第5話 噂は瞬く間に広がる
カール高地防衛は成功し、ロイがトラウィスを一瞬で殲滅し撃退したという少し盛られた噂が飛び交い一躍有名になった。
他の任務に就いていた隊員達
「あの噂は本当なのか?あの最下位のやつが1人で中規模の侵攻部隊を撃退したって噂。」
「本当らしいぜ、カール高地防衛に参加した隊員達が騒ぎまくってるそうだ。」
「覚醒でもしたんかな?」
「さあな、でも強い奴が増えるのは助かるぜ」
「そうだな」
ほかの隊員達が俺の噂をしているが前のようにバカにした噂では無いので堂々と兵舎を歩けるのは嬉しい。
ランキングも評価点が追加され元々のポイント差が広かった為順位の変動はないが、少しずつ戦果をあげれば順位は上がるだろう。
「今日はケーリッヒ少将に報告し終わったら1人で異能のトレーニングでもするかな」
俺はトレーニングの内容を考えながらケーリッヒ少将の所へ向かった。
「来たかロイ、報告書は読んだぞ。大活躍だったじゃないか。上の連中もお前の話で持ちきりだぞ。」
「これも全てゴルドー元帥とケーリッヒ少将のおかげですよ。」
「うむ、これからも精進したまえよ」
ケーリッヒ少将に報告書の内容以外にも技の使用感や改善案など、戦闘してみて感じたことを報告した。
「ふむ、これからは天候に左右されずとも使える技を開発していくか。あとは帯電用のパワーアーマーや弾丸に雷を帯びさせる銃の開発も技術者に頼まなくてはな」
「じゃあ、技術者の方はお願いします。自分は次の任務までに技の開発と技の精度を上げておきます。」
「おう、なにか要望があったら早めに言ってくれよー」
「分かりました」
ケーリッヒ少将への報告を終え、ほとんど使われていない第5訓練場へ足を運んだ。
「ん?誰か居るな、珍しい」
近づいて誰か確かめる
「ん?」
向こうもこちらに気づいたようだ。
「誰かと思えば最近噂のロイ軍曹ではないか。」
「誰でしょうか?」
「あん?俺の事知らないだと?風神の名を持つ俺を知らないとは…勉強不足だ出直してこい。」
風神と聞きピンと来た。
「ハーリー・テンペスト中佐ですね、すみません風神と聞くまで分かりませんでした。」
「そうか、分かればよろしい。」
第1大隊大隊長ハーリー・テンペスト中佐、風神の名の通り風を操る異能で台風や竜巻を出現させて自由自在に操れることが出来る。ランキングは10位と高い。
「噂のロイ軍曹はここへ何しにきた?」
「いつも通りトレーニングに…」
「いつもこの時間なのか?」
「はい」
「そうか、俺はいつもは朝早くここで特訓してるんだが、今日は急ぎの用事で朝出来なかったから今の時間に居るんだがせっかくだから一緒に特訓するか?」
「いいんですか?」
「ああ、1人で特訓しててもやれることは限られるからな。それに俺とお前はいいコンビになれると思うしな。」
確かに、風の異能は上昇気流を発生させ雲を作ることができて、場所が砂漠とかでないなら晴天でも雲を発生させ雷を放てるようになる。
「では、よろしくお願いします」
「おう、まずは俺の竜巻に電気を帯びさせてみよう。」
「はい!」
俺とハーリー大隊長は小規模校の竜巻や台風に電気を帯びさせたり、ハーリー大隊長が作った雲で万雷を放てるのかを確かめたりと有意義なトレーニングが出来た。
「ひとまずはこんなところか」
「そうですね、これならトラウィスの大規模攻勢が来ても撃退出来そうですね」
「ふむ、101分隊を第2大隊から俺の第1大隊に編入して一緒に戦ってもいいかもな。」
「俺もそうして欲しいですけど、第2大隊長は許さないでしょうね。」
「そうだな、あの頑固者は融通が効かないからな。俺からケーリッヒ少将に掛け合ってみるさ。ケーリッヒ少将ならなんとかして貰えるだろう」
「お願いします。」
そしてわずか1週間後には101分隊は第2大隊から第1大隊へ転属となった。
「まだハーリー中佐と話してから1週間しか経ってないのにもう転属とは早くないですか?こういうのって手続きとか諸々で時間がかかるのでは?」
「まぁな、あの一匹狼と言われているハーリー中佐が珍しく他の奴と組みたいと言っていて誰と組むのかと思えばお前だったからな、なにかの縁だとおもって優先的に終わらしたんだ。」
「ありがとうございます」
「うむ、感謝するなら今日は奢ってくれ、それでチャラにする」
「もちろん!奢らせて頂きます」
俺は日々の訓練の後ケーリッヒ少将に高級料亭に連れてかれ、食事はとても美味しかったが奢りなのでバカ高いお金を支払い、良い食事を食べた満足感とお金を失った喪失感に挟まれながら帰路に着いた。
異能者人物紹介
ハーリー・テンペスト中佐
異能者ランキング10位 風の異能者
別名、風神と呼ばれ自由自在に風を操り、重量が30tを超えるトラウィス四足歩行型戦車を吹き飛ばせる程の力を持つ。
酒に弱く酔うと異能のリミッターが外れ、周囲を風で吹き飛ばしてしまうため禁酒をしている。