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ボクの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第四章 サキュバス達との触れ合い
18/22

矛盾した信仰

 今日は渚にとって特別な日だった。月に数回の精の摂取日だ。渚はいつもの服装を着て、外に出ると、ある場所へと向かう。そこは、裏路地でもある事情で空白地帯となった場所だった。渚は空白地帯に入ると行き先であった場所に着く。

 着いたのは、少し寂れた教会だった。教会の中に入ると、ステンドグラスから様々な光が照らされる教会の中心に誰かが祈っているのがわかった。その者に対して、渚は声をかける。


「ラファリス、吸精の日だから来たよ」

「…あぁ、渚、来たのね」


 祈りをしていたのはなんとサキュバスのラファリスだった。教会には数人の人が来ていて、サキュバスであるラファリスのことなど気にせずに祈りを捧げていた。


「また祈ってたの? 祈ったって何も起きやしないのに」

「祈る事で、神に今日を生きられることを感謝していたのよ」

「淫魔であるサキュバスが神様を信仰するってのも変な話だけどね」


 そうして渚はラファリスに近づくと、教会の椅子に一緒に座り、互いにサキュバスの尻尾を絡ませる。すると、ラファリスの尻尾の先の結晶から、渚の尻尾の結晶に向けて精力が供給される。尻尾に供給された精力が体に流れ、渚は力が沸るのを感じる。


「いずれクイーンになる貴方が、いつまでも赤ん坊の授乳のようにこうして精力を供給してていいの?」

「どうせラファリスも、ボクも何千年と生きる不老不死だから、ずっとこんな風に精を得るのがいいよ。まぁ…ボクだって欲しい精の人はいるけどさ」

「それって、貴方のお兄さんのことかしら?」

「ノーコメントってことにしとく」


 渚は教会のステンドグラスを見ながら、そういう。そう、彼女はただのサキュバスではない。彼女はまだ未成熟だが、サキュバスクイーン…サキュバスの女王になる者だ。その証拠に、サキュバスにしては美しい銀髪と、結晶が先についた尻尾を持つ。文字通り、夜の女王になれる存在なのだ。

 だが彼女はこう言う。


「クイーンとか、なるつもりはないよ、確かにサキュバスのみんなはボク達の家族みたいなものだけど、けどボクにはクイーンの素質はあってもそれであり続ける才能はないよ」

「そうであったとしても、貴方は誰かを引っ張るのは得意じゃない?」

「それはそうだけどさ、でもボクみたいなちんちくりんが女王ってのも変な話でしょ?」


 渚はそう言っては自身の身体を眺める。サキュバスになってから、肉体の成長は止まった。サキュバスだから人の望むどのような姿にもなれるが、本来の姿がこれでは自分の配下につくサキュバスに申しわけが立たないだろう。それに、彼女にはクイーンにならない絶対的な理由があった。


「ボクは人間だ、サキュバスではあっても、ボクは人間だとずっと言い続けるよ、勿論この体は利用するよ、でも、ボクは原種のサキュバスじゃない、後天的に生まれた者、だから、ボクはサキュバスクイーンにならず、ヒトとして生きていこうと思う」

「そう、それが貴方の選択なのね…」


 ラファリスはどこか寂しそうに答えると。物思いに耽る。自分の子が離れていく感覚を寂しいと感じるように。


「ねぇ、ラファリスはどうしていつもここで祈ってるの? ラファリスって聖職者じゃないでしょ?」

「あら、私はこう見えて一介のシスターよ? この教会の主でもあるのだから」

「だからなんでサキュバスがシスターやってて神を崇めてるのさ」

「神はたとえサキュバスでも、この世に生を与えてくれる存在だからよ、私たちは神に対して祈り、加護を求め、贖罪を求め、助けを求める。それは、たとえ人間でもサキュバスでも代わりはしないわ」


 ラファリスはサキュバスらしからぬ格好、シスター服を着てはそんなことを言う。渚には、神とかどうとか理解できない話だった。


「分かんないな、やっぱり」

「どうしてなの?」

「この世に神がいても、神にだってできることの限界がある。助けてくれない神様だっているし、こうして祈ってても、どうせ誰も助けてくれないって思う」

「そんなことはないわよ。あなたの家族の狐ちゃんを見なさい? 彼女は神として、誠実に頑張ろうとしてるわ」

「みゆにゃんは神様見習いだから、まだ現実を知らずに闇雲に頑張ってるだけだよ」


 渚はそう言うとフゥッとため息をついては椅子に手をつく。


「いいえ、たとえ闇雲に頑張っていたとしても、その行いは無駄にはならないわ。どれだけ残酷な現実が待ち構えていたとしても、諦めなければ、必ず道は生まれる、私はそう信じてる」

「夢想家だね、ラファリスは」

「あなたがドライなだけよ、もっと理想を持ちなさい、自分のなりたいものになるという夢を」


 夢か…と渚は思う。思えば渚は夢というものを考えたことがなかった。どんなものになりたい、どんなことをしたい、そういうことを考えたことがなかった。


「あなたと出会って、もう何年になるのかしらね…」

「数年にはなると思う」

「そうね、あの日が懐かしいわ、貴方が、大怪我をして死にかけで教会の前で倒れていたところを見かけた時のことを思い返すと」

「やめてよ、結構恥ずかしい記憶なんだから」


 そうは言うが、渚は思い返す。ラファリスと出会ったあの時のことを…。

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