フォロワーの正体
いらっしゃいませ。ありがとうございます。
1,000字程度のAI怖い話となります。
その日、私はSNSで知り合った人に初めて会う約束をしていて、少しだけ浮足立っていた。
お相手のハンドルネームは「ユウ」。プロフィールの写真は優しげな笑顔の男性で、趣味も合い、何度もやり取りを重ねていたので、ちょっとの不安抱えながらも基本的には安心していた。
待ち合わせの駅に現れたユウは、写真通りの穏やかな男性だった。会話も弾み、カフェで軽くお茶をした後、その日はそのまま駅で別れることに。「また会おうね」と笑顔で手を振る彼に、私はどこか親近感を抱き、この時には既に心を許していたと思う。
しかし、その夜から奇妙なことが起き始めた。
帰宅してから、スマホを取り出してSNSを確認すると、彼から投稿に「おかえり」とコメントがついていた。まだ家に着いたばかりで、妙にタイミングが良いなと思ったが、「どうしてわかったの?」と冗談っぽく返信すると、「なんとなく」とだけ返ってきた。
数日たったある日、大学の帰り道を歩いていると背後に誰かの気配を感じた。振り返っても誰もいない。でも、家に着くとまたSNSに「今日は青いスカート、似合ってたね」と彼から書き込まれていた。
その日の服装だ。急に怖くなった私はユウに「もう連絡しないで」とメッセージを送ったが、「君を見守っているだけだから大丈夫」とだけ返事が来た。
不安が募り、友人の奈々に相談した。奈々は呆れたように、「会ったばかりの人に気を許しすぎたんだよ」と叱りつつも、「もし何かあったら私が守るから」と励ましてくれた。
その言葉で少し安心し、奈々と一緒にユウをブロックしてアカウントを削除した。
数日間は平穏だった。ユウからの連絡もなく、投稿に妙なコメントがつくこともない。しかし、どことなく夜中にアパートの前を通る足音が増えた気がしていた。
ある夜、インターホンが鳴り、モニターを確認すると誰もいない。恐る恐る玄関を開けたが、そこには誰もいなかった。ただ、一枚のメモが落ちていることに気付く。
「どんなに逃げても見つけるから」
その瞬間、頭が真っ白になった。急いで扉を閉め、鍵をかけるとすぐに奈々へ電話をかける。事情を話すとすぐに彼女が駆けつけてくれた。「一緒に警察へ行こう」と言ってくれ、近くの交番へ向かった後、その夜は彼女の家に泊めてもらうことになった。
奈々の家に着くと、彼女は私をリビングに座らせ、キッチンでお茶を淹れてくれた。「大丈夫、大丈夫だから」と優しく微笑む彼女の言葉に、少しずつ心が落ち着いていく。
そのとき、奈々のスマホが鳴った。彼女がスマホを確認すると、すぐに顔色が変わった。
「え、嘘でしょ……なんで?」
彼女が震える手で私に手渡してきたスマホには、ユウのアカウントが表示されていた。
そして、メッセージにはこう書かれていた。
「今夜は奈々の家だね。」
全身が凍りつく。奈々が震える手でカーテンをそっと開けた。その向こうに、こちらをじっと見つめる男の影があった。
警察を呼びすぐに来てもらったが、その影は跡形もなく消えており、結局その男が見つかることはなかった。その後、私はストーカーの被害届を提出し、すぐに引越した。
引越しのバタバタも終わり、無事完了したことを奈々に報告するも奈々からの返答はなかった。忙しい時もあるかと納得し、次の日久々に大学へ行ったが奈々がいない。
友人に聞いてみても誰も知らないという。それから奈々とは完全に連絡が取れなくなった。何度も何度も電話をかけ、メッセージを送ってみるが返答はない。
勇気を振り絞って彼女の部屋に行くと、そこはもぬけの殻になっていた。
意味がわからず呆然とただ立ち尽くしていると、エントランスの方で何か金属音が聞こえた。
恐る恐る見に行くと、奈々のポストにさっきはなかったはずの手紙が一通入っていた。
どこかで見たような字で手紙にはこう記されていた。
「やっと二人きりになれるね。」
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