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「NISAにも課税を!」という発言に絶句した、とある弱小株式投資家の呟き

 先月末、衆議院議員総選挙が行われ、今回も与えられた投票権を行使してきた。


 若い世代の投票率は毎回低く、「入れても意味がない」「選挙に行っても何も変わらない」などという声を聞くが、「選挙に行く=若い世代でも選挙権を行使するという意思を見せる」こと自体が大切なのだと思っている。


 選挙権を持ってから一度も欠かさず投票しているが、若い世代の投票率は上がらないまま。


 だが、今後も選挙には可能な限り行こうと思う。




 さて今回の選挙戦の間、とある政治家の方の「NISA口座にも課税を」という発言を聞いた。


 後日、謝罪と釈明もあったが自分は正直、言葉を失った。


 NISAとは、毎年120万円の「NISA口座(非課税口座)」内で購入した金融商品から得られる利益が非課税になる制度のことだ。


 つみたてNISAという、専用の口座内で運用した投資信託の利益が最長20年にわたって非課税になる制度もある。


 実はそもそも、株式投資の利益に対する税金自体も現在、住民税と所得税合わせて税率20.315%(以前は10%だった)のみと、かなり優遇されている。


 年間の利益が20万円以下の場合は免税にもなる(特定口座源泉徴収ありの場合は確定申告が必要)。


 これだけ優遇されている理由は一つは、株式投資で利益を出す、出し続けるのは本当に難しいからだと自分は思っている。


 実は、機関投資家などのプロでも年利5%で優秀と言われるくらいだ。


 個人でも、「億り人」と呼ばれる「資産1億円越え」を達成するような人はほんのごく僅かで、多くの人は数年内に元本割れを起こすなどしてやめてしまうのが現実だ。


「名探偵コナン」でたまに、動機が「株で破産したから」みたいな犯人がいて、株は人生を狂わせるものとして扱われているが、まんざら間違いではないと感じる。


 これから投資を始める方へ自分なら、某名作漫画の某弟の言葉を拝借して、まずこう問いかけたい。



「もしかして、自分が損をしないとでも思ってるんじゃないかね?」



 と。



 これまでに出た「NISAは非課税!」「年間利益20万以下なら非課税!」という話は全て、利益が出せることが前提だ。


 しかし、その利益を出すこと自体が実は難しいとしたら......。


 もちろん、損をしようと思って投資を始める人なんてほぼ皆無だろうし、資産を増やしたいと思って始める。自分もそうだった。


 しかし、株式投資は元手を割って損するなんてことは当たり前の世界。


 場合によっては元手を全て失うどころか、借金を負ってしまう場合すらある。


 例えば個別株投資で、「信用取引」という手持ち資金のおよそ3.3倍まで動かせる(レバレッジ)取引だと、失敗した時に大きな損失を被る。


 ここ数年でふと思いつくところでは「サンバイオ(銘柄コード:4592)」というバイオ株の大暴落(ストップ安比例配分という状態が何日も続き、売って逃げることすらできなくなる)時に、それまで信用取引で全力買いしていた人たちが数百~数千万円の借金を負ってしまったなんて話も……。


 ちなみに、FX(外国為替証拠金取引)ではもっと大きなレバレッジを効かせることができるがその分リスクも大きく、「FX戦士くるみちゃん」という漫画では、その恐ろしさがよく描かれている。


(商業化作品ですがweb原作版は今も無料で公開されています)


 自分も5年ほど個別株投資をしていて、期待値の高い取引方法を淡々と繰り返すようになってようやく安定してきたのだが、これまでに勉強代をいくら払ったかわからない。


 NISA口座は非課税。


 しかし、制度が優遇されているからといって、「投資の難易度が下がる」「投資成績が良くなる」訳ではないのだ。


 ここはきっちりと説明しなければいけない部分だと思うのだが、「NISA」「iDeCo」などの制度を調べるとなんだか、「いくら節税できるか」みたいな話ばかりしていて、「いやいやその前に本当に何十年も積み立てられるの?利益を出し続けられるの?」と、ツッコミを入れたくなってしまう。


 自分はそれらの制度を上手く活用するのは大賛成だからこそ、リスクについても十二分に知っておく必要があると強く思う。


 だからこその、


「もしかして、自分が損をしないとでも思ってるんじゃないかね?」


 なのだ。




「貯蓄から投資へ」なんて声も聞かれる昨今だがそもそも、日本ではお金(金融)に対する教育がなさすぎるし、投資への理解度も馴染みもまだまだ低い。


 国として投資を促すのであれば、まずは金融に関する教育を充実させるなりすべきなのに、それをすっ飛ばして「投資してね!自分で頑張ってね!」って、無理ゲーにもほどがある。


 そんな中、自身で勉強したりして投資を始めた人は、厳しい世界に立ち向かう勇気ある人たちだ。


 例えば、コロナ禍で将来に不安を覚えたサラリーマンの方が、NISA口座で投資を開始したとして。


 自身でパフォーマンスの良い投資信託を選別し、実際に取引を始め......素晴らしい自助努力だと思う。


 でも、そうやって頑張ってるところに「NISA口座にも課税を!」となったら、どう思うだろうか?


 曲がりなりにも投資を経験している自分にとっては、「弱いものいじめ」としか感じられないのだ。


 先の政治家の方だけではなく、金融所得課税強化の話はこのところ良く聞かれるが少なくとも、自分のような大した資産もない個人投資家にとって投資は決して楽もボロ儲けもできない世界。


 その中でなんとかちびちび頑張っているんだからあんまりいじめないでくれよと、呟きたくなった次第である。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 選挙は権利というより、義務であると思いつつある今日この頃です。 国民として確固たる意志を、『国民は政治家の成すことを見ているぞ』という姿勢を見せるのが大事ですね。 [一言] 普通の株式口座…
[一言] NISAが使いにくすぎてNISA枠の損失が痛いです。私みたいな取引下手だと非課税の恩恵がまったく感じられないですね。 そんなNISAに課税とか、存在意義がなさ過ぎです。 2024〜強制投資…
[一言] 政治家という名の寄生虫だな。
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