カミラの願い
カミラは頷き、
「貴様らの目的地と私の目的地は一緒だ。貴様らには私の護衛と旅のサポートを頼みたい」
「あんたも神殿に用があるってことか?」
「そうだ。聖女を覚醒させる聖水晶が安置されているヴィルミュール神殿だが、現在は巨大な黒水晶が設置されている。邪教の者たちは人々の恐怖や嘆きの感情をその黒水晶に集めている。これが満たされた時、奴らがいう神が目覚めるという。どんな神であろうと生贄を求める神なぞ邪神だ」
「それで?」
「私は神殿に密かに侵入し黒水晶を破壊したい。これで、邪神が目覚めることが阻止されれば、少なくとも父上は母上を蘇らせるという野望を諦めざるを得なくなるだろう。せめて父上のこの野望を潰えさせたい」
エマがシエルに、
「私とレオンはカミラ王女とともに神殿へ参ります。シエルさんは国に戻ったほうがいいと思います」
「なっ! こんな状況でも諦めないのですか?」
「いいえ。私は邪教の方たちが奉ずる神に興味があるんです」
レオンもシエルに、
「理解されないことだとはわかってるが行くっきゃねーんだ」
シエルがため息をついて、
「カミラ王女。あなたは神殿への侵入は至難の業だとおっしゃいました。どう侵入するおつもりですか?」
「神殿への秘密通路を知っている。乗っ取られる前の神殿で暮らしていた神殿長から受け取った地図がこの頭の中に入っている。首都近くの洞窟の奥に秘密通路は設けられており、そこから神殿へと直接行くことができる。この通路は邪教の者たちには知られていない」
「実際、知られていないかどうかはわかりませんよね?」
「確かに奴らが知っている可能性もあるが、この洞窟を通ることがもっとも安全性が高い」
レオンが、
「シエル。お前が何を言っても俺と奥方はその神殿に行くんだ。魔物娘がいようがいまいがな」
「神に会うためですか?」
「そうだ。実際、今回の神は会わないほうがよさそうだが、俺は神に会って訊きたいことがあるんだ」
シエルが諦めたように、
「わかりました。私もお供します」
「いいのか? 長期の無断欠勤はクビになるんじゃねーか? 次の就活で不利になるぞ」
「事情を話せば理解してもらえます。そういう寛大な上司と職場なんです」
カミラが、
「貴様らは単なる冒険者ではないのか?」
レオンがエマを指さし、
「このお方は元は小国の貴族だったんだけどな、離縁されちまったし、兄に殴られるしで生活が行き詰まっちまってな。仕方なく冒険者になるしかなかったんだよ。俺とそっちの女は従僕としてついて歩いてんだよ」
レオンはそう言って、ノノを指さした。
次にシエルを指さして、
「この女は元旦那の貴族に仕える女で、オムライスにビールかけて食う女だ。時々、離縁の慰謝料を持ってくるんだが、今回はここまで持ってきたんだよ。迷子にでもなったのか成り行きでついてきやがる」
「そうか」
「オムライスにビールはかけません」
「苦労しているのだな」
カミラはエマを憐れむような目で見た。
王女のカミラをいい感じに騙せたようだ。
レオンはやや脚色したが、エマが離縁されたのも殴られたのも事実だし、あまり間違ってもいない。
町で準備を整えて、神殿へと目指すこととなった。




