ユリウス帝国へ不気味な入国
ユリウス帝国の国境検問所に行っても見張りの兵士はいない。行き交う人もいない。扉が固く閉ざされているだけで、空を飛んで門を超えるだけで魔法で簡単に侵入できた。
普通、どこの国に行っても多少の通行人はいるし、兵士は見張りの仕事をしているものなのだが。
レオンが不思議そうに、
「どうなってんだ、この国は?」
「油断は大敵です」
シエルがあたりを警戒しながらいう。
エマもあたりを見回す。
「なんだか、寂しいわね……」
「大きな国ですから、かつては人で大賑わいだったでしょう」
シエルが言って、大きな建物を指差した。
「あれはきっと宿です。今は人の気配が全くしませんが。おそらくですが、この近くに自然発生した市場があって商人たちがやり取りしていたと思います」
ノノが、
「で、どっちに行けばいいんだい?」
「神殿は首都の中にあるようなので、首都に向かいます。空を飛ぶと目立つので、ひとまず歩きましょう」
雪は積もっているが、歩けないほどではない。
歩き出した方角を見ると、遠くに連なる棒のようなものが見える。
あれはなんだろうと言いあいながら、歩いていく。
正直、ユリウス帝国は遠い場所にあるため、文化風習などよくわからないので、本当に不思議そうにその場所へと向かうだけだ。
歩いて、さらに近づくと、何かが刺さっているのがわかった。
小さいものから二メートルほどのものまで、大きさにばらつきがある。
それが、人の形をしているとわかったのはさらに近づいてから。
「かかし?」
「もうちょっと上手に作ればいいと思うんですけどねー」
エマの言葉にレオンが言った。
視力強化の魔法を使えば、どのような物なのかを確認できるが、魔力は温存したいため使っていない。
さらに、近づいてわかったのは、かかしではなくて、人間たちが刺さっていることだった。
その数は100を超える。
赤子も女も男も老人も等しく、串刺しにされ、腐敗していたり干からびている。
エマはあまりのおぞましさに口元を抑えた。
シエルが、
「このあたりの村人たちが反乱を起こしたなどで罰されたのかもしれません。それにしてもあまりにもひどい」
さらに、進むと、村人たちが串から外れ落ち、レオンたちに襲いかかってきた。
「な!」
「死霊術だな! 奥方俺の後ろにいてくださいよ!」
「も、もちろんよ!」
「風刃!」
レオンが発生させた風の刃で村人たちを切り裂くが、村人たちは起き上がり、立ち上がり、切断された足ですら勝手に動き出した。
「なんだ、こりゃぁ!」
「おそらくですが、特定のエリアに踏み込んだ場合、この死体たちが勝手に動くように魔法で設定されていたんですね」
シエルが襲いかかる死体たちに隠し矢を打ち込む。打ち込まれた矢は破片をちらしながら爆発し、周囲の死体たちにもダメージを与えるがびくともしない。
「なんと厄介な」
ノノが、
「気持ち悪いな。燃やそう。これでついでに荼毘に付してもやれるし一石二鳥だろう」
そう言って、炎の魔法を発動し、襲いかかってくる死体たちを片っ端から燃やし尽くした。
こういう時に最強なノノがいれば、一石二鳥で楽ができる。
このままイージーモードですべて終わらせることができそうだ。
炎の熱気で、レオンたちは熱さを感じて、ノノの後ろに下がる。
そして、全てが燃え尽き、あたりは雪が溶け黒い地面が広がる。ぬかるみすらできないほどに水分も蒸発しきっている。
「燃やすのが人間たちの弔いなのだろう? だとしたら、僕はきっと良いことをしたんだな」
「そ、そうね」
エマが頷いた。
多少、作法や動機が違う気がするのだが、そこまで気にしてはいられない。
一同は複雑な気分で前へと進むと、人気のない村が見えてきた。
村へと入ると、村人たちは誰一人としていなかった。犬も猫すらいない。魔物に荒らされた形跡もない。
気味が悪いし、気持ちも悪いが、各家のパウントリーなどを見て、乾燥豆など食料を調達した。
このような状態がいつから続くのかわからないが、首都への旅路は串刺しを焼却、村を確認し誰もいないことをさらに確認。
家を漁って、食料を調達というルーティンが少し大きな街へと辿り着くまで続いた。




