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1話

初めての連載ものですので、どうぞ温かく見守っていただければ幸いです。

   プロローグ

「はじめまして、夕崎薫と申します。どうぞよろしくお願いいたします」


三つ指を揃えて礼をする彼女の姿に見惚れてしまう。

彼女の一挙一動に目が離せない。


先ほど見た彼女の優しさをたぶん俺は一生忘れることはないだろう。

その優しさ、そして勇敢さはあの時と全く変わらない。


「はじめまして、永森隼斗です。よろしく」


やっと彼女を手にいれることができる。

その思いで俺は胸がいっぱいになった。


 ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣ ✣


   side薫


今日はなんとお見合いの日。

こんなことのために病院を休みたくないのだが。


そんなことを言うと、父に『だからお前はワーカーホリックなんだ』と言われる。  

いや医師にとって、すぐに病院を休む人って駄目でしょ。


場所は老舗の料亭。

うん父さんの会社、夕崎商事は大企業ですもんね。

この料亭にとって父さんは太客、つまりお得意様なんでしょうね。


だからこんないきなりでも予約を取れたんだ。

父さん、変なところで権力使いすぎ。

いや、使ったという認識はないのか。


「うぅっ」 


あれ?どこかでうめき声が聞こえる。

うん、医師としてこれは見過ごせないわ。 


「私は医師です。具合が悪いんですか?」


うめき声をあげていたのは、ご年配の男性だった。


「腹痛が酷くて」


「なるほど。触りますね」


そうこうしているうちに救急車が来た。

心配なので一応付き添うことに。 



「本当にありがとうございました」


ご家族からもお礼を言われてしまった。


「いえいえ。どうぞお大事に」



お見合いのことを忘れて時間に遅れてしまった。

すいません、早く戻ろう。



「それで、時間を守ることが社会人にとって当たり前だということは分かりましたか?」 


「えっ、ええ。もちろん。」


何なのこの人!?


確かに悪いとは思っているよ、時間守らなかったからね?


でも、具合の悪い人に付き添っていたのは悪いことじゃないはずだよ?


それに初対面の、しかも見合い相手に説教する人なんて聞いたことないよ!


「あの、一応私は医師で料亭内で具合の悪い方を見つけ、病院まで付き添っていたのですけれど」


「ええ知っていますよ、ここの仲居に聞きましたから。でも、その場合は連絡をするべきです」


「はい、すいません」


えっ、知ってたの?驚きである。


「まぁ、いいでしょう。では、お見合いを始めましょうか」


えっ、今から?

でも、私のせいだから文句が言えない!


「はじめまして、夕崎薫と申します。どうぞよろしくお願いいたします」


三つ指を揃えて礼をする。

これでも私はお嬢様なのでね。

マナー全般を叩き込まれましたよ、それはもう。


「はじめまして、永森隼斗です。よろしく」


にこりと微笑んだ彼は夕崎商事ほどではないが大きな会社の社長さんで、しかも実家は代々国会議員を務める名家らしい。


うん、用意周到に相手を追い詰めるあたり父さんによく似ている。


社長ってどこもそんなものかな?

(※そんなことありません)



お見合いが終わった。

どうせお付き合いはないだろうな、あんなに怒られたし。


「では薫さん、次はいつお会いできますか?」


えっ?どうして…


「お付き合いは、無しでは?」


「なぜ?そんなこと一言も言ってませんよ」


それはそうだけど……なんで?


「もともとあなたに興味があったんです。

あなたのお兄さんは私の兄の友人ですし、私の尊敬する先輩ですから」


へっ?兄さんの知り合い?

そんな人、いたかな?


「永森という名字に聞き覚えは?私も私の兄も高校時代にサッカー部でしてね」 


永森さん?

待って、もしかして……


「永森、ゆうとさん?」


「やはり知っていましたか。永森悠斗は私の兄です」


「そうだったんですか。悠斗さんのことは兄の話によく出てきていましたから存じております」


なんと! 

よく兄さんの話に出てきていた『ゆうとさん』の弟さんだとは!

その弟さんが私の見合い相手とは、世間は狭いものである。

 

「律先輩の妹さんということでお見合いを了承したんです。それに今更お付き合いはなしにということはできませんよ」


なっ、なんで!?


