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ボクの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 復讐者
12/22

救われなかった者

 貴族の屋敷に着くと、サキュバスの翼を生やして高い壁を軽々と乗り越えた。そして、屋敷の中に入る。


「だだっ広い……さらわれた人たちはどこにいるんだろう」


 渚はしらみつぶしに部屋を探し回ることにした。厨房、倉庫、客室と、一つ一つ調べていく。そうして調べていくと、一番奥に妙に頑丈な扉がある部屋を見つけた。


「怪しい…」


 渚はつたないながらピッキングで扉を開けようとする。しばらく悪戦苦闘を続けると、カチリと鍵が開く音がし扉が開いた。中を覗いてみると、やはりと言うべきか、奴隷にされた街の女性達が入れられていた。


「あ、あなたは誰なの⁉︎」

「それは答えられない、けどこれだけは伝える、領主は死んだ、キミ達はもう,アイツの言いなりにならなくていい、ここから逃げて家族のもとに帰るんだ」

「領主様が死んだ⁉︎ それって本当なの⁉︎」

「本当だよ、どうする? ここでのたれ死ぬか、街に出て皆んなに明るく迎えられるか、どっちがいい」


 渚がそう言うと、殆どの女性が逃げていった。だが、ただ1人だけ、逃げない者がいた。その者は、尖った耳を持つ存在、いわゆるエルフと呼ばれる存在の少女だった。


「…キミは逃げないの?」


 渚はその金髪の少女に手を差し伸べるが、その手を払われた。どう言う事だろうと思い、顔を覗き込むと、その少女は、かつての自分と同じ、絶望した表情をしていた。


「パパは見せしめに兵士に殺された。ママはこの館で死ぬまで領主にボロボロにされて死んだ。私にはもう、帰るところはない」


 そう言うと少女は両膝に顔を埋めて泣く。渚は、どう彼女に声をかけていいかわからなかった。


「領主が殺されるくらいなら、その前に私が先に死にたかった…そうしたら、パパとママに会えたかもしれないのに」

「……そんなことないよ、パパとママは、キミが生きてる事の方がよっぽど喜ぶと思うよ」

「でも私には! もう頼れる人なんていないの! だって私……混血のハーフエルフだから!」


 なんと,この少女はハーフエルフだった。普通のエルフと違い、ハーフエルフは微妙な立ち位置にいる。人間のような普通の体ではなく長命ではあるが、高潔なエルフの中では存在できない中途半端な存在。

 確かに、ハーフエルフならば…帰る場所がないと渚は思った。でも、かと言ってこの子を放置するのはかわいそうだと渚は思うと、少女にもう一度手を差し伸べる。


「帰る場所ならあるよ。キミにとっては初めての場所になるけど、すぐに慣れる」

「それって…どこよ」


 少女が諦め気味に聞くが、渚は自信満々に答えた。


「ボクの所属してるギルド。ギルドマスターがいい人でね、キミみたいにボクが奴隷になってた時に助けてくれて、ギルドに住ませてくれたんだ。ボクんちはちょっと連れてけないけど、けど、キミの新しい家は与えられるよ」


 そう言って渚がハーフエルフの少女の手を取ると、ゆっくりと持ち上げた。するとハーフエルフの少女は顔を上げてはこちらを見てくる。見た目からして、渚とちょうど同い年くらいの少女だった。


「いいの? 私なんかが住んで……私、ハーフエルフなのよ?」

「いいのいいの。ギルドのみんなはきっとキミの事を受け入れてくれると思うから」


 渚はえへへと笑うと、ついでにと言っては姿を変える。


「それにここだけの話…ボクもね、キミみたいに、サキュバスだから」


 透き通るような銀髪になると、角と光る尻尾を見せ、渚は言った。それを見た少女は目を丸くし、暫くするとはぁっとため息をついて諦めたように笑うと、こう言った。


「私の名前はシェスティ。シェスティ・リターニア、貴方の名前は何?」

「ボクは渚、陽宮渚。よろしく、シェスティ」


 そうして2人の少女は牢屋から出ると、ミズガルズへと帰るのだった。


 ーーー


 ミズガルズに帰ってきて、ナハトヴォルフに帰る渚とシェスティ、ギルドマスターであるジェフリーは渚が子供を連れ帰ってきた事をいぶかしんだ。


「ただいま、親父」

「ただいまじゃねぇ、誰だこいつは、なんで任務に行かせたら奴隷を連れ帰ってくるんだ。


 ジェフリーが冷たい目線をシェスティに向ける。それを向けられたシェスティは「ひっ…」と怯えるが、渚に「大丈夫だよ」と言われると、渚は事情を説明した。


「ふむ……なるほど、親を亡くしたハーフエルフか、解放された奴隷ではあるが、行き場がないから連れてきたと」

「そういうこと。お願い! この子をここに住ませてあげて!」


 渚はこの通り! と手を合わせてお願いをする。それを見たジェフリーは仕方ないなと頭を掻くと、シェスティに聞いた。


「お前は何ができる。戦闘、給仕、なんでもいい、いってみろ」

「屋敷にいた時には愛玩奴隷として扱われてたから何も…けど、魔法なら使える」

「使える魔法のレベルは」

「中位クラス…レベル6までなら」


 ふむ……とジェフリーが口に手を押さえると、少し考えた後言った。


「よしわかった。明日からお前はここで住み込みで働いてもらう、給仕の仕方は教えるから安心しな。それと同時に、ギルドとして冒険者登録をしておく。裏ギルドだからまともな仕事はこねぇが、まぁお前くらいの術者なら多少は問題ないだろう。

「じゃあ親父!」

「あぁ、今日からこいつは俺の家族だ。シェスティとか言ったな、よろしくな」

「はい! よろしくお願いします!」

「旦那! ハーフエルフのガキを家族に迎え入れるってのかい?」


 周囲のならずもの達がまくしたてる。シェスティはきっと自分が差別されると思った。だが、次の瞬間言われた言葉は予想外な言葉だった。


「そりゃあいいや! こんなかわい子ちゃんを迎えられるんだ! ジェフリーの旦那は幸せ者だよ」

「馬鹿っ、みなしごを拾ってるだけだ、そう言う趣味はねぇよ!」

「とかなんとか言って、渚の時だって同じように迎えたくせに」


 そうして笑い合う店内に、シェスティは驚く。すると渚は言った。


「だから言ったでしょ、受け入れてくれるって、改めて、これからよろしくね、シェスティ」

「うん! よろしく! 渚!」


 その日の夜は、シェスティという新しい仲間を迎え入れ、皆ではしゃぎ回ったのだった…。

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