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妖精と王子様のへんてこチャチャチャ(へんてこワルツ4)  作者: 魚野れん
理解できない結末

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13

 魔法の出力を間違えてしまったという体の光らせ方を研究し「あ、やりすぎちゃったー」という感じで話を進めていく事になった二人は、作戦決行日を翌日にすると決めた。

 エルフリートは少し緊張しているようだが、本番に強い彼の事である。大丈夫だろうとロスヴィータは思っていた。

 ――そして本番。


「魔法具はねぇ、こうして光を浴びせると綺麗に式が浮かび上がるんだよぉー」

「あら、本当ね。ところでお二人の耳飾りも魔法具なの?」

「うん。そうなの」


 シップリーの耳飾りは光らなかった。いったいどういう事だろうか。ロスヴィータは内心焦るものの、顔には出さなかった。


「二人は魔法具持ってないんだね。ご家族に持たされたりしないの? 今は護身用とか、そういうのもあると思うんだけど」


 さすが本番に強い。エルフリートは楽しそうにカトレアとシップリーに聞き始める。


「私は、特にありませんわね。シップリーがいるもの」

「シップリーって魔法使えるんだ。体術だけでもなかなか強いんだもんね。すごいねぇ」

「え?」


 話の飛び方に何かを感じたカトレアが首を傾げる。

 なるほど。エルフリートの意図が透けてみえる。シップリーの耳飾りを証明するのが難しいなら、と矛先を変えたのだ。


「そうそう、カトレア嬢は知ってた? 今回襲いかかってきたあの人、体術も魔法もできるんだよ。それを一瞬で撃退したシップリーは相当強いって事になるの」

「まあ、そうだったの」


 どう反応して良いか、考えあぐねているのだろう。カトレアの反応は鈍く、歯切れも悪いようにみえる。


「シップリーの実力なら、すぐにでも騎士団に入れちゃうんじゃないかな! どこで技術を身につけたの?」

「どこって……そもそも、俺はそんなに強くないが」


 シップリーは手強そうだ。表情を変えずに瞬きしながら答える彼を見て、ロスヴィータはそう思う。体のどこかで力んだりする様子も見られない。完全な自然体を装っている。

 だが、エルフリートはそんな彼を動揺させる手を持っていた。


「そんな事言っちゃってぇー」

「っ!」

「フリーデ」

「シップリー!」


 きぃんと金属音が響いた。


「……やっぱり体術だけじゃなくて、魔法も一流じゃないの」


 エルフリートはシップリーに襲いかかっていた。ルッカに借りた魔法具から氷の矛を生成して投げたのだ。その氷の矛はシップリーが作っていた結界を相殺する。そこで応酬は終わらなかった。それだけでは飽きたらず、彼はシップリーに向けて短剣を向けたである。

 が、それは簡単にシップリーの手で退けられた。金属音はその音である。


「私、強い人好き。ねえ、本当に、どこで身につけたの?」


 シップリーを襲い続けるエルフリートの目はきらきらと輝いていた。シップリーの実力に対して、不信感を持っている感じではない。純粋に強い者への好奇心だけが彼を支配している。

 突然の事にも関わらず、シップリーは冷静にエルフリートの攻撃をかわしていた。その間にロスヴィータはカトレアの方へ近づき声をかける。


「すまない、うちのフリーデが」

「え、ええ。驚いたけれど、別によろしくてよ」


 つん、と澄まし顔で答えるカトレアであったが、緊張しているようだった。目元に力が入りすぎてひきつっている。シップリーが怪我をしないか心配するものなのか、シップリーの本性がばれてしまうのを恐れているものなのか、現状では判断がつかない。

 ロスヴィータは努めてのんびりとした口調でカトレアに聞く。


「カトレアは、シップリーがこんなに動ける事を隠していたのだな。あなた方の護衛も兼ねているつもりだったが、必要はなかったらしい」

「まあ、そうでしたの?」

「だが、何か心配事がありそうだ。大丈夫かい?」


 時折金属のぶつかり合う音が響く。よくもこの室内で大立ち回りができるものだ。ロスヴィータは二人の動きに感心してしまう。カトレアはちらちらとロスヴィータを見てくるが、やはりシップリーに視線が戻る。

 会話をしている相手より優先して見ていたい何かがあるとでもいうのか。


「シップリーに何かあるのか?」

「いいえ? なんにも」


 絶対に嘘だ。ロスヴィータはひざをついて読みやすくなった少女と視線を合わせた。


「ならば、今の悩みは何だい? この私だけに、教えてはくれないか?」

「あっ! カトレア嬢ずるい!!!」


 ロスヴィータ懇親の王子様風の甘い表情に気がついたエルフリートのかんしゃくじみた叫びが聞こえた。


「ちょっと、隙を見て逃げようたってだめだよシップリー。全知の神よ、彼の者を詳らかにせよ!」

「あっ」

「フリーデ……」


 エルフリートが唱えたのは、ある意味最終手段の魔法だった。もし、姿を変える魔法を使っているのであれば、いくつかの種類に分けられる。それを一度に解除できる魔法を考えてもらっていたのである。

 マロリーと何やらやりとりをしていた事だけは知っていたロスヴィータであったが、その効果のすばらしさに唖然とするのだった。

2025.1.14 一部加筆修正

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