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妖精と王子様のへんてこチャチャチャ(へんてこワルツ4)  作者: 魚野れん
大騒ぎの後始末

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12

「私――」

「ルッカとやらは、今どのあたりにいるのかな……?」

「え?」

「起爆用の魔法具をお前達に預けるわけがないだろう。あれはダミーだ。本物はこっち」


 カールスがにやりと笑い、ブレスレットを見せる。ちゃり、と小さな金属音をさせて見せられたそれには、耳飾りに使われているものにそっくりな石が使われていた。


「あっ!!!」


 エルフリートは指をさし、大げさなくらいに驚いてみせた。が、内心でひやりとしていた。タイミングがずれたらバレちゃう!


「ロス……っ!」


 ロスヴィータはエルフリートの声かけですぐに立ち上がる。部屋を出る彼女に続いてアイマルの姿をしているルッソが出て行った。


『フリーデ、押したら知らせてくれ』

「……」


 魔法具越しにロスヴィータの声が脳内に伝わってきた。ロスヴィータはさっきの声かけですべてを察してくれたらしい。エルフリートはほっとしつつ、時間稼ぎをする事にした。


「良いのか? ロスヴィータ団長は魔法が使えないんだろう? 彼女に行かせても、巻き込まれるだけだと思うが」

「アイマルが一緒に行ってくれたから大丈夫だもん。それより、爆発させないって選択肢はないの?」

「どうだろうか……」


 カールスはエルフリートたちのうろたえる姿を楽しんでいるようだ。悪趣味である。だけど、この悪趣味がきっと彼の仇になる。


「てめぇ……」


 ブライスが悔しそうに睨めば、ますます楽しそうに顔を歪める。ブライス、追撃ありがとう! エルフリートは心の中で感謝し、カールスに集中した。


「爆発させなくても良いが、条件付きだ」

「条件?」

「私とアルフレッド様の解放」


 この展開なら、そうくると思ってた。エルフリートはすぐに首を横に振ってみせる。


「二人を逃がしたら、爆発どころじゃない犠牲者が出る。できないよ」

「なら、爆発させて、君たちを倒して、自分で救いにいくさ」


 エルフリートはキッとカールスを睨んだ。彼はそんなエルフリートを嫌な笑みで迎えてくる。


「俺とフリーデの両方を相手取って、勝てるとでも?」

「まあね。予定通り自然な形で逮捕されているのがその証拠かな」

「全力ではなかったと?」


 ブライスがデスクへどんっと片手をついた。威嚇のつもりだと思うけど、カールスを喜ばせるだけだった。もっとやっちゃえ! 心の中でエールを送ると、誤送信されたらしくロスヴィータから『何かあったか?』と通信が届く。


『あ、ごめん。何でもない』

『そうか。こちらはルッカと合流できた。いつでも良いぞ』


 急いで移動してくれたのだろう。少し弾んだ声で、ロスヴィータからの返事がくる。


『押したらすぐに伝えるね』

『頼む』


 エルフリートとロスヴィータがそんなやりとりをしている間も、ブライスとカールスの会話は続いている。


「全力で動いて負けていたら、何の計画もうまくいかなくなってしまうではないか。ふざけているのかい?」

「単なる疑問じゃねぇか。何をそんなとげとげする必要がある。もしかして、図星か?」


 刺激しすぎはまずいと思う。エルフリートはこっそりとそう思うものの、それを口にして二人を止めようとはしなかった。どんな手段を用いても、カールスに爆発を起こさせたと勘違いさせ、アルフレッドへの行動を起こさせなければならないのだ。

 このまま苛つかせ、勢いで押させる事ができるのならば、その方が良い。ブライスはカールスに反撃を始めていた。


「おいおい、ここまできて無計画だとか言わないでくれよ?」


 すごい煽るなぁ。エルフリートは感心してしまう。


「ここまでやってきて、突然無計画になるわけないだろう」


 カールスがむっとしている。眉間にしわなんかできちゃって、どうしたんだろう。エルフリートはおろおろとした風を装いつつ、二人の行く末を見守った。


「だよなぁ。じゃ、無謀な計画をたてたわけだ」

「無謀じゃない」


 子供の喧嘩かな。言葉の応酬のレベルがだんだん下がっていく。


「ならやってみろよ」

「やっていいなら、やってやる」

「あ、ちょっと!」


 いよいよだ。エルフリートは制止の声を上げた。カールスが一瞬、エルフリートの方を向いてにやりと笑む。それに目を見開いてみせれば、彼は魔法具に魔力を込めた。

『お願い!』

 想定外の爆発音が鳴り響く。衝撃がない割にうるさくて不自然だったかも。エルフリートは爆発音にびくりと肩を震わせた。


「本当にやりやがったなっ!?」


 冗談みたいな発言をしたブライスに向け、カールスが飛びかかる。カールスは気付いていないみたいだ。これ幸いと、エルフリートはブライスを助けるべく二人のもみ合いに参加する。

 乱戦って、難しいよね。エルフリートはブライスの拳を避けながらジャールスに足払いをしかける。もちろん、カールスに勝ってもらわないといけないから、微妙にタイミングをずらしている。


 足払いを失敗したエルフリートに、カールスの蹴りが決まった。予定通り、衝撃を吸収するついでに派手に吹き飛ばされる。吹き飛んだ先にはデスク。

 デスクを乗り超えるようにしてひっくり返ったエルフリートは、とりあえず気絶するふりをした。あとはブライス、良い感じにやられてねっ! エルフリートは目を閉じ、彼らの戦いが終わるのを待った。

2025.1.27 一部加筆修正

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