魔法の練習
仕事用の必需品を買った渚とシェスティは、翌日、魔法の練習を裏路地の空いたスペースでしていた。
「斬鉄の風よ、舞え!『バスターウィンド!』」
黄昏の杖から放たれた風魔法は、渚が適当に設置したターゲットをズタズタに切り裂く。
続いて別の魔法を試す。
「癒しの草花よ、我らを救え!『ヒーリングフラワー!』」
今度はシェスティと渚の周りに花が咲き誇ると、傷や疲れが幾分か取れていく感覚を感じた。
戦闘だけでなく回復までできるとなると、渚は頼れる仲間になりそうだと思った。ただ、できるのはあくまでまだ中位魔法まで、上位魔法とまでなってくるともっと修練が必要だった。
「上位魔法は使えないの?」
「レベル7以降の魔法はまだ使ったことがないわ。試してみる」
そうしてシェスティは杖を構えると、呪文を唱え始めた。
「精霊の聖樹よ、我らが苦痛を救い、我らが敵を貫きたまえ…『イグドラシル!』」
イグドラシルと唱えると、巨大な木が生え、ターゲットをぐちゃぐちゃにする。だがここで魔力が切れたのか、シェスティはくらっとすると倒れかけた。
「わぁあああ! 大丈夫⁉︎」
「大丈夫…魔力切れを起こしただけだから…それで酔っただけ」
「少し休もう? こんなことでエーテル薬を使うのも勿体無いし」
そうしてシェスティと渚は2人で休むが、そう言えばとシェスティは気になることを言った。
「渚はその銃で戦ってるのよね? その銃、普通の銃には見えないけど、どこで買ったの?」
「あーこれ? 依頼先で拾った。確か…魔弾の射手…だっけ、アーティファクトクラスの品らしいんだけどよくわかんないんだ」
「魔弾の射手⁉︎ それって、天才銃技師ザミエルが作った銃の総称じゃない!」
「知ってるの?」
渚がそう聞くと、シェスティは当たり前よ! と言いながら説明した。
「魔弾の射手はね、銃技師ザミエルと呼ばれるお方が作った最高級の銃なのよ! この世にその名を冠する銃は何十丁と存在するけど、そのどれもが素晴らしい性能をしているの! しかも渚の持つその銃、もしアーティファクトクラスならザミエルの遺作とされたもので、あらゆる物を貫く強力な力を持ってるのよ!」
そうシェスティが説明するが、渚はやや不満げに答えた。
「うーん、確かにこの銃は強いんだけどね、欠点があるんだ」
「欠点? それって何?」
「なんか、ボクが普段行く店で聞いた話なんだけど、オリジナルのバレルが失われているらしくって、今はレプリカのバレルが使われてるんだけど、あまりの威力に耐えられなくて、12発しか撃てないの、ああ勿論、その場でバレルを交換すれば継戦はできるんだけどね」
「だから背中に数本予備のバレルを背負ってるのね」
渚の背中には、魔弾の射手を入れるケースとバレルが数本背負われていた。それを見てはシェスティは渚に聞く。
「渚は魔法を使わないの?」
「使わないなぁ、使い方すら習ったことはない、でもボクにしかできないことはあるよ」
すると渚は立ち上がると黒髪がサキュバスの白い髪へと変わり、銃を握ると、言葉を発した。
『アイジングニードル!』
その言葉を言った途端渚の魔弾の射手が青白く光り、エネルギーのこもった弾丸が装填される。そしてそれを撃つと、長く細い氷の棘が発射され、ターゲットを貫いた。
「これは…何? 魔法にしては詠唱がなかったけど、まさか、渚は無詠唱で魔法を使えるの⁉︎」
「そんな大層なことはできないよ、ボクが今使ったのは能力の模倣だよ。ボクはねサキュバスの能力でね、能力者の体液…この際血とでも言っておこうか、それらを摂取することで、その能力を模倣して、魔弾の射手で撃つことができるの」
「凄い能力じゃない! サキュバスってそんなこともできるのね!」
「まぁ、流石に能力者にすけべする程勇気はないから、殺した相手の血液を舐めて能力を得てるんだけどね」
それってサキュバスじゃなくてヴァンパイアじゃない? と突っ込まれるが、渚は知らないふりをして、次の弾丸を装填する。
『ヴェノムアシッド!』
今度は酸性の毒の弾が撃たれ、ターゲットが溶けた。それを見たシェスティはおおーっと声を上げる。
「これって魔力を消費してるの?」
「ううん、魔力とは別に精力を消費してる、魔力はボクの翼による防護や、飛んだりするのに使うよ」
「精力って、渚もやっぱり…スるの?」
「しないしない、まぁおにぃちゃんは別だけど」
「それって余計に不味くないかしら…」
シェスティがジト目で渚に聞く。それを見た渚はさぁさ次々! と話を逸らした。
「そろそろ魔力も少しは回復したんじゃない? 帰ってご飯にしよ?」
「うん! わかった!」
そうして2人はナハトヴォルフのギルド内に帰る。するとギルド内は騒然としていた。
「どうしたの? なんか騒がしいけど」
「あぁ渚とシェスティか、それが、新たな依頼が出されたんだが厄介なもので困ってたんだ」
厄介なもの? と思った渚は依頼内容を見る。するとそこにはこう書かれていた。
『イストリア所属、陽宮 永戸の抹殺』と…。




