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第三話 過去と夢

今日もよろしくおねがいします。



「お母さま。今日もヴォルター君来るの?」



「あらあら。カリン。ヴォルター君のこと、好きなの?」


「うん。だいすき。大きくなったらけっこんするの」


「まぁ。フフフ。」


 そう言ったらお母さまは笑いました。結婚しようっていてくれたのはついこないだ。


「カリンちゃん。今日も来たの?」


 そう言って天使のような微笑みを見せてくれるのがヴォルター君。お母さまの体調で郊外に来てから、野原で出会った貴族の男の子。やたらきれいな子で、藍色の深くてそれでも澄んでいる瞳と銀色の髪が印象的だった。毎日一緒に遊ぶようになってからはお母さまの不安も忘れるようになっていた。

 お母さまが私、カトリーナのことをカリンと愛称で呼んでいた。それでヴォルター君もカリンと呼んでくれるようになったの。嬉しかったな。



「うん。今日もいっぱいあそぼうね!お花つみたい!」


「ちょっとまっていてねカリンちゃん」


「なんで?」


 そう言ったら、笑ってお花畑に行ってしまった。


 しばらくすると戻ってきて、


「大きくなったら、結婚してくれますか?」


と言って、花束を渡してくれた。


 すごい嬉しかったなぁ。幼心だったけれど私たちは本気だった。


「うん!ありがとう!カリン、ヴォルター君のことだいすき!」


 そう言ったら顔を真っ赤にして耳まで真っ赤にして


「それじゃあ約束だよ!」カリンちゃん」


私の手にキスをしてくれた。



「ヴォルター君、あそぼ!」


「カリンちゃん、ユリアちゃん!」


 いつもはユリアも一緒に遊んでいた。

 三人で追いかけっことか、どろんこ遊びとか心ゆくまで遊んでいた。



 それからしばらくして、ヴォルター君のお婆さまが亡くなって王都に帰ることになったらしいの。

 泣いて泣いてのお別れだった。その後、もう少し事情があったことを知ったが。


「ヴォルター君。大好きだよ!待ってるよ!」


「カリンちゃん、必ず迎えに行くからね!待っていてね」


 そういうと馬車に乗ってしまった。


「また会えるよね〜〜!」


「必ずね〜〜〜!」


「じゃあねカリンちゃん〜〜!」


「ヴォルター君〜〜〜!」


 叫んでるうちに行ってしまった。


「カリン、もうすぐ私たちも王都に帰るのよ」


「王都へ?」


「そう。久しぶりに兄妹たちに会えるのよ。楽しみにしていてね」


 そうして私たちは帰ったけれど、王都で、そしてその後、ヴォルター君を見かける事は無かった。



   * * * * * *



「ヴォルター君……。お母さま……!?」


 目を開けると見慣れた世界。


「夢か……」

 そう夢だけれど本当の思い出。


 お見合いで結婚なんてしません。ヴォルター君、早く迎えに来てよ。


「ねぇ。ユリア。今日ね、ヴォルター君の夢見たの。今どうしているのかなぁ」


「ヴォルター君、懐かしいですね。小さい頃はいつも遊んでいましたものね」


「だから、結婚なんてしたくないのに。ベレーナお姉さまがねぇ。ラファエル様もねぇ」


「政略結婚ですもの……」


「政略結婚ねぇ……」


 そう、政略結婚なのよね。


 スクレイク王国には三大貴族呼ばれる公爵家がある。

 私の家のローゼンハイン家、お兄様の幼馴染のラファエル様のロイエンターエル家、もう一つがアルテンブルク家。ロイエンターエル公爵家にはお父様同士の付き合いもあり、嫡男のラファエル様はお姉さまのベレーナ様に嫁ぐと言われていたのだけれど、お姉さまはセロシアお兄様に夢中というよりは結婚とか恋愛に興味がないらしいのよね。それできっと私に話が振られているのだと思うのだけれど。


 今まで政略結婚で幸せになった例など数少ない。私の国のスクレイク王国にはあまり身分差別がないけれど、大貴族となればそれなりの相手を、ということになる。

 親は家のことと、子供のこと、どちらが大切なのかしら。




 そんなことを考えていると、時は過ぎ。

 パーティー当日。


 朝からエステでもみくちゃにされた私は、どちらかというとシンプルで可愛らしいドレスを着ていた。隣ではまた同じようなドレスを着たユリアがいた。私の髪は金髪。ユリアは綺麗な黒髪。ユリアはストレート。私はどちらかというとフアフアなくせ毛。ユリアには憧れるのよね。


 今日は(ローゼンハイン家)でやるので接待にお父様とお義母(かあ)様は忙しいと思うのだけれど。朝からゆうゆうと着替えたお父様とお義母(かあ)様は私達に、


「あら、まぁ。綺麗よ、カトリーナさん。相手をはきっとうじゃうじゃくるわね」


なーんて、のんきなことを言っているし


「おおきれいだよ。天国のお母さんが喜ぶだろうな」


なんて、嫁入り娘の親?の口癖をつぶやいているし。


 兄二人のうちセロシア兄様は、


「頑張れよ。あっ、静かにな」


って言っているし、ふん。


「ええ、静かにしていますよ。……お姉さまが一番目立つだろうから」


「なんですって!!!!」


 以下無視。


「今日はカミリアも来るんだぞ。楽しみにしていたからな。」


とはカテール兄様。カミリア様はお兄様の婚約者。フレンツェル侯爵令嬢で噂の美人さんなんだけれど……。わたくしのなにを楽しみにしていらっしゃるのですか?



