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村への帰還と近づく年越し

 馬車に揺られて何日も経った。正直、体中が痛い。だが、その甲斐あってようやく遠くに村が見えてきた。

 村人たちも同じだったらしく、村の入口に村人たちが整列しての出迎えとなった。

「おかえりなさい、奥方。神父様!」

 と村人たちが喜びの声を上げる。 

 エマが無実であることは全国に告知されたとはいえ、無事にこの辺鄙な村にも届いたようだった。


 エマが馬車から降り、ほほ笑みを村人たちに浮かべ、

「ただいま。皆」

 レオンも馬車から降りて、

「おい、奥方は長旅でお疲れだ。 これから屋敷でお休みになるんだよ」

「そうですな。今日はこのままお開きで、明日、奥方ご帰還の祭りを開くぞ」村長が言った。


「あら、ありがとうございます。でも、今は冬至の祭りの準備もあるでしょう」

「そんなのはあとで構いません」

「そういうわけにはいきませんわ。大事な年明けのお祭りですから。ですから、私の帰還のお祝いと冬至のお祝いを一緒の日にやりましょう」

 祭りを2回も開いたら、村人たちの厳しい懐がさらに厳しくなってしまう。

 村長と村人たちは不満げだが、領主のエマの言葉に渋々納得した。


 エマが、

「レオン。私は館まで歩いていきたいのだけど」

「いいんじゃないっすか」

「良かった」


 神父のジジイは、

「ワシは馬車で先に館へ行っておりますじゃ。同行した従者への指示もありますからの」

「あいよ」

「お願い致します」

 エマは頭を下げた。

 馬車が屋敷へと向かっていく。


 二人は村人たちとともに屋敷へと歩いていく。

 木々は枯れ、すでに雪が降ったのか道の所々に溶け残った雪が落ちている。

 そして、村の中央には大量の薪である。この世界では冬至は大晦日にあたり、冬至の翌日が新年となる。

 冬至の日没後から新年の日没まで薪を焚き続けるという習わしがあり、その準備をしているのだ。

 他にも、太陽の神へと聖歌を捧げ、あとは宴会。夜明けになったら、太陽に向かって拝み、復活を祝う聖歌を歌う。


 屋敷に戻ると、従者も神父のジジイもすでに教会へと戻り、いたのはノノと二人の食事を作りに来た村のばーさんだけだった。

 村人は奥方が飯を作る気力もないだろうと気を利かせてくれたのだ。

 確かにその通りで、エマの顔には疲労の色が見える。


 エマもレオンもばーさんが作った野菜スープとチーズの食事を軽く済ませると部屋に戻り、眠り込んだ。


 レオンが目を覚ますと、寒い真夜中で団らん室へ行くとエマがぼんやりとソファに座って、窓の外を見ていた。

 薪は節約のため、使っていないようだった。

「寒いっすよ」

「大丈夫。体を温める程度の魔法は使えるし、温かいお茶も飲んでるから」

「そっすか」

 レオンもソファに座った。


 エマはしみじみと、

「私が暮らしていた場所だと、国によって風習は違うけど、んが付く食べ物を食べたり、柚子という果物を浮かべたお風呂に入ったわ」

「へー」

 エマは、

「私はうどんをよく作って食べたわね」

「うどん?」

「えっと。パスタのようなもので、豆から作ったみそと呼ばれる調味料で作ったタレをかけて食べるの」

「へー」

「こっちの世界だと麺は作れてもお味噌がね……」


 レオンが、

「かのなら味噌を持ってこれるんじゃないっすか? それに、あっちの世界は魔物もいないし、こっちの世界よりも安全そうだから、奥方も一度は行ってもいいかもしれないっすよ」

「本当?」

 エマが上目遣いで尋ねた。

「本当っすよ」


 世界喰いの男の脅威は今のかのの世界にはないはずだ。

 レオンは今度、かのが来たら、エマとともにかのの世界に行こうと思った。だが、かのは自分で自由に行きたい世界に行けるわけじゃないのがネックではあるのだが。

エマは江戸時代初期に大名の女中だったという設定です。この時代のうどんは現代のようなものではなく、味噌ダレをかけていたそうです。

うどんが現代の形になったのは元禄時代(江戸中期頃)らしい。

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