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妖精と王子様のへんてこチャチャチャ(へんてこワルツ4)  作者: 魚野れん
大騒ぎの後始末

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 正直に聞いたところで、カールスは素直に答えてはくれないだろう。そこは全員が考えているところだった。そこで考えたのは、すこしばかり卑怯な手だった。尋問というよりは、もはや謀略といったところだ。

 まず、アイマルをアルフレッドと入れ替える。暗殺者の類が来ても対応できるように、である。アイマルにカールスがしていたような魔法による変装をしてもらい、監視員が入れ替わるタイミングで入れ替える。

 本物のアルフレッドは、眠らせたまますぐ隣の牢に見えないようにして置いておく。


 カールスの尋問へは、ロッソにアイマルのふりをしてもらう事にして、人数のバランスをとる。ロッソには黙っているようにブライスが強く言い聞かせていた。

 まあ、しゃべるとばれちゃうもんね。エルフリートはロッソのフォローはせず、姿だけを変えた。


「無表情でいろよ。そう、そんな感じだ。口を開くな。あくびも駄目だ」

「大丈夫だって」

「黙れ」


 なんか、ロッソ扮するアイマルへの当たりが強いんだけど、大丈夫かな。エルフリートは苦笑しながらロッソの背中をぽんっと撫でた。


「あとは……」

「偽の爆発騒ぎだな」


 今回、カールスに自白させるのではなく、行動させてしまおうという作戦である。つまり、現行犯逮捕って事だね。


「ロッソ、爆発騒ぎが起きたら無言でさっさとどっか行ってくれ」

「ひでぇ……けど、俺じゃ太刀打ちできないだろうから、ありがたくそうさせてもらう」


 ロッソが苦笑している背後から、ルッカが顔を見せた。


「偽物を用意したわ。一応爆発を模した音と煙が出るようにしてある。さすがに幻覚は仕込めなかったわ」

「じゅうぶん! どうせ、カールスはそっちにいかないと思うから」


 魔法具封じの小箱と同じ意匠のそれをルッカが振れば、かたかたと中身が揺れる音がした。

 あとは、ルッカがカールスの尋問中に爆発騒ぎを起こすだけだ。彼女には、爆発騒ぎの避難誘導などをやってもらう。周囲を巻き込む騒ぎになるだろうが、()()総長には報告済みである。後で訓練だったと言ってもらう手はずになっている。


「私、人間相手の罠を考える数はまだ少ないけど、ブライスも一緒に考えてくれたし……たぶん大丈夫。がんばろうね」


 エルフリートが各の顔を見回しながら言えば、全員が頷いて応えるのだった。




「カールス、待たせたな」

「戻ってこないかと思ったよ」


 軽口をたたく彼に、ロスヴィータがにこやかに対峙する。エルフリートはその様子をすぐ隣で見ていた。


「ちょっと、な」

「自白する気になったりは……してなさそうね」


 エルフリートの言葉に、カールスがにやりと笑む。どうせ当たりはしないとたかをくくっているに違いない。エルフリートは今にみてろ、と心の中でつぶやいた。


「ルッカに見てもらったんだけど、ちょっと分からなくて。あとでもう一度ここに届けさせるから、今度こそ話をしてほしいの」

「それで素直に話をするとでもお思いか」

「まあ、望みは薄いと思ってるけどぉ」


 口を尖らせたエルフリートを、カールスは楽しそうに見やる。そのまま引っかかってくれれば良いんだけど。エルフリートは釣りをしている気分だ。

 引っかかるまで、擬態する。別人のふりをするわけじゃないから、難易度は低い。ぷく、と頬を膨らませてカールスを見た。


「お嬢さん、顔に全部出ているよ。そういう顔をしたって駄目だ。私は適当な事を言ってやり過ごすさ」

「適当な事を言われたら、消去法していくって手もあるもん」

「ははは、面白い事を言うな。消す項目が多すぎてわけが分からなくなるんじゃないか?」


 カールスの機嫌は上々だ。ふんすっと鼻息を出して、エルフリートは気合いを入れた風を装う。


「はい、一つ目の質問! ウォーミングアップだね。今回の件とアルフレッドの件、繋がりはあるの?」

「どうかな。あるかもしれないし、ないかもしれない。――ってか、私が“はい”か“いいえ”以外で答えると思っていなかったのか? これじゃ、消去法もできないな」

「うぅー!」


 ムキになってみせるエルフリートをにやにやと見つめていたカールスは、ふっと表情を消した。


「で、何の時間稼ぎをしている?」

「なに……」

「このふざけた茶番の目的さ」


 ――かかった。

 エルフリートは動揺を誤魔化すかのように、頬を引き攣らせながらへらりと笑う。


「んふふ、何の話か分かんないなぁー」

「無理があるだろう。周囲の表情とお嬢さんの表情、全然連動してないぞ。一人だけ百面相してる。騙したいなら、半数近くは同じ表情の動きをさせるんだな」

「……冷静なふりをしてるだけかもしれないもん」


 エルフリートは往生際の悪さをカールスに印象づける。

 この状態こそが、エルフリート達の望む状態だと気が付かれないように、慎重にやらなければならない。

 こくりと唾を飲み込む姿に、カールスが口元を歪めた。エルフリートは、小さく視線をさ迷わせ、カールスに固定する。まばたきの回数を少しだけ増やす。


「立場が逆転したみたいに見えるが……気のせいかな」


 エルフリートを、所詮小娘だと思っている今しか使えない手だ。最大限にその油断を活用させてもらう。

2025.1.26 一部加筆修正

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