8話
隼斗さんと両想い。 嬉しいなぁ。
そんなことを思っていると、隼斗さんに跪かれた。
何、この既視感!?
「薫さん、俺と結婚していただけますか」
あの時、隼斗さんとお付き合いを決めて良かった。
まず、隼斗さんと会わせてくれた兄さんや父さん。
そしてアドバイスをしてくれた麻子叔母さまや優勢にぃ、遥輝にぃ。
様々な人達に今とても感謝をした。
「ええ。よろしくお願いいたします」
後日、隼斗さんのご両親に結婚の挨拶に向かった。
「父さん、母さん、兄さん。
俺は薫さんと結婚することになりました」
「これからよろしくお願いいたします。
お義父さま、お義母さま、お義兄さま」
「こんな可愛い子が義娘になるのね。嬉しいわ」
お義母さまにそう言われる。
可愛いと言っていただけて嬉しい限りだ。
「こちらこそ、よろしく頼む。不肖の息子だが、貰ってやってくれないか」
お義父さまにそう言われる。
不肖だなんて……とんでもない!
「隼斗さんは私にはもったいない人ですし」
そう言うと、首を横に振られた。
「いや、そんなことはないはずなんだが」
お義母さまが柔らかく微笑んだ。
「隼斗は薫ちゃんといる時は格好つけていたのね。あなたも昔そうだったでしょう?
やはり親子ね。似ているわ」
へぇ。お義父さまの昔の話聞いてみたいです!
「そう。また後日にでも話してあげるわ」
ありがとうございます!
「母さんも薫さんと同じことを言うのか」
隼斗さんがそう言う。
まあ、私は隼斗さんとお義兄さまが似ているって言ったんだけど。
でも、隼斗さんとお義父さまも似てるよね。
こう、ちょっとした表情とか。
「まぁ、何を言ってるの?
確かにあなたは顔は私に似てるけど、性格はお父さんにそっくりなのよ?
でも、薫ちゃんもそう言っていたなんて……」
嬉しいわと微笑まれる。
その笑みはどこか、麻子叔母さまを彷彿とする。
だからだろうか。
お義母さまには懐かしさも感じるんだよね。
母さんが生きてたらこんな感じだったのかな
「薫さんと隼斗が結婚するってことは律と義理とはいえ兄弟になるってことだよな」
あっ、お義兄さま嬉しそう。
兄さんもお義兄さまと兄弟になるって聞いたら喜びそうだなぁ。
「兄も喜ぶと思います」
にこりと微笑むと隼斗さんに顔をしかめられた。
どうしたの?
「はぁ〜、俺嫉妬深いかも。薫さんのせいだからね?」
ほえ?だんだん隼斗さんの言葉を理解して顔が赤くなってしまった。
もう、隼斗さん!ご家族の前でなんてこと言うの!?
恥ずかしくて、お義母さま達のことを見れないよ~!
「隼斗、薫さんをあんまりからかうんじゃないよ?それに、俺は一生を捧げるって覚悟を決めた婚約者がいるからね。薫さんと結ばれることはないよ!」
お義兄さま、一途なんですね~
あと、何で慌ててらっしゃるんですか?
「隼斗が嫉妬するなんて……あの女性嫌いが成長したわねぇ」
お義母さま、気恥ずかしいです!
「ああ、確かに俺の若い頃も似たようたものだったな」
お義父さま、ぜひその話が聞きたいです!
あと納得してないで、お義母さまの視線が生暖かいのを助けてください!
「それで式はいつにしますか?」
一応、ご家族がいるので敬語ですよ。
「色々な人を呼ばなきゃいけないものね。
招待客や日時についてはお父さんと正晴さんが相談して決めるから、気にしなくていいわ。
あとは、やはりドレスよね!」
お義母さまノリノリですね!
でも、私あまりそういうのに詳しくないんですよ。
「だから、ドレスの採寸をしましょう!
いつがいいかしら?」
おおう。大分強引だけど、母親がいない私にとってはお義母さまが主導でやってくれるのなら嬉しいわ。
「母さん、薫さんが困っているだろう?」
隼斗さんが助け舟を出してくれた。ありがとう。
「いえいえ。私は母親がいないので、こうやってお義母さまとドレスについて相談できるのが嬉しいんですよ」
「ごめんなさいね。
私には息子しかいないものだから、はしゃいでしまって。
でも、薫ちゃんが喜んでくれるなら私は嬉しいわ。郁子さんも喜んでいるでしょう」
お義母さま、ありがとうございます。
今度は、私の家で結婚の挨拶をする。
「娘さんを僕にください」
ベタで少し恥ずかしい。
鏡で見なくても、自分の顔が火照っているのが分かる。
「ああ。娘をよろしく」
父さん、了承してくれてありがとう。
「隼斗、こんなお転婆な妹だがよろしくな」
兄さん、『お転婆』は余計です。
でも、ずっと心配してくれて本当にありがとう。
「はい。薫さんは必ず幸せにします」
まだ結婚もしてないけど、彼のその言葉だけで目が潤んでしまう。
本当にあなたと出会えて良かった。
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side正晴(薫の父)
娘と隼斗くんの結婚が決まり、隼斗くんの父親であり私の古い友人でもある永森市成と会った。
結婚式の招待客や日時を決めるためだ。
その仕事が一段落し、市成と雑談を交わした。
「いや〜、俺らの子供達が結婚するなんて。道理で俺達はかなり年をとったわけだな」
その言葉に市成が苦笑した。
「そういうところ本当に変わんないよな。
普通は年取ったことより、隼斗と薫さんが結婚したことの方がしみじみとするものだろう?」
そうか?
「隼斗くんが中学生の頃に女性に襲われただろう?未遂で済んだのは薫のおかげだが、その時に隼斗くんは薫に恋したんだろうな~とは察していたよ」
隼斗くんが女性に襲われて女性嫌いになったものの薫だけは普通に接していたのは幼い頃の初恋を成就させたからだろうな。
そして、娘の鈍感さに苦労しているであろう未来の娘婿には申し訳無さしかない。
あの鈍感さは誰に似たのだろうとは思うが、考えてみれば妻である郁子もかなり鈍感だったことを思い出した。
「えっ、あの時からの恋なのか!?」
おい市成、息子の顔をちゃんと見てみろよ。
隼斗くんの顔は恋する男のそれだったぞ。
「へー、ってことは多分それが隼斗の初恋だと思う。さすがは俺の息子。
好きになった人は絶対に逃さないのは血筋だな」
あーお前もだもんな。納得し、遠いところを見てしまったがしょうがないだろう。
市成の奥さんである祥子さんは学生時代に市成に囲い込まれ、そのまま卒業と共に結婚したのだ。
俺は市成と祥子さんの同級生だった。
『なんで私にばっかり構うの?』
『は?好きな奴逃がすわけないだろ』
祥子さんを逃さないために悪巧みしている様子は軽くヤンデレが入っており、その時の市成の顔を見たときは『絶対にこいつは敵にしない』と思ったものだ。
確かに、隼斗くんは市成に似てるな…
顔だけなら祥子さんに似てるのだが、性格は市成そっくりだろう。
市成にそっくりな男に囲い込まれた我が娘を思い浮かべ、苦笑をこぼすしかなかった。