表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/99

もう一人、乗せてたよね?

いらっしゃいませ。ありがとうございます。

1,000字程度のAI怖い話となります。

 大学時代の友人たちと久々に集まり、ドライブに出かけたのは初夏の夜だった。

 涼しい風を感じながら、深夜の国道を走る。助手席には陽介、後部座席には美咲と達也がいる。

 高校の頃からの仲間で、夜更かしドライブはお決まりの遊びだった。


「あの道、知ってる? 昔、ひき逃げ事故があったって噂のやつ。」


 陽介が話し始めたのは、人気のない山道に差し掛かった頃だった。

 その道では、夜中に突然、車の横を歩く女性が現れるという噂があるらしい。

 そしてその女性を振り返ると、「連れて行かれる」と。


「おいおい、そういう話はやめろよ。」


 達也が笑いながら言うが、助手席の陽介は楽しげに続ける。


「でもさ、もしもう一人乗せてたらどうする? 知らない間にさ。」


 ふざけ半分のその会話を適当に流しながら、車を進めた。そのときだった。視界の端に、白いものがふっと見えた。歩道のない細い道だ。誰もいるはずがない。


「なぁ、今、誰かいたよな?」


 思わず口に出した俺に、全員が黙り込む。しばらくすると、美咲が震えた声で言った。


「ねぇ……後ろの席、ちょっと狭くない?」


「何言ってんだよ。」


 達也が返すが、美咲は真剣だった。後部座席をチラリと確認すると、確かに妙な違和感があった。美咲が片隅に寄っているように見える。


「気のせいだろ、こんな時間だし疲れてんだよ。」


 俺は無理やり話を打ち切り、スピードを上げた。早くこの道を抜けたい、そう思った瞬間、車の窓がコンコンと叩かれる音がした。背筋が凍った。


「……誰かいる!」


 陽介が叫び、全員が窓を見る。だが、何もない。ただ、車内に重苦しい空気が漂っている。


 その夜は何とか家に帰ったが、次の日から俺の周りで奇妙なことが起き始めた。

 車を駐車場に止めていても、朝になると窓に内側から手形がついている。後部座席のシートには、泥のついた小さな足跡があった。


「気にしすぎだって!」


 陽介に話しても笑い飛ばされるだけだ。だが、俺の耳には毎晩、車の中から聞こえるノック音が消えなかった。そしてついに、夜中に窓を開けると、白い顔がそこにあった。


 夢か現実か分からない。その日以来、車に乗るのが怖くなった。友人たちに相談しようにも、美咲も達也も連絡が取れなくなっている。陽介に至っては、突然「ごめん」とだけ言って電話を切ったきりだった。


 最後に車を運転したのは、あの山道に行った1か月後だった。再び同じ道を通り、事故のあった場所を通過した瞬間、後部座席から誰かが囁いた。


「ありがとう、ここで降りるね。」


 その声を聞いた瞬間、ハンドルを握っていた手が震えた。振り返ると、誰もいないはずの後部座席に、白い服を着た女が座っていた。

 そして、車のドアが静かに「バタン」と閉まる音がした。


 それ以降、俺は車に乗ることができなくなった。夜中、窓の外を見ると、車の中に誰かが座っているのが見える。

 どれだけ離れても、あの視線を感じる。そして思うんだ。


「俺はあの夜、本当に全員を家まで送り届けたんだろうか?」




最後までお読みいただきありがとうございます。

よろしければ高評価、ブックマークお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