「うちの父も夕崎社長も前々から自分の子供達を結婚させようとしていたんです。

私が女性嫌いということで今まで回避できていましたが、その私が結婚に前向きになったので二人ともノリノリなんですよ。

結婚式についてまでもあれこれ相談していましたから」


父さん!私聞いてませんよ、そんなこと!

っていうか、


「隼斗さんって女性嫌いなんですか?

なのになんで私と見合いをしようと思ったんですか?」


「先程も言った通りあなたは律先輩の妹さんですから、他の女性よりも信用できるんです」


はっ!?それだけの理由で? 


「あとは、もうこの年ですから身を固めなくてはいけないんです。

そう思ったときに律先輩と会いまして。 『うちの妹なら』と太鼓判をおしてくださったんです」


兄さん?隼斗さんに変なこと言ってないよね!?


「『薫は医師で自立しているし、お前の、嫌いな女のタイプの正反対を行くような奴だ。

それに、男勝りで、彼女というより友達のように接することができるはずだから』と」


兄さん!男勝りは余計です!!

っていうか、


「嫌いな女性のタイプ??」


そんなの、あるものなのかな?


「香水を撒き散らす方やけばけばしい服装や化粧をする方は無理です。

また、夫の稼ぎに頼りっぱなしでありながら我が物顔で振る舞う人だったり、夫に従順すぎてなにも意見を言えない人だったりするのは勘弁していただきたい」


あー!だから兄さんは私を推薦したのね。

私は医師で一般男性と同等かそれ以上に稼いでいるし、服装や化粧に興味はない。


それに自分の意見はちゃんと言うほうだ。

父さんや兄さんから『男勝り』と言われるほどに。


「あなたは見合い前にも関わらず、医師として仕事を全うしてらっしゃいました。

それで責任感とお優しさに溢れている方だと思い、あなたならば結婚相手としても素晴らしい方だと感じました」


これは褒められている、のかな?


「それは、ありがとうございます。それで次にお会いする日ですが」


「はい。私はいつでも構いませんよ?」 


あれ、社長って忙しくなかったっけ?

私は父親を想像したが、いつも忙しく働き回っているはずだが。


「では次は来週の日曜日が空いてますが、構いませんか?」


「ええ、構いません。では来週の日曜日にまた会いましょう」


父さんと兄さんにこのお見合いのことちゃんと問いただそう!


そう思った私だった。




「父さん!?お見合いにノリノリで式の日時まで決めようとしてたって本当!?

結婚はまだ興味ないって言ってるでしょう!」


私の許可もなくそんな横暴を貫いた父さんに私はそうとう怒ってるんですからね!?


「薫、口が悪いぞ?

しかも、隼斗君はとても素晴らしい男性だ、それは保証する。いいか、薫? 

お前を任せられる男性の中で医師を続けても良いと言ってくれた奴は彼一人だけだぞ?」


そうなの?聞いていないんだけど…

っていうか、なんでうちの男共は私になにも知らせずになんでも押し通そうとするの!?


「まぁまぁ、父さんも薫も落ち着いて」


兄さんが仲裁してくる。


「兄さんも兄さんよ!隼斗さんに私のこと男勝りとか言って推薦したのは兄さんなんでしょう!?

それに、年頃の女の子に『男勝り』とか失礼よ!」


「うっ、それはまぁ。っていうか『隼斗さん』?」


「あっ」


見合いで強制的にそう呼ばされていたせいか癖がついてしまった。もう!

父さんがニヤニヤとした笑みで


「そうか、そんなに仲良くなったのか。さすがは隼斗君だな」


と言った。

なんかムカつく!!


私はぷりぷり怒りながら自室に戻った。



登場人物

夕崎薫:夕崎商事の社長令嬢。

    ワーカーホリックぎみの医師。

    男勝りなだが、困っている人を放っ

    ておけない優しい性格の善人。


永森隼斗:代々国会議員を務める名家の次男で社 

     長。幼い頃に女性に迫られたことが原

     因で女性嫌いとなった。

     薫の兄である律を先輩と慕っている。


  

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