ここの2階には街の何でも屋があるそうです
学校の最寄り駅から電車でひと駅先。
そこに“何でも屋”はある。
放課後、翠はその“面接”に向かうために、いつもと違う電車に乗ろうとしていた。
本数が多いのはありがたい。1時間待ち、なんてことにはならない。
駅までの途中に結に会い映画を見に行くというので、何でも屋と同じ駅なので一緒に途中まで行くことになった。
「そういえば今日、授業前にあった話なんだけど」
教卓にアリがいたので、教卓の前の女の子が逃がすのもめんどくさい動くのもめんどくさい理由で、動かないようにその上にスティクのりを置いていた。たまたま次の時間虫嫌いで有名なゆかり先生がやってきた。
『前に置いてあるんだけど誰の、のり〜?』
言った後のりを持ち上げたら前の席の子が
『先生、アリが逃げる』
この先を予想していたのか少し面倒くさそうに言った
この後がどうなるのか予想出来たのだろう。めんどくさいが入った言い方だった。ゆかり先生頭の中?で埋め尽くされた。そして、急にゆかり先生が
『黒い物体が動いた!!ちょ、ちょっと!早く取って!!!』
『だっ、男子ー!!』
「って叫んでいて面白かったなぁ〜」
「あー、そういえばゆかり先生虫苦手だったね」
電車の到着のアナウンスが流れた。
(もう着いたの?、ちょっと緊張してきた)
「もぉ〜、顔強ばってるよ?リラックスリラックスー」
誰のせいでバイトの面接に行くはめになったんだよ!ってついツッコミたかったかがそんな気力は翠にはなかった。
電車を降りまもなくし結と別れ少し重い足取りで何でも屋に向かった。
結から1階に喫茶店があり、その隣に階段が続いているのでそこを登ればいいと聞いていたので、それを目印にしgooーマップに案内を頼んで行くことにした。
結が行ったショッピングモールに行くために、たまに来るだけなのでショッピングモールからマンション街に移り変わっていく景色を新鮮な気持ちで受け取っていた。
『目的地まで残り1メートル案内を終了します。お疲れ様でした。』
gooーマップの案内終了の通知が鳴ると同時に緊張感が走る。
喫茶店には、たくさんの人が並んでいた。ふと、結が言っていたことを思い出した。
『1階の喫茶店はイケメン店員が多いから、女性客が多いんだよね』
確かに女性客が多いなと思った。喫茶店の横に階段がありレトロチックなランプが何でも屋までの入口までを照らしていた。
息を飲みながら階段を上がっていった。
(緊張する時って人って手のひらに10回書いて飲めばいいんだっけ?)
そう考えているうちに、扉の前まで来た。
扉が全開にしていたので、中まで見えた。
(換気をしているのかな?)
1歩、恐る恐る中へ入る。
すると、窓辺にもたれかかる黒髪ロングの女性が目に入った。
たぶん……結が言っていた人だ。
隣の公園を見ていた。
風に揺られてた髪がゆらゆらと揺れている。
子ども達の遊び声がこちらまで反響して聞こえる。
外を眺めている目は、優しさに包まれたような目だったがどこか儚く眺めているようにも見えた。
それを眺め、私は立ち尽くしていた。
ふと我に返った。
(この人、結が言ってた人だ。 結が言ってた人だとわかるけど!!、なんて声掛けたらいいんだろう?)
「あっ、あの…」
咄嗟にでた言葉がこれだった。
黒髪ロングの女性がこちらを振り向き窓を閉めて慌てだした。
「お客さん!?えぇっと、案内して、お湯沸かして、何するんだっけ!?」
クールで無口な感じかと思いきや、なんだかすごく慌てていて人間味、というか、親しみやすさすら感じる。
「ち、違います……!あの、バイトの面接で来ました!」
「ああっ、そっか!雪が何か言ってた気がする……?ような……?」
(この人……ほんとに大丈夫……なのかな……?)
ポンと手を打ったあと、はっとしたようにこちらを見た。
「あっ、そうだ!そういえば、まだ名乗ってなかったね」
くるりと振り返り、ゆるく笑う。
「私の名前は、水原 天音。よろしくね」