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一縷の望み

 困り顔のかのはすぐにほほえみを浮かべ、立ち上がった。


「どこ行くんだ」

「散歩」

「散歩って。俺の話聞いてたかよ。俺は帰りたいんだよ」


 仕事もあるし。

 エマの領地は村一つとはいえ、日々、仕事が発生する。レオンは屋敷の中の雑務以外にも領地の財政やら揉め事を管理監督運営もしている。そうはいっても、人口も少なく、収穫期でもないので、今の仕事と言ったら、通行料を払いたくないとゴネる旅人をボコボコにするくらいだ。


 かのは、


「かの。散歩したい」


 そう言って、家の外に出た。

 ひょこひょこ建物から出て、ひょこひょこ歩き出す。

 レオンもついていく。

 夜の街も明るく、騒がしい。少女や女性たちが1人で平然と歩いている。よほど治安が良いらしい。


「お前、いつも歩いてるのか?」

「かの、歩くの好き」

「あー、そうですか」


 歩くだけでなんもない。見知らぬ街が続くだけだ。

 1時間ばかし歩いただろうか、かのの周囲の時空が歪んだ。

 かのは世界を越えようとしているのだ。

 レオンも引き離されないようについていく。


 現れたのは、魔獣と思われる化け物たちが戦い合う世界。青や紫色、緑色の血が撒き散らされる。

 酷い世界が広がっていたが、かのは気にせずひょこひょこ歩いていく。

 

 途中、襲われそうになったが、かのはそれでも前進を続ける。奇跡的に攻撃がすんででかすって、外れた。

 その後も襲われそうになっては攻撃が当たらないということが繰り返され、レオンは理解した。

 かのはなんかよく知らんが、攻撃が当たらない仕組みなのだと。

 ナニソレ、欲しい。

 

 かのの周囲が歪んだ。

 また、世界が変わった。

 今度は男女がベッドの上でハッスルしていた。

 男女は驚いているが、かのはただ、前進するだけだ。

 その後も次々と世界が入れ替わった。

 世界の移動にこれといった法則性はないようだ。


 魔王と勇者っぽいのが戦っていても前進するかの。ゾンビみたいな奴らの群れが、あひゃあひゃ叫びながら、動き回っていても前進するかの。猛獣が目の前に現れても前進するかの。

 普通だったら、恐れおののいたりするだろうが、何があっても攻撃を自動に回避してしまうのだから、気にせず進めるのだろう。

 レオンはかのについて歩きながら、不動心が一番大事だなと思った。


 そして、世界をいくつ巡ったかわからなくなった頃に、ようやく戻れた。

 屋敷の廊下にレオンは立っていた。

 かのは歩いていく。そして、消えていた。

 レオンはかのがいた場所を見つめながら、呟いていた。


「あいつがいれば、俺は自分の世界へ帰れるかも知れない」

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