表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/27

 0

  


「この屋敷の名前の由来ですか? 庭にぐるりと植えられた樹木――珊瑚樹(さんごじゅ)から来ていると聞きました……」

「でも、ちっとも珊瑚っぽくないじゃない」

「ああ、花はね、あのとおり白いです。でも夏が来て実がなると、赤くなる。その様子が珊瑚そっくりだとか」

 ふいに思い出したように遺産管財人を兼ねる若い弁護士は付け加えた。

「この樹は〈泣く木〉とも言われるそうです」

「うそーー!」

「こら、(その)ちゃん! あんまりズケズケ言わないの。スミマセン、妹、いい子なんだけど率直過ぎて」

「いえ、気持ちがいいですよ。なんでもはっきり物事を言える人って素晴らしいです」

「あら、やっぱり弁護士さんて秘密をいっぱい知ってても職業柄、はっきり言えないことが多いのね? ヤダー、それって超ストレス」

「ハハハ、あんまりいじめるとこの樹みたいに泣いちゃいますよ、ホラ」

 弁護士は木に歩み寄ると一枚、葉をむしり取って真ん中から千切った。すると、

「あ、白い糸が――」

「ね? これが涙みたいだと、昔、父が教えてくれました」

「ふーん、だから、泣き虫の木かぁ……ロマンチック! 気に入ったわ、珊瑚樹邸(さんごじゅてい)! ねぇ、(はる)ねぇはどう?」

「ええ、私もよ、苑ちゃん」

「それは、良かった! ご姉妹がお気に召してくださって、あなた方のお祖父(じい)様もどんなにお喜びでしょう。では、中に入って遺言書等、書類の確認をお願いいたします……」



  挿絵(By みてみん)



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