 パーティーが始まり、色々な貴族の人に挨拶をし、それだけでくたくたになった。


「まあ、○○伯爵様、ごきげんよう」


「ごきげんよう。今日は来てくださいましてありがとうございますね」


 とこんなかんじで。でもやっぱり、ラファエル様がいらしたときには、主に若い令嬢たちから歓声が上がった。私のいえは、家の付き合いなのできちんとご挨拶しましたわ。


「おぉ。よくぞ来てくださいました」


「今日はありがとうございますね」


「……今日のことは頼んだぞ…ペテン師」


「わかっているさ」


 セロシアと、ラファエル。悪党みたいな笑みを浮かべて。

 そんな会話がされていたのは、カリンことカトリーナは知らない。


「まぁ、カミリア様。ご機嫌麗しゅう」


「あら、カトリーナ様。ごきげんよう。ウフフフ」

 

そう笑って挨拶をしてくれました。その後の笑い方は何なのでしょうか?そして、お兄様カテールと意味ありげに顔を見合わせて笑っております。


「わたくしは出なくていいかしら」


とか言いながらハデハデのドレスを着ているのはお姉さまらしい。私が思うに、お姉さま、誰かのことが好きなのではないでしょうか。不器用なのかしら。まぁ、お姉さまはすごいお人形さんみたいな美人なのだけれどね。


 しばらくダンスや社交辞令につきあわされて休憩していると、ラファエル様が近づいてきました。私がそちらを見ると、ニッコと微笑まれました。これが噂のスマイルでした。私はもっと違う笑顔も知っているのですが。



 そうして私の目の前の位置に座ると、


「私と結婚してくださいますか?」


 にっこり微笑んでそういわれました。


「えぇぇーーーーー!!!?」


「ラファエル様が、私にですか?」



突然の申し入れにびっくりして聞き返すと、


「はい。してくれますか?」


という答えが帰ってきました。


「……はい?……」


 と質問系にしたはずなのに、本当になってしまった。

というのがこれまでのいきさつ。


ラファエル様はしばらくすると戻って来ました。


「貴女の父上、ローゼンハイン公爵に許可はもらってきました」


「はい?」


 お父様、もしかしてこれを計画していたのかしら。みんな揃ってペテン師なんて、何なのかしらね。

 そう考えている間にペラペラと喋りました。


「実はですね。私の親がですね、早く身を固めろとうるさくてですね。そんなところに貴女の父上が悩んでいたのですよ。ベレーナ嬢が結婚しないと言っていたみたいで、頭を抱えていましたよ」


 そうなんですか。それでどうしたんですか。


「それで、ベレーナ嬢に縁談を持ちかけたらしいのですが、蹴られてしまいましてね。ベレーナ嬢もいいのですが、貴女のその瞳とその髪、その性格が好きです。まぁ、それはいいとして、貴女が受け入れてくれて、私も私の父上も、たいそう喜んでいますよ。ローゼンハイン公爵はたいそう喜んでくださいましたよ。婚約パーティーは後でしますからね。それでは」


 そう言ってさっそうと行ってしまいました。やっぱり政略結婚ですよね。でも、いくら政略結婚でも、冷たすぎないかしら。



 ラファエル様が行ってしまうと、いつも仲良くしているお嬢様方がいらっしゃいました。ブラント侯爵令嬢セレーナさん、カレンベルク侯爵令嬢シェリーさん、クロイツェル伯爵令嬢パメラさん、リンハルト伯爵令嬢メイヴィスさん。そしてユリアこと、シュティール侯爵令嬢リリアン。ユリアは愛称!(ユリと呼ぶこともあるよ~。)


 今日は若い貴族のご子息が多いから、それに伴って若いご令嬢も多いと思うのだけれど。皆さん多分、夜会やパーティー全部参加していると思いますわ。


「あら皆さまごきげんよう」


「「「「ごきげんよう~。」」」」


 息の揃ったお返事が返って来ました。はて。それはいいとして、


「皆さん、良い方見つけられましたか?」


そう言うと、私は期待のこもった瞳で見つめられました。


「あら、カリンさん。ラファエル様といましたよね。どうでしたの?」


「まぁ、セレーナさん。そうでしたの?」


「あら、何のんきなこと言ってらっしゃるのメイヴィスさん。あの瞳はきっと……」


「あら、パメラさん、それ以上はいってはいけませんはわ。けれど……」


「「「「何を話していらしたの?求婚?」」」」


 そう言ってキャーキャ言っています。ユリア!!ユリアの目を見ると、


「たいそう楽しそうに話されていらしましたよね、カリンさん?」


これぞ拷問です。諦めることにします。


仕方ないなぁ。諦めます。


「まあ、そうなんですよ。プロポーズされましたわ。あれをプロポーズと言うなら、っていうか、はいって、言っていない「「「「「おめでとうございますわ!!!」」」」」


 あぁ〜。あれをプロポーズと言うならねって……ね。返事もきちんとしていないのに、決めてしまう

なんて、鬼畜よ。ペテン師以外の何物でもないと思うのよね。という、私の思いも虚しく、彼女たちには関係ない。


「カリンさんとなら、お似合いですね」


「美男美女」


「「「「絵になりますわ〜!!!」」」」


 いつもこの調子。あぁ、言わなければ良かったわ。頭痛くなってきたわ。


「カリンさま?どうかしまして?」


 ええ、今日はどうかしているわよ。





読んでくださってありがとうございました!

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