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02.H①.中学生ゲーム大会

(これまでのあらすじ)

 いよいよ、☆TSgame(ゲーム)-Co.(カンパニー)創立20周年記念行事中学生ゲーム大会が、gameゲーム isle(アイル)』で始まった。

 2035年8月1日am10:00。

 MCハンマーは☆TSgame(ゲーム)-Co.(カンパニー)本社ビルの放送室から実況中である。

 我が社のサイトには『gameゲーム isle(アイル)』のスタジアム内が映っている。

 5万人入る観客席は満員だ。

 しかも、立ち見客も多い。

 老若男女、観衆は全員立ち上がり、拳を突き上げ、口々に好きな言葉を叫んでいた。

 ステージ後方には巨大なスクリーンが設置されている。

 そのスクリーンの中に司会者であるMCハンマーの顔が映った。

 自然と、声も大きくなる。


「会場は島民で満員でーす」


 更に盛り上がる観衆。


「ゥオォォォォォォォォ……」


 当然である。

 島民は全て☆TSgame(ゲーム)-Co.(カンパニー)の社員か、その家族たち。

 つまり、島民一致のパワー。

 これこそがgame(ゲーム) isle(アイル)なのだ。

 そのチームワークの良さが伝われば、記念行事も半ば成功したも同然といえるだろう。

 大歓声の中、ハンマーは再び叫ぶ。


「今日は待ちに待った中学生ゲーム大会です。この大会も3回目になりますが、今回は☆TSgame(ゲーム)-Co.(カンパニー)創立20周年記念行事のセレモニーに選ばれましたので、張り切っていきたいと思います」


 ハンマーの計算どおり、観客は更に大興奮。


「では、1番目のプレイヤーたちに登場してもらいましょう。皆様もご存知幼馴染み三人組だー」


 観衆の大声援の中、中央のステージに上がってきたのは、学生服の羽賀太陽と南部大地、セーラー服の加藤緑だった。

 太陽の身長は150㎝ちょっと。

 丸いクリクリ瞳に可愛い顔立ちだから、今でも小学生に間違えられることもある。

 学生服はブカブカで、ズボンの(すそ)は詰められているが、(そで)は太陽の掌をほとんど隠している。

 中1ならよく見る光景だが、中3の男子には珍しい。

 一方、大地の方は身長は180㎝を超える筋肉質。

 大人っぽい顔立ち。

 大地の学生服はパンパンだった。

 太陽と大地が並んで立つと、まるで大人と子供だ。

 太陽の性格は優柔不断で、バカがつくほど素直な上にお人好し。

 いつも、そんな太陽にちょっかいを出すのが大地だ。

 一方、かわいい少女という印象が強かった加藤緑も確実に成長し、美女に近づいている。

 長い睫毛(まつげ)凛々(りり)しさが(うかが)える。

 それでも、爽やかな笑顔は今も健在だ。


「中学1年のときから2年連続優勝している幼馴染3人組も、もう3年生になりました。 では、3人が作り育てたキャラクターたちに登場してもらいましょう」


 ステージ上のスクリーンではハンマーの顔が消え、筋肉粒々なロボット型キャラクターが登場した。

 見た目もかっこいい。

 ハンマーの声が補足する。


「南部大地君が作り育てたキャラクターのマックス君です。いかにも強そうですねぇ」


 次に、スクリーンに映し出されたのは、チャイニーズドレスを着たスレンダー美女のキャラクターだった。

 上品な立ち振る舞いである。


「加藤緑さんのキャラクターはレイさんです。いや~、一目惚(ひとめぼ)れしちゃいました。さすが綺麗(きれい)ですね。プレイヤー自身の3年後といったところでしょうか。そして、待ちに待った最後のキャラクターはゲームの天才羽賀太陽君が作り育てたサン君です。わたしも初対面ですから楽しみです……」


 あ~? と、思わずハンマーはうなった。

 スクリーンに映ったキャラクターは、“へのへのもへじ”で書かれた下手くそな絵だったからだ。

 しかも、胴体はただの長方形で、手と足はそれぞれ一本線の先に◯がついているだけ。

 どう見ても失敗作だろ、とハンマーは心中で突っ込む。

 そういえば、とハンマーはやっと思い出した。

 羽賀太陽の絵の才能は幼稚児未満だったなぁ、と。

 そのときだった。

 緑を見つけたサンの表情は、ニヤケ顔に急変。


「緑、愛してるぜぇ」

 

 と投げキッス。

 一方、優しい緑は、


「あ、あたしもよ」


 と少し顔を赤らめている。

 のぼせ上がったサンは、


「やったー。ホゥホゥ」


 と叫びながら、スクリーンの中を駆け回る始末。

 しかたなく、ハンマーはサンの紹介を試みる。


「彼はゲームの天才、羽賀太陽君が作り育てたキャラクターのサン君です。どこか憎めないところがいいですねぇ」


 この説明で精一杯だと思うハンマーに対し、サンは毒舌なAIキャラクターだった。


「なんなんだ、その()め方は。もっと他に(ほみ)めるところがたくさんあるだろ。これだから下手なMCを呼ぶなっていうんだよなぁ」

「キャラクターのくせに、いい加減にしろ!」


 と、呆れ顔で吐き捨てたのは大地だった。

 しかし、サンも負けてはいない。


「大地、モテない男の(ひが)みか!? 情けねぇ」

「何だとー! キャラクターのくせに生意気だー! 大体、その顔と体で、よく恥ずかしくないよなぁ」


 どうやら、大地とサンは犬猿の仲のようだ。

 そこへ、緑が助け船を出す。


「サン、大地の言うことなんか気にしちゃダメよ」


 緑の助け船に乗るサン。


「緑を心配させるなんて、俺様も罪な男だねぇ。でも、緑、心配するな。平和主義の俺様に任せろって。一人で優勝してみせるからさ。それが俺様の愛の証だ」


 サンは右目を閉じて、ウインクする。

 続いて、左目ウインク、そして両目ウインク。


 ハ~、と呆れる大地。


「キャラクターのくせに緑が好きだとぉ? 心も感情もないくせに生意気だ」

「じゃ、人間はどうなんだ?」


 とサンも負けていない。


「お前たち人間は、愛が自分たちにしかないと決めつけているけどな、お前らの愛なんて不純な下心丸出しだろ。相手の言動だけで好きかどうか判断している俺たちの方が純愛だ」


 どうだ、とばかりに、サンはしたり顔である。

 一方、頭に血が上った大地は、


「人間の愛は心の下心だ。プログラムなんかじゃない!」


 と、わけのわからないことを叫んだ。

 すかさず、サンも反論する。


「心がそんなに偉いのか? その心が他人を殺したりするんだろ」


 悔し紛れに、大地は緑にも八つ当たりする。


「緑、お前もレイを参加させるなよ。いいな」


 サンが断っている以上、緑も渋々承諾するしかないようだ。

 遅れを挽回(ばんかい)するため、ハンマーは、進行を最優先させる。


「今回のテーマはバトルゲームです」


 太陽と緑の言葉が重なった。


「嘘ぉぉぉ」

「平和主義のサンは戦えないのよ」


 サンが気づく。


「大地、(だま)したなぁ……」

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