67.エピローグ
MCハンマーは、☆TSgame-Co.本社ビルの放送室で、全てを観ていた。
大地と日向の秘密の会話も、悪いと思いながら、最大音量で確認した。
これで、大地も普通の中学生に戻ることができるだろうと安心したハンマーは、パソコン画面を切り替える。
それは本社の玄関前広場に設置された監視カメラの映像だった。
自動ドアから、多くの社員たちが警官隊に連行されながら出てくる。
そのほとんどが、どこかホッとした表情をしている。
これで良かった。
いや、これしかないと思っているに違いない。
ハンマーは、ふと思い出した。
今までずっと、俺の運命は神と悪魔のゲームで決められているから、まな板の上の鯉と同じなんだと思っていた。
自分ではどうすることもできず、ただ耐えるしかない、と。
しかし、それは言い訳だったんだな、と今は思う。
例え、神と悪魔がゲームのつもりだとしても、太陽は和雄と美子を真の親に、いや、それ以上にした。
大地を本当の親友にしてしまった。
そうか、人と人の心が交われば、助け合うことによって、運命を自分たちの力で切り開いていけるんだと、太陽と緑が身をもって教えてくれた。
もちろん、二人共そんな偉そうなつもりはないだろう。
計算などではないから、他人の心を揺り動かしたに違いない。
ちょうど、そのときだった。
画面の中、太陽と緑が自動扉から出てきた。
立ち止まり、振り向いた二人が並んで、 巨大なビルを見上げている。
太陽と緑にとって、このビルは今でも怪物に見えているのだろうか?
それとも……。
悪癖だと思いながらも、ハンマーは防犯カメラのボリュームを上げてしまう。
「緑が言うように、ぼくはまだまだ子どもだね。おばあさんや日向さんがいなかったら、今頃どうなっていたんだろう。そう思うと、怖くてたまらないよ」
太陽の言葉に、緑が優しい笑顔で頷く。
「うん。太陽はまだまだ子どもよ。でも、そんな太陽の強い気持ちが、皆を動かしたの。だから、ありがとう」
緑は太陽にキスをした。
太陽は真っ赤に照れながらも、最高の笑顔だ。
もし俺がその場にいたら、
「憎いね、このやろう」
と皮肉を込め、どさくさに紛れて殴っているところだ。
なんて、俺の方がガキだな。
「太陽、これからどうするの?」
緑が心配そうに訊く。
「父さんや母さん、それに大地を待つためにも、game isleを立て直さなきゃ」
「高橋美津子さんは?」
「おばあさんも一緒に来て、協力してくれるって」
「病気、大丈夫なの?」
「専属の医師団も一緒だから、却ってそっちの方が安心だって言ってた」
太陽の表情には迷いも後悔もない。
それどころか、誇らしささえ感じた。
「俺の許可もなく、かっこよくなりやがってよぉぉぉ」
と、ハンマーは涙を拭う。
太陽と緑が防犯カメラに背を向け歩きはじめた。
もうすぐ、ここにも警官隊が突入してきて、俺も逮捕されるだろう。
だから、今のうちに言わせてくれ。
「太陽、緑、ありがとうよ。俺も一からやり直してみせる」
ところが……。
それだけで終わらないのが俺の運命なのか!?
またまたトラブルが起こった。
今度はパソコン本体からバチバチと火花が散り始めたのだ。
どうなっているんだ?
いよいよ、電源が切れ、画面も真っ暗になった。
と思ったら、ディスプレイの中にうっすらと、なにか薄い影が映っている。
一体、なんだ? と目を凝らすと……。
「ゲゲゲー 。サ、サン……? お前は爆発したはずだろう。キャラクターの幽霊かぁ?」
薄いサンが、頭からポッポーと煙を出して怒っているようだ。
一体なにを怒っているんだ? と不思議がっていると、突然サンの顔がアップになった。
「こら、ダメ太陽。俺の緑とキスしやがって。ケツ、蹴っ飛ばしてやるぅぅぅ……」
最終回になりました。
読んで頂き、有難うございました。




