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妖精と王子様のへんてこチャチャチャ(へんてこワルツ4)  作者: 魚野れん
大騒ぎの後始末

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9

 残りを確認したエルフリートとルッカは、すべての耳飾りを小箱へ封じて一息吐いた。一時的とはいえ、無力化して安全な状態になっていると、安心感が違う。エルフリートは小箱をひと撫でして手を放した。


「……この威力は、後日検証しますか?」

「検証するかもだけど、そんな時間あるのかなぁ」


 騎士学校の発表会も迫ってきているし、カールスからも話を聞かなければならない。協力してやっているとはいえ、仕事量は多い。

 エルフリートだけではなく、全員が忙しいのだ。


「とりあえず、どのくらいの距離で魔法具が発動するのか、爆発の種類は何なのか、そのあたりを調べてくれる?」

「分かりました」


 エルフリートの依頼を二言返事で承諾したルッカは、指先で物騒な小箱たちをつつく。


「魔法具と関係ない質問して良い?」

「何なりと」

「ジュードはどうしたの?」

「はっ!?」


 がたっと椅子を蹴る勢いで立ち上がった彼女はよろけた。すぐに抱き留めたエルフリートはルッカを座らせる。


「そんなに驚く事かなぁ? 彼は無言だけど、いないと気になるんだもん」


 エルフリートが動揺するルッカに驚きながらそう答えれば、彼女は居心地悪そうに視線を外した。


「喧嘩でもしたの?」

「そういうわけじゃ、ないです」


 これはテンポの悪い返事。


「じゃあ、告白された?」

「それはあり得ません」


 こっちはテンポが良い返事。

 エルフリートはルッカの返事で、何らかの気まずい状況があった事を察した。だが、それは恋愛絡みではない。二人がぶつかりそうな問題と言えば、そんなに多くはない。


「じゃあ、義手の方針か、生活の方針でぶつかったんだね」

「……まあ、そんなところです」


 唇を歪めてむすっとしたあたり、両方のようだ。


「少し揉めたくらいで付き添いをやめるとは思えないけど。拗れそうだったら言ってね。私で良ければいくらでも聞くよぉ」


 エルフリートは、ジュードとルッカの関係が始まったきっかけがきっかけなだけに、できれば当事者同士だけでしっかりと話し合いをして和解すべきであると考えていた。そして、二人とも冷静な人間だから話し合いをすれば解決するはずだ、とも。

 だが、閉鎖的な関係は一度拗れてしまえば戻りにくかったりもする。そんな時には、第三者の手を借りるべきである。エルフリートがその存在になれるかどうかは別として、話を聞いてくれる相手がいるのだと思ってもらう事に価値がある。


「二人が協力し合えば、多くの騎士の助けになる。希望になる。私は二人と、また騎士としてルッカたちと一緒に活動したいから、なんだって協力するからね」

「ありがとうございます。私も……また、みなさんとがんばりたいです」


 ルッカとエルフリートは微笑み合った。




 ルッカとジュードの関係は気になるが、エルフリートにはやらなければならない事がある。耳飾りの件についてロスヴィータたちに報告する事である。最初の目的を果たさなければ。

 後ろ髪を引かれる思いで戻れば、全員が暗い顔をしていた。重い空気、と言えば良いのだろうか。少なくとも、エルフリートの目には楽しそうには見えなかった。


「えっと、何かあった?」

「シップリーの耳飾りが魔法具とすり替えられていただろう事と、カールスが思惑があって捕まったんだろうという事が推察できただけだよ」

「なんだ、そんな事かぁ」


 エルフリートの考えも及ばない何かが起きたのかと緊張していたエルフリートは胸を撫で下ろす。


「じゅうぶん問題だろう。それより、何か分かったのか?」

「うん」

 ロスヴィータに椅子へ座るよう促されたエルフリートは、座って一息吐くとすぐに話をした。


「ロスたちが想像した通り、シップリーの耳飾りが魔法具だったよ。それで、三種類が揃うとどっかーん!」

「……そうか」

「今は反応しないように封じてるから大丈夫。これからルッカに詳しく確認してもらうところ。爆発がどんな種類のものなのかとか、魔法具が反応する距離とか、そういうのの調査をお願いしたよ」

「ありがとう」


 ロスヴィータたちが考え込むような表情を見ていると、他になにか他に報告すべき事があった気がしてくる。だが、エルフリートがそんな気がするだけで、報告漏れは何もなかった。

 これ以上、何も報告する事ないなぁ……。

 エルフリートがぐるぐると思考を繰り返していると、ブライスが口を開いた。


「フリーデ、俺たちの話も簡単に説明するぜ」

「あ、うん。お願い」


 エルフリートが頷くと、ざっくりとまとめてくれた。

 カールスが昔からシップリーたちを引き込むべく画策していた事、シップリーがカールスの組み立てた話から抜けようとしていた事、カールスが無理やり怪我をさせる事でシップリーの身代わりをし始めた事。

 エルフリートは、カールスのその執念深さに彼の主であるアルフレッドの影を見るようだった。同時に、アルフレッドの短絡さが不思議に思えてくる。

 アルフレッドの師匠がカールスなら、どうしてこんなに出来の差があるんだろう? もう少し裏がありそうで、エルフリートは気味の悪さを覚えるのだった。

2025.1.25 一部加筆修正

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