第4話 初陣
半年間ケーリッヒ少将に鍛えられた俺は、異能特殊師団で初の任務、初陣に臨むことになった。
「これより、第13小隊のブリーフィングを始める。」
第13小隊のアメリア小隊長とロイ軍曹を含む分隊長4人が小会議室の席につく。
「えー、今回我々に与えられた初任務はカール高地の防衛だ。数日前にカール高地周辺の競合区に配備されていた前線部隊の一部の部隊がトラウィスの中規模侵攻部隊の攻撃を受け壊滅。トラウィス中規模侵攻部隊はそのままカール高地に向け直進しており、これを受け南方方面司令部はカール高地を守備する第21砲兵師団だけでは力不足だと判断し我々に援軍を求めてきたというわけだ。」
「カール高地には大規模な砲兵陣地があり、突破されてしまうと付近の競合区にいる前線部隊への砲撃支援が滞り、それにより前線が突破されるとアミドル連邦と大陸同盟諸国を繋ぐ陸路での交通路は遮断される。戦略的にもカール高地ほど防衛に適した場所が南方方面には少ないため絶対に守りきらねばならない。そこでこの任務には我が第13小隊、他第14小隊、第15小隊がこの任務に派遣される。」
「ちょっと質問いいですか?」
第102分隊の分隊長が手を挙げる。
「どうした?」
「中規模の侵攻部隊とはいえ、カール高地を防衛するのに3個小隊では少ないように思えますが、大丈夫なんでしょうか。」
「そうだな、確かに3個小隊で防衛は難しい。少なくとも2個中隊居れば安心だが、現状ほかの部隊も多方面からの援軍要請により駆り出されている、このまま行くしかあるまい。」
「異能者が居ればな…」
第102分隊の分隊長が俺のことを見ながらそう発言する
バカにされていると分かっているので俺は目を合わせず無視をする。
「異能者が居なくても戦えるよう訓練してきたし最新式のパワーアーマーもあるんだ、勝てるに決まってる。」
普通に死亡フラグを立てたなと思ったが口には出さない。
「では、各自任務に備えてくれ。明日の明け方にカール高地へ出発する。」
「了解!」
〜カール高地〜
第13小隊はカール高地の手前正面で防衛することになった。
「よりによって1番攻撃の激しい正面の防衛を任せられるとはツイてないですな!」
楽しそうにダラス伍長は話す。
「お前が陽気だということは勝てる算段があるのかい?」
「当たり前だろカーラ、うちには分隊長が居るんだぜ?半年間であれだけ強くなったんだ、余裕だろ。」
「だいぶ楽観的だが、私もそう思う。今の分隊長なら1人でも全員倒しちゃいそうだ。」
「私もそう思います!」
「俺もです!」
「私も!」
煽てられて恥ずかしいが、悪い気はしない。
「無駄話はそこまでだ、敵が来たぞ。」
双眼鏡で前方に展開しているトラウィスの侵攻部隊を視認した。
「分隊長、派手にやっちゃってください!」
「おう、巻き込まれないよう離れといてくれ」
「了解!」
俺は身体中に雷を充分に蓄電出来たら手を空に向けて、雲に向かって雷を放出する。
すると雲が強制的に雲放電を起こし、雲の中でバチバチと光り始めその雷雲をトラウィス侵攻部隊の上に移動させる。
準備は整った。
「万雷」
雷雲は地上に向けて数百もの稲妻を放電し、聞いた事のない轟音と共にトラウィスの侵攻部隊に直撃した。
稲妻の範囲内に居たトラウィスは電気系統がショートし機能停止してその場に倒れ、直撃したものは身体が発火し炎上した。
「流石は分隊長だ、あんなに居たトラウィスがこの短時間で全滅とは」
「私らの出番ないじゃないか」
「凄い音と振動でしたね、トラウマになりそうです…」
「これから嫌という程経験するんだから今のうちに慣れとけよー」
〜カール高地左翼〜
「おい、今の落雷はなんだ!?こっちまで音と振動が伝わって来たぞ!」
「雷の異能の101分隊のロイ軍曹では?」
「あの最下位がやったのか!?あんな事を出来るやつが何故今まで最下位だったんだ!」
「知りませんよ!というか隊長!トラウィスが撤退していきます!」
「勝ったのか…?」
「そのようです…」
「そうか、ならば敵のトラウィス完全撤退確認後カール高地砲兵陣地に撤収する。」
「了解!」
〜カール高地正面第13小隊〜
101分隊が13小隊の面々と合流した後、ほかの分隊の隊員達が駆け寄ってきて俺を囲った。
「お前、力隠してたのか!?バカにしてた俺の方がバカじゃないか…」
「すげぇ!あんなに居た敵が全滅したぞ!」
「英雄の誕生だーー!今日はみんなで祝勝会だーー!」
「おおぉぉぉーーー!!」
ロイ軍曹の技を間近で見た13小隊の隊員達が驚きと歓喜でお祭り状態になっていた。
「お前ら落ち着けぇ!まだ一応任務中だぞ!」
小隊長が怒り狂う。
「は!」
小隊長の怒号を聞いた隊員達は一瞬で静かになり、姿勢を正す。
「まだ、右翼と左翼の奴らが戦闘中のはずだ、なので今から…」
「小隊長!右翼と左翼に展開していたトラウィス侵攻部隊は撤退を開始した模様です!」
隊員一同が一斉に小隊長の方を見る。
小隊長は「ふぅ」とため息をこぼし
「お前ら聞いたな、我々の勝利だ!」
小隊長は拳を挙げる。
それを見た隊員達は「おぉぉぉーー!!」と一同歓喜する。
俺の初陣は仲間達に強烈な印象を残し良い結果で終わった。
そして13小隊はカール高地砲兵陣地に撤収した。
死亡フラグ回収しなくて良かったですね