依頼
朝、自室で目が覚めた渚は、飲み散らかしたエナドリを蹴飛ばしながら服を探す。下着とシャツ一枚で寝ていたため、そんなことが家の人にバレたら怒られると思ったからだ。仕事着を着て、朝ごはんを食べると,渚は仕事に出かける
表通りをゆったりと通るが、ここの清々しい空気はあまり好みではなかった。
そこから裏路地へと入り、そこからはアウトローの世界になる。道行く人が皆ほとんど犯罪者か行く宛のない人で日々の暮らしをするために,彼らは命をかけていた、そんな中だった。男達が擦り寄ってきた。
「ねぇ嬢ちゃん、俺たちと一緒に楽しいことでも」
「楽しいことで…何?」
「ひっ! 失礼しやしたぁ!」
渚の顔を見た途端,男達は逃げていく。ここら辺は渚達ナハトヴォルフのシマだ。下手に構成員の誘拐や騒ぎを起こせばゴロツキなど一網打尽にされるだろう。そうしてナハトヴォルフに着くと、渚はギルドの中に入り、カウンターに近づいた。
「親父、おはよう」
「おはよう渚、今日の調子はどうだ?」
「まぁまぁ、何かボクに依頼とか来てる?」
朝なのに騒ぐならずもの達を見る中、渚はクエストの内容を見る。
「ワールズストレンジャー社からの依頼だ」
「他の裏路地じゃん、こんなところからの仕事を受けていいの?」
「他の裏路地でもここは穏健派だ、むしろ襲ってくる気配はない、でだ、ワールズストレンジャー社からの依頼だが、どうやらこの会社は旅行代理店らしくてな、行く先の異世界でトラブルの種となるものを発見したらしい、それをお前に除去してほしいそうだ」
「なんだ、簡単じゃん、それで、除去するトラブルは何?」
「異世界転移者を反対する団体のトップの暗殺だ」
へぇ…と渚の目つきがぎらりと変わる。普通の魔物退治ならつまらなかっただろう、だが暗殺となれば別だ。むしろ得意分野まである。イストリアではできない暗殺の仕事、やり遂げて見せると渚は依頼を受けた。
「植物都市ラップローズ、ワールズストレンジャー社は3日後にそこへ旅立つ。それまでに"掃除"を頼むとのことだ」
「簡単に言ってくれちゃって、でもいいよ、やってやる」
荷物をまとめると、長さは外へ出ようとする。すると後方から大きな声を出して近づいてくる人がいた。
「渚ちゃーん!」
渚はスルーするように避けると、その人はそのままカウンター裏まで突っ込む。けど怪我はないようで割れたガラスを振り払いながら立ち上がった。
これにはジェフリーも頭を抱えた。
「おはよ、アーシェ」
「おはよう渚ちゃん! これからどこかに行くの⁉︎」
この少女の名前はアーシェ・エテファシー、渚が唯一バディとして認めている仲間で、渚のことを愛してやまないクレイジーサイコレズだと渚は思っている。そんなアーシェが渚の受けた依頼を見ては興味を示す。
「これって暗殺任務? 渚ちゃんまた暗殺に行くの? 私も行くー!」
「アーシェが行きたいっていうなら仕方ないなぁ、ついてきてもいいよ。でも大人しくしててねね
はーいとアーシェは言うと、腰に携えた二丁の拳銃の感覚を確かめ、渚についていく。
「ねーねー渚ちゃん、また私の性を吸っていいからさ、遊ぼうよ」
「だーめ、仕事の時はプライベートな遊びは禁止だって伝えたでしょ」
そう言って2人はギルドから出て転移魔法で異世界転移を行う。昔はこの転移魔法も大規模な人数でなきゃできなかったとされたのに、今では個人レベルで使えるようになったのだから、いい時代になったもんだと渚は思う。けれどその分規制があり、許可されてない者の異世界転移は禁止となった。だから旅行代理店なんかがお手軽異世界旅行なんかを作るのだが,今回はその旅行代理店からの依頼だと知ると、大変なんだなぁと渚は思った。
そして転移が終了し、2人は植物都市ラップローズにつく。
「凄い、花や植物がたくさん!」
「この都市、ラップローズは植物を集めてる都市らしいからね、だからこんなに花とかあるんだよ、さっ、仕事先に行こっか」
そうして渚達は動き出す。デモを起こす団体のトップの暗殺だ、気合い入れていかないとと、渚はビルの上に登ると、団体の本拠地であるビルに近づいた。
「あれがそうだね、アーシェ、見える?」
「見えるけど、ターゲットは誰?」
「ターゲットはあのバラの帽子を手に持つおじさん、今から突入するから構えて」
「わかった」
渚はサキュバスの翼を開き、アーシェは両手に拳銃を持つとサキュバスの力と身体能力強化を使ってビルの窓から屋内に侵入した。
「何事だ!」
「悪いけど死んでもらうよ!」
渚がリボルバーライフルを構えると、バラの帽子を持つ男の心臓を貫いた。男はそのまま倒れ、生き絶える。窓が割れる音を聞きつけたのか、デモ団体の者達が次々と部屋に入ってきた。
「ボス! クソッ! 転移者め! お前らはやっぱり悪だ!」
「あっそ! 善とか悪とか、そんなのどうだっていい!」
渚がリボルバーライフルを撃つと、次々とデモ団体の者達に命中した。その命中精度は凄まじく、適当に撃ってるにもかかわらず弾丸は曲がり,正確に目標を貫く。
「死ね死ね! あはは! 邪魔なやつはまとめて掃除してやる!」
アーシェの戦闘技術も見事なものだった。高威力の口径のハンドガンを使っているにも関わらず、二丁で持って格闘戦、いわゆるガンカタを仕掛けているにも関わらず、大人の男達を相手に次々と薙ぎ倒していった。
「くそっ! なんなんだお前達は!」
「裏社会の掃除屋だよ」
デモ団体の最後の1人を倒すと、渚達は辺りを見渡す。あちこちが血だらけでどうしようもないような状態になっていた。
「依頼はこれで完了っと、逃したやつはいないよね?」
「うん、ちゃんとしっかり確認したよ、構成員は全部やった」
よし、と渚は思うと後片付けも何もせず、アーシェと一緒に転移してビルから去るのだった。