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ボクの異世界黙示録  作者: 遊戯九尾
第二章 復讐者
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渚の過去

 飛行機事故で生まれる前に死亡し、転生した渚は、小さな孤児院に引き取られた。その孤児院は別段裕福であったわけでもなく、かと言って金がないわけでもない、ごく普通の孤児院だった。


「おばさんおばさん! これ! とっても綺麗!」


 渚が孤児院の保母に見せたのは、小さな蝶だった。美しい羽を見せながら蝶は渚の手から離れると飛んでいった。


「あっ……せっかく捕まえたのに」

「綺麗だったから見せようとしてくれたのね、ありがとう。でもね、蝶々さんも生きるのに必死なの、私たちが毎日ご飯を食べて寝て、生きているようにね」

「蝶々さんも生きてるの?」

「ええ、もちろん、蝶々さんだけじゃない、花や木、この星でさえも、命を宿しているのよ、だから、無闇に命を粗末にしてはいけないの」


 この時の渚にはそれがどう言う意味か分からなかった。けど、大事なことを言っているのは分かった。

 そうして、渚達は孤児院にてのんびりと、平和に暮らしていた。だが、先程の話のその意味が分かるのは、8歳になった頃だった。

 多くの異世界を巻き込んだ巨大な戦争、異世界大戦が始まったのだ。自分達の街は毎日砲火に晒され,孤児院も壊れてしまうんじゃないかと渚は怖かった。


「怖いよ……!」

「大丈夫よ、戦争なんて、すぐ終わるから」


 "戦争なんてすぐ終わる"そう信じてずっと待ち続けた。だが、戦況はどんどん何処も悪化していき、最終的に兵士たちの略奪に遭うようになった。


「戦争の為に! この孤児院の鉄の類と、食料を分けてもらおう!」

「それはできません! 鉄ならば渡しますが、ここの食料は全て子ども達に与えられる食料です! それを渡すなど!」

「黙れ! これは軍の命令だ!」


 そうして孤児院から鉄や食料が消えていき、渚達は飢えることとなった。毎日森や山を探索しては食べられる植物や動物を狩り、飢えをなんとか凌いでいたが、定期的に兵士たちがやってきては備蓄した食料を奪っていった。そして、戦争も末期になると、最終的に…。


「ババァには興味はねぇ、子供を渡せ、その子供達は戦争の兵士として利用させてもらう」

「とうとう気でも狂ったのですか⁉︎ 子供を兵士として駆り出すなど! 絶対に許しません! 子供達は渡さない!」

「うるさい! 邪魔だ!」


 目の前で保母が斬られ大量の血が溢れ出ると、それが渚につき、保母は倒れる。その時、渚は初めて気付いた、無闇に命を無駄にしてはいけないと言う意味を。


「ちっ、反抗しなければ生きていられたものを、おい! ガキどもを連れて行け!」


 そうして子供達は連れて行かれるが、その場に伏した渚は、連れてかれようにも現実を受け入れられず、うわ言を言うだけだった。


「おばさん……どうしたの、なんで動かないの…動いてよ…」

「……このガキはダメだな、戦争には使えねぇ、こいつはここに放っておくか?」

「いや、そういや愛玩奴隷を欲してた貴族様がいたな、そのお方にこのガキを渡そう」


 そうして渚は現実を直視できぬまま、貴族の屋敷に連れられ、奴隷として扱われる。


「これが新しい愛玩奴隷か、確かに、愛玩と呼べるほど可愛いじゃないか、綺麗な黒髪だ,とてもいじめがいがある」

「っ?」


 渚は意味も理解できぬまま貴族の屋敷で生活することとなり、メイド達が掃除や料理を担当する中、渚だけが、愛玩奴隷として、日々言われもない罰を受けた。


「ほれ、焼き傷をあたえてやろう、それがお前が、僕の奴隷である証だ」


 渚に奴隷紋の代わりに焼き傷がつけられ、背中に一筋の火傷の痕が残る。後に最新の医療技術で治されるが…それでも少し痕が残るほどの傷をこの時与えられた。


「誰が僕の歩く前に立っていいと言った、どけ、駄犬が」


 廊下を歩いていた所を家族によって渚は蹴られ、痛みでうずくまる。それを見た貴族は、渚に言った。


「いいか! お前は僕の所有物だ! 所有物風情が僕の邪魔をするな!」

「は……い…ごめんなさい」


 そうして渚に数々の非道な行為が行われた。暴力だけでなく強姦まで行われ、渚には淫紋まで彫られた。定期的に精を摂取しなければ疼く体になり、渚はそれ以降、まともな生活が送れなくなった。

 そして、大戦は終結した。大戦の終結により、イストリアが生まれ、イストリアは復興と共に各地の不祥事を調査するようになった。

 その際に、貴族が大戦時に税金を着服していたことが発見され、貴族は捕まることとなった。

 イストリアの兵士と、増員で呼ばれた助っ人であるジェフリーが貴族の屋敷を走り回り、家族と渚は最後の部屋まで追い込まれた。

 すると貴族は、迫ってきたイストリアの兵士達に渚に刃物を立てて言った。


「おい! 道を開けろ! で…でないと、このガキが死ぬことになるぞ!」


 貴族は震える手で渚に刃を立てる。だがその時、夜闇の狼と呼ばれたジェフリーが銃を貴族の武器を持つ方の肩に撃った。貴族は思わず武器を落とし、床に跪く。その時、渚の目に映ったのは、孤児院の保母が死んだ時と同じ真っ赤な血と、それが着いた刃物だった。

 渚は思わずその刃物を手に取る、そして、貴族がうずくまっているところに、刃物を逆手に持って振り上げた。


「何をしてる…お前は、僕の奴隷だろ……やめろ……やめろぉおおおおおっ!」


 瞬間、渚は貴族の男に刃物をグサグサと突き刺した。今までの恨みを込めるように、この世の全ての憎しみを込めるように、全身に刺し傷が残るほど刺した後、血だらけになると、彼女は笑った。そして彼女も刃物を自分に向け、自害しようとする。


「やめてとけ、お前はまだ……生きていられる場所があるのかもしれないのだから」


 だがそれを、ジェフリーが止めた。渚はきょとんとするが、ジェフリーの優しげな表情を見ると、刃物を取り落としたのだった。

 そして、渚はジェフリーに拾われ、今日に至るまで、傭兵として育て上げられた。

 最初はナイフとフォークでジェフリーを殺そうとするなど、危なっかしい行為が目立った。だが、しばらく育てるとそれも大人しくなり、徐々に虚ろな目から元の元気な瞳に戻っていき、貴族といた時は発さなかった言葉も話すようになり、普通の女の子として成長し、そして今日に至った。

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