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女嫌い王太子は恋をする。※ただし、そのお相手は乙女ゲームのヒロインではないようです  作者: ごろごろみかん。
二章:恋の自覚

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話し合い




…………眠れるわけがない!

フェシーが退室して口止めがされた侍女に甲斐甲斐しく世話を焼かれる。切られた髪は痛々しそうに見られたがそれも含め丁寧に処置を施してくれた。

髪に馴染む香油の匂いに少し気分が落ち着く。


ーーー恋ってこんなにはためんどくさいものなのね………


今まで自分に無縁だと思っていたが、恋ですったもんだする人のことはよくわからなかった。白眼視していたとも言う。恋ごときで慌てふためくのはどうなのかと、絶対あとから後悔すると人知れず思っていた。だけどいざ自分が恋してみると………


これは平常ではいられないわ………。

フェシーにどう思われているのだろうか。多分そこまで悪感情は抱いていないはず。彼は私に優しくしてくれる。それは王太子夫妻の面目のためだろうけど、でもそこまでは嫌われていないはず。二人きりになっても嫌そうな顔はされない。

でも好かれているかと聞かれると………それは微妙。フェシーは優しい。だけどそれは私が王太子妃だから。恋愛的な感情はきっと持ってないに違いない。

マイナスからのスタートでないことに喜ぶべきなのか、夫婦なのにゼロからスタートなことに嘆くべきなのか。

いや、でも私はひとつだけ喜ぶことがある。それは既に私とフェシーが夫婦ということ。

それはつまり、既にゴールインしてるも同じ。何も焦ることは無い。そう、焦ることは………ないはずなのに。

彼にどう思われてるか考えるだけで胸が逸る。

なんだか無性に羞恥心駆り立てられて、意味もなく鏡を見つめてしまう。

フェシーは酷薄な人だ。利用できるものは利用する。きっとそれは私も例外ない。

王太子妃としての責務をこなさなければ私は彼の妻という役柄すら失ってしまう。


………それは嫌。

惚れた方が負けとは誰が言い出したのか。全くその通りだと思う。


私はため息をついてベッドに倒れ込んだ。眠気はまだ来ない。



…………ちゅんちゅん、という鳥のさえずりが聞こえる。

ああ、徹夜してしまったわ………。

うっすら眠ったが、眠りは浅くすぐに目を覚ましてしまうこと計5回。


寝ては起きてを繰り返して見事に寝不足。

肌の調子が悪い気がする。こんな時に化粧したらさらにお肌が大ダメージだわ………。寝不足は大敵だとお母様が言っていたのに、やってしまった……。

あのあと考え込んでいたら眠れなかった。アヤナ様はどうしてるのだろう。フェシーの言っていた仕上げって何?

このままルデンに帰るって言っていたけれど………色々どうなったのかしら。

アヤナ様の魅了問題。

多発する婚約破棄。

王太子妃の暗殺計画。

王室への不信感。

どれをとっても一大事である。フェシーはいったいどう対処するつもりなのだろうか………?


ここまできて、私は除け者なんて酷いじゃない。文字通り体を張って取ってきたピンクドロップの行く末くらい見届けたい。こんなところでだらだらしてる場合じゃないわ!


私ははね起きるとそのままサイドテーブルのベルを鳴らした。現れたのは私がルデンから連れてきた侍女。ミアーネだ。


「おはようございます、早いですねユーリ様」


「おはようミアーネ、突然なのだけどフェシー………ファルシア王太子殿下は起きてらっしゃる?」


「殿下ですか?起きてらっしゃいますよ。ただ、ユーリ様にはお昼までごゆっくりしていただくよう指示を承っております」


ミアーネは簡単にそう言うと紅茶を飲むか聞いてきた。私は手を振ってそれを断る。ミアーネの紅茶は美味しくて好きだけど今はそうしている暇はない。


「殿下に取り次いで。お伝えしたいことがあるとお伝えして。私が殿下の部屋に行ってもいいならこのまま向かう………あら?私たちの部屋はひとつよね?殿下はどこで寝てらっしゃるの?」


そう言えばここに来てからずっとフェシーと寝泊りが一緒だったことを思い出す。私の疑問にミアーネがすぐに答えてくれた。


「ガレット殿下が用意してくださったんですよ、自分がいるとユーリ様がごゆっくり出来ないから用意して欲しいと、ファルシア殿下の仰せです」


「そう………」


何よ、実際ゆっくりできないのはフェシーの方じゃない。私はフェシーがいないから夜眠れなかったのよ。別に変な意味はなく何も説明されず部屋に放り投げられたからだ。

私は一歩も引かない姿勢でミアーネに言った。ミアーネは困った顔を作るとうーんと唸る。


「だけど殿下に………」


「ミアーネ、緊急を要するの。お願い」


「………大事なことなのですね?」


どうやらよっぽど私を部屋から出さないように、そして昼まで大人しくさせているように言い含められているらしい。たいぶミアーネは渋ったが、私が言うとややあってから頷いた。よっし私の勝ちだわ!


「分かりました、ただし、ファルシア殿下にこちらにおいでいただきます。私の判断でユーリ様を部屋からだすことはできないので………」


もはや監禁じゃない、それ。

喉元まででかかった言葉をなんとか呑み込んだ。

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