01.プロローグ
友達のアドバイス(携帯でも読みやすいように1話を短くした方がいい)により、投稿中の小説『タイヨッチ』を、最初から書き直しました。
ここは異世界のゲーム国にあるgame isle』島。
この島は、☆TSgame-co.がリアル育成ゲーム開発のために用意した、大きな研究所兼社員寮のようなものである。
♢ ♢ ♢ ♢
〈 g i f t 〉
〈☆TSgame-Co.『リアル育成ゲーム』の特別会員の皆様へ〉
『☆TSgame-Co.創立20周年記念中学生ゲーム大会開催についてのお知らせ』
日時:2035年8月1日am10:00~
場所:『game isle』島スタジアム
☆TSgame-Co.サイトで、同日am10:00から生放送予定。
♢ ♢ ♢ ♢
いよいよ、2035年8月1日 am10:00ジャスト。
中学生ゲーム大会の生放送が、☆TSgame-Co.サイトで開始された。
まず最初に、ディスプレイの画面に映し出されたのは、海原の映像だった。
厳しい夏の日差しを浴びて、キラキラと穏やかに揺れる波が美しい。
走っているモーターボートの上から撮影しているのだろう。
聞こえてくるエンジン音も、気持ちいいビートを打っている。
ディスプレイの映像は滑るように海上を走り、砂浜がはっきり見えてきた。
砂浜の上方、つまり宙に、鮮やかな色合いで装飾された大きな光の文字たちが浮いている。
『ゲ』『ー』『ム』『ア』『イ』『ル』
この島の名前だ。
一文字一文字がまるで命ある者のように踊っている。
その周りで、軽快な音楽に乗り、ダンスを楽しんでいるのは、『大歓迎』とか『ようこそ、game isleへ 』『Dreams come true』と書かれた、やはり色鮮やかに装飾された光の文字たちだ。
TVカメラが砂浜に上陸すると、見上げるほど大きなゲームのキャラクターたちが迎えてくれる。
彼らも光の虚像だ。
可愛かったり、格好よかったり、中にはちょっと吹き出しそうになる戯け者もいるが、みんな好感の持てるキャラクターばかりだ。
しかも、
「よく来てくれたね。嬉しいよ」
「楽しんでね」
と笑顔で話しかけてくれる。
そこへ、司会者であるMCハンマーの声が続く。
「☆TSgame-Co.『リアル育成ゲーム』の特別会員の皆様、おはようございまーす。今年は『☆TSgame-Co.創立20周年の記念の年であります。今日は特別祭を行いますので、楽しんでください。司会はわたくしことMCハンマーが担当させていただきますので、よろしくお願いします。記念日の今日1日、特別会員の皆様にはリアル育成ゲームを一時中断し、中学生ゲーム大会を楽しんでいただきたいと思っております」
この『game isle』の島民すべてが☆TSgame-co.の社員とその家族たち。
この会社が運営する幼稚園から大学まで一貫した学校や病院も完備されている。
これだけの大掛かりな取り組みは異世界一だろう。
ハンマーの説明は続く。
「また、このgame isleで暮らしている社員の子どもたちに密着した映像も、リアルタイムでたっぷりご覧いただけます。子どもたちも夏休みに入り、元気いっぱいです。では、もう少し、game isle内の街並みをお楽しみ下さい」
今日のために、game isle内に多くの動画用カメラが設置済みである。
それらのすべての映像が、ハンマーのパソコンに送られてくることになっている。
それらの映像の中から特別会員のために選別・送信し、game isleを紹介する。
それが、今日のハンマーの役割というわけだ。
次に、ハンマーが選んだ映像は、本日の中学生ゲーム大会会場であり、島民の自慢でもあるスタジアムの全景だった。
光り輝く宇宙船の姿をしているこのスタジアムは、大きさも派手さも超一流。
通称、『UFOスタジアム』と呼ばれている建物の上空では、『中』『学』『生』『ゲ』『ー』『ム』『大』『会』と書かれた大きな光の文字たちが楽しそうに踊っている。
突然、
「ゥオォォォォォォォォ」
と、鼓膜に飛び込んできたのは、怒涛のような歓声だった。
わざと少し遅れて、映像がUFOスタジアムの会場内に変わった。
♢ ♢ ♢ ♢
☆TSgame-co.が多額の資金を投入して作ったこの『game isle』は、異世界の中で最も平和な場所といえるだろう。
外部とは隔離され、 関係者以外立ち入り禁止だから、事件も起こらなければ、いざこざもない。
『現代人にとって絵に描いたような桃源郷』と宣伝で謳っている。
島全体がゲームと夢にあふれた、自由で平和な『game isle』。
しかし、それは表向きで、その実態は……。