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お肉を焼いて仲良く食べる

 エマは館の台所へとやってきて、エプロンを付けた。かのもついて来て、ただ、エマを見ていた。


 レオンはナイフを持って、器用に皮をはいでエマに渡した。


 この館で主に料理をするのは女主人である彼女自身だ。最初こそ料理はできなかったが、自分に古くから仕えてくれたメイドから教えてもらった。この館に移った当初は料理人やメイドもそこそこいたが、客も滅多にこず、館もそんなに大きくない。


 そういうわけで、使用人たちには暇を出した。ただし、掃除や庭の手入れはレオンと2人だけではできないので、掃除や庭の世話は畑仕事が難しくなった村の老人たちに任せている。


 レオンをクビにしなかったのは、クビにできない事情があるからだし、領地の税収や法律関係の仕事を任せるためだ。エマはそういうことはしたくない。


 肉を右手に持ち、ブンブン左右に揺らしながら、


「ワクワクしちゃう。お肉なんて久しぶりー」


 火の魔法でかまどに火を入れた。そして、肉に切れ目を入れ、塩とにんにくを揉み込み、油を塗り込み、オーブンへと放り込んだ。あとは放っておけば完成だ。


 エマは鼻歌を歌いながら、庭ヘ戻り、ハーブを摘んだ。


「かのちゃん! おいしいハーブでサラダ作りましょ」

「うん」


 かのはそう言って、しゃがみこむと、目の前の葉っぱを千切った。


「バカヤロ! それ、草だぞ!」

「草……」

「草も知らねーのか」

「知ってる。地面から生えてる緑色」


 エマは優しく、

「かのちゃん。花壇の中のこの葉っぱを摘むといいのよ」

「わかた」


 エマに言われて、かのは再びしゃがみ、花壇の植物を摘んだ。


「おい! それは貴重な薬草だぞ! ポーションの材料になるんだぞ」

「ぽーしょん?」

「すげー大事な薬だぞ」

「くすり。ごめん」

「これ、摘んどけ!」


 レオンはそう言って、1本の草を取った。

 エマが、

「レオン。それも雑草よ」

「くそ。庭野の手入れが行き届いてないみたいだな。年寄りたちに言っておかねーと」

「なんでも、薬草やハーブの中には雑草と一緒に植えておくと生育が良くなるものがあるんですって。だから、植えてるみたいよ」

「なんだ、それ」

「知恵ってすごいわねー」

「知恵すごい」


 エマはかのと一緒に摘んだハーブを持って、台所へ戻ると洗って、水気を切って、皿に盛った。酢と塩、油を混ぜたドレッシングを用意。


 オーブンの肉も焼き終わり、切り分けてそれぞれの皿にハーブのサラダと一緒に乗せ、テラスで3人で食べることに。


 エマは細かくフォークとナイフで肉を切り分け、口に入れた。


「あら、意外と柔らかくておいしい。何か鶏肉みたいねー」

「弾力はありますけどね」

「おいひぃ」


 肉の味と食感は鶏もも肉に近く、意外とジューシーで脂がよく乗っている。噛むごとに脂が口に広がっていく。

 食事も食べ終わり、かのが立ち上がった。

 空はすっかり夕暮れ時だ。


「かの、暗くなったから帰る」


 かのは立ち上がり、歩き出した。

 レオンも立ち上がった。


 エマが、

「頼んだわよ、レオン」

「任せてください」


 レオンはかのについて行く。

 かのがどこから来て、どこへ行くのかを知ること。

 それが、前々からレオンとエマで決めていたことだ。


 かのは庭から館の中へ向かい、廊下を歩く。すると、空間がかすかに歪んだ。

 レオンはその変化を見逃さずに、いや、空間の歪みを逃すまいと一瞬だけ時を止め、かのの頭を掴んだ。

 目の前の空間が、まるで、手品のように一瞬で切り替わった。

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