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妖精と王子様のへんてこチャチャチャ(へんてこワルツ4)  作者: 魚野れん
大騒ぎの後始末

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10

 シップリーの話と耳飾りから読みとれる情報を組み合わせると、何となく形が浮き上がってくる。それはとても恐ろしい謀略だった。


「シップリーがカールスに自分の姿をしぶしぶ貸す事になる時には、もうカールスの筋書きに入っていたんだよね」

「そうだな。だから、カールスがシップリーとの入れ替えを提案する時には既にシップリーの大けがも盛り込まれていたかもな」

「大けがしてもしなくても、入れ替わりさえできれば良かったのかもね」

「じゅうぶんあり得るな」


 エルフリートとブライスの会話にロスヴィータが頷いた。


「シップリーと入れ替わり、わざとばれて捕まる。捕まれば、同じ場所に本物のシップリーが現れるはず。そうなれば、魔法具が発動してドカン。でも、そのままだと自分も巻き込まれちゃうから……一工夫した」

「それが、あの余分な耳飾りか!」


 ロスヴィータの感心する声に、今度はエルフリートが頷いた。


「シップリーの耳飾りが怪しいと思わせる為、そして最終的に自分が身に着けている耳飾りを回収してもらう為に、撒き餌したんじゃないかな」


 用意周到で、回りくどいが確実な方法だと思った。

 シップリーが偽物だと疑われるようになるまでの時間も短縮できる。ただし、追っ手であるエルフリートたちの嗅覚がカールスの想定するレベルに達していなければ長期戦になっただろうが。

 その点も考えると、カールスはエルフリートたちの能力をかなり性格に把握している可能性が高い。これはかなり恐ろしい事である。


「耳飾りがなければ、シップリーの入れ替えの可能性について深く考えなかったと思うし。耳飾りが爆発する場所はどこを想定していたんだろう。ここからルッカのいる場所の間だっていうのは分かるんだけど」


 エルフリートが眉間にしわを寄せていると、今までずっと黙っていたアイマルが口を開いた。


「自分の身の安全を図っているなら、爆発の範囲外になる場所からルッカのいる場所まで、範囲が絞れるだろう。本物のシップリーから耳飾りを回収する前に、似たような話をしていたと思ったが」

「確かに」

「すっかり忘れてたぜ。年かな……」


 アイマルに軌道修正されたエルフリートたちは、溜息を吐いた。年かな、と言うほど高齢でもないくせに、というエルフリートの溜息に、しくったなーというブライスの溜息、そこにのんびりしているなというロスヴィータの溜息が加わって、混沌としている。


「その範囲だと、アルフレッドを助けるには微妙な位置だが」

「何か手があんのか? 自分は捕まってて動けない訳だしな」

「……カールスの読みが、どこまで続くのか分からないのが怖いね」


 エルフリートたちが、魔法具を封じる小箱を用意する事まで予想の内だったら。これらすべてが陽動で、他の場所で何かが動いていたら。そう考えるだけで恐ろしい。

 エルフリートは狩りをする為に様々な獲物(生き物)の行動を読み、罠を仕掛ける。だが、彼ほどではない。カールスは相手の行動を何通りも考え、最終的に同じ結果へと集約するように仕組んでいるように感じられた。

 何をしても彼の思惑通りなのではないか、そんな疑心暗鬼に陥りそうだ。


「もし、カールスの目的がアルフレッドの救出だった場合、そこで爆発させる意味は何だ?」


 ロスヴィータの疑問に、エルフリートは考えを巡らせた。だが、ブライスの方が早かった。


「爆発にルッカが巻き込まれるかどうかで変わるが、もしルッカが巻き込まれるとしたら、全員がここから去るのを想定した陽動だな。ルッカが巻き込まれない位置の爆発なら、半数がここに残るだろうから、別働隊を用意してアルフレッドの救出に向かうだろう」


 エルフリートもブライスとほぼ同意見だ。

 カールスが実力を出し切っていない事を考えると、爆発と自分が陽動として動くつもりかもしれないと思っていた。


「――アルフレッドの殺害が目的だったら?」

「私なら、陽動を起こす時点で終わらせちゃってるかな……」


 ぽろりとエルフリートがこぼした言葉に、全員の視線が集中した。


「殺すだけなら、アルフレッドが拘留されている場所の監視を買収してしまえば簡単にできるじゃない? だから、逃げる時の為に陽動を起こすなって」

「それは現実的ではないな」


 アイマルが口を挟む。彼の意見はもっともだ。なぜなら、陽動が起きるタイミングを操作できないからである。


「だよねぇ。自分の手から離れた魔法具が、いつ動作するかなんて分からないもん」

「魔法具に詳しくないから、話半分に聞いてくれて構わないが……もし、()()が分かるとしたら、できるのか?」


 ロスヴィータが言いたい事が分かった。魔法具の発動タイミングを操れるのならば、想定していたタイミングでカールスの手駒がアルフレッドをどうこうできるのならば、どうだろうか。


「可能だと思うよ。ただ、それにはあと一つ魔法具が必要だし、小箱から魔法具を全部取り出してないとできないけど」

「いずれにしろ現実的ではない、という事か」

「そういう事になるかな」


 魔法具を回収して、カールスを捕らえて安全になったはずなのに、ぜんぜん安心できないのはどうしてだろうか。エルフリートは不安な気持ちをそのままに、カールスへの再尋問をどうするべきか、具体的な打ち合わせに移るのだった。

2025.1.25 一部加筆修正

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