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目覚めた王

 レゼルは自分に掴みかかってくる女をいなしながらも愛おしそうに見ていた。女といっても見た目は少女だ。ここに来たのは17歳の時だから当然なのだが。

 女の肌はところどころ変色しており、禍々しくまるで竜のようだ。


 女には理性や感情などはなく、ただ、本能のままに目の前のレゼルを破壊しようとしているだけだが、彼にはそれで充分だった。


 彼女は自分だけを見て、自分以外は見ていないからだ。

 レゼルは恍惚の表情を浮かべながら、狂った表情の女を見る。

 暴れる女を愛おしい心で見つめる。最高の瞬間だった。


 女の激しい攻撃にレゼルも顔や体に傷がつき、血が流れているがその痛みさえも喜びでしかない。


 レゼルはしっかりと箱の中身を手に入れ、今、自分という箱の中にある。

 赤い黒い光がレゼルのいる空間にもたらされる。

 レゼルの元にその赤黒い光は収束していき、吸収される。


 レゼルの体の傷も瞬く間に修復される。


「まさか、僕にピッタリの魔石を持ってくるとはな。ガレットはすごいや。ふぅ、王に戻ろうか」

 レゼルはそう言って、暴れる女を抱き寄せて、頭を撫でた。

 女の体から力が抜けて、意識を失った。

「もうしばらくおやすみ。だけど、もう少しだけ一緒にいようか」


 レゼルは女を大切に抱きしめ続けていたが、エマの声がした。随分と危機感のある声だ。

 自分のところに来たのなら、よほどのことがあったに違いない。

「妙だな。しょうがない。戻ろうか」そう言って、女を大切そうに横たえた。


 目を開けると、ユージェニーの叫び声がした。聞いたことのないほどの怒りを含んだ声だ。

「陛下から離れなさい! この痴れ者ども!」


 エマは自分の恩人であるため、咄嗟に、

「エマは痴れ者ではないよ」と口に出た。

 そして、起き上がって部屋中を見回す。

「どういう状況なんだ、これは?」


困惑していると、エマの奴隷であるレオンが、

「おめえが聖女と一発かましてガキの一人でもこさえねーもんだから、そこの聖女様はあんたが奥方をいまだに愛してるって勘違いして、嫉妬から処刑しようとしたんだよ! こっちは執行直前にここに逃げてきた! とにかく、おめえが聖女様大好き、愛してるなんて上辺だけでもやって、ガキ作っときゃこんなことならなかったんだよ! 腹かっさばいて詫びれや!」

「レオン! 失礼にもほどがあるわよ」


 レゼルはユージェニーを見た。

「僕に愛されなかった腹いせに、エマを処刑台に送ったってことでいいのかい?」

「い、いいえ! とんでもございません。そ、その女を処刑しなければ、国内が混乱すると、神託があったのです!」

「そうか」

「今すぐにでも、そ、その女を!」

 ユージェニーは金切り声を上げながら、エマを指さした。


 レゼルは冷めた瞳をユージェニーに向け、

「エマを殺しても、僕の愛が君に向けられることがなくてもかい?」

 ユージェニーはハッとなって、レゼルを見た。やっと正気に戻ったようだ。

「エマは僕にとって唯一の友達にして希望だから、とても大事な人だ。でも、これっぽちも女としても人間としても愛してはいないんだよ」

「それなら、その希望に私がなります」

 ユージェニーはすがるように言った。


 レゼルはゆっくりとベッドから起きて立ち上がって、ユージェニーの前に立った。

 エマはレオンの手を取って、後ろに下がった。

「大丈夫だ、エマ。今はきちんとやれるよ」

「念のためです」


 ユージェニーが怪訝そうな顔をする。

「ユージェニーは僕に愛されたいかい? 僕の心がそんなにも欲しいかい?」

 ユージェニーはそれには答えず、

「私はあなたを愛しているのです」

「たとえ、僕が人じゃなくてもかい?」

 瞬間、部屋には途方もない邪悪な魔力が広がり、レゼルの皮膚が黒く、竜のうろこのようなものに覆われていく。


 ユージェニーはあまりの恐怖と驚きで絶叫し、浄化魔法を発動したが、レゼルはいとも簡単にそれを打ち消した。

 そのためユージェニーの恐怖は更に高まり、今度は自身の体も白い光に包まれる。


「仕方ないな」

 レゼルは手をかざすと黒い光が漏れ、ユージェニーの光が消えた。

「あ、あぁ」

 ユージェニーは言葉にならない声を漏らす。また正気を失ったようだ。

「君はその浄化の魔法で、自分の肉体も浄化し尽くそうとしたんだ。死んだりすることはなくても過度に浄化されすぎるのも健康を害すると聞いたよ」


 ユージェニーはまだ正気に戻っていないようだったので、痺れを切らしたレオンが彼女の前へ歩み寄り、思いっきり頬を叩いた。

「正気に戻れよ! 現実見ろよ! 聖女様よぉ! オメーは愛されてないし、奥方が死んでも愛されることはないし、オメーが好きになったのはな、化け物だよ!」

 瞬間、ユージェニーは子供のように泣き出した。


 エマが、

「陛下。王妃殿下にも真実をお伝えしたらいかがでしょうか」

「困ったな」

 レゼルはさほど困っていなさそうに、机の引き出しからネックレスを出した。かつてエマが身に着けていたものだ。

 

 そして、ユージェニーに、

「エマもそう言っているし、僕のことや僕の愛してる人を紹介してあげるよ」


 瞬間、あたりは真っ暗闇になった。

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