った日、

  陽太は内心で「もう休んでていいのに」と強く思い、はじめて母を『重い』と感じてしまいます。

 そして「優しさで圧死する前に、自分が自分を守らないといけない」とうっすら自覚し始めます。


【19~20歳(成人)】

 母が他界しました。陽太は大学には進学せず、地元で就職します。

 父とは短くて素朴な会話だけの日々です。「ただいま」「今日どうだった」「じゃ、また」のみ、家でこだまします。

 けれど、それが温かく感じるようになっていました。

 かつての自分のように「大人の不在」に寂しさを抱えている少年を見つけ、野球を教えるようになります。

 それは自分が与えてもらえなかった時間を、今度は誰かに与えようとすることからでしょうか。


◆ 結果……



性格

他人の表情に敏感/責任感が強すぎる/涙を見せないタイプ

長所

面倒見がよく、言葉より行動で語るタイプ/我慢強い/実直

短所

感情を抑え込む癖があり、ストレスを抱えやすい/“理想の息子像”を自らに課す

人間関係

表面的に良好だが、恋愛や親密な関係になると「重い責任感」が顔を出す




  いかがでしたか?

  私にはまだまだ、答えを見つけられません。なので、もうしばらく、この街を見守ることにしましょう。

  


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