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女嫌い王太子は恋をする。※ただし、そのお相手は乙女ゲームのヒロインではないようです  作者: ごろごろみかん。
一章:疑念

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叶わぬ恋



「ーーーー」


「下手に嘘つかなくていいよ、見ちゃったんだろ?」


「……………わた、しをどうする気?」


声が震えそうになる。今ナイフを突き立てられたら逃げ道はない。この時の私は思わず、魔力を爆破させればいいという単純な回答も失っていた。それだけに混乱していたのだと思う。


「んー、処分?」


「…………」


「なんて冗談だよ。とりあえず情報が欲しい。王太子妃アヤナについて、アンタはどれぐらい知ってる?」


「アヤナ………様?」


喉がカラカラだ。私の返答にくるりとグランがナイフを回した。銀色に輝くそれは窓の外から入り込む月の光に反射して淡く光っていた。


「それを知られたんなら隠す必要は無いな。あの女の弱点と………警備が弱くなるタイミングを言え」


「……………そんなの、」


知らないわ、と愚直にも答えようとした時、ガッと勢いよくナイフが私の顔の前に突き出された。あと少しもすれば私の鼻に触れそうなほど近い距離。目の前にナイフが突き出されて、思わず体がぶれた。


「知らない、じゃ困るんだよ」


「………」


考えろ、考えて。

グランは私を始末しようとしている。それはなぜ?王太子妃暗殺計画…………アヤナ様の暗殺計画が私に漏れたから。なぜ私に漏れるとまずい?それは私が有力貴族の娘だと彼は信じているから。このまま戻せば彼らに不利な状況を作り出すと思っているから。

それなら。私は意をけして口を開いた。


「…………知りません」


知らないと言葉を口にするとぐっとさらにナイフが近づいた。


「だけど!」


叫ぶように続けて言う。これは賭けだ。私はぐっとグランの目を力強く見た。お願い、上手くいって………!


「私もその計画、乗らせてください!」


上手くいくか、一か八か。

力強く言い切れば、グランが目を見開いた。それはそうだろう。今の今まで処分しか考えてなかっただろう。そんな私に味方にしろと言われてすぐに反応できる方がおかしい。現に彼はじっと私を見て、少しだけ口の端を持ち上げて笑った。


「なぜ?」


「私もあの妃殿下に恨みがあるからです」


「ふうん?詳しく」


短く言う彼に、先程組みたてたばかりのストーリーを展開した。粗があり、少し解くと矛盾しかない。どうか、彼に突っつかれないことを祈る。


「………私のお嬢様は婚約者とあと少しで婚姻なさる予定だったんです。ですがアヤナ様………妃殿下が現れて、すべてが変わりました」


「そのお嬢様の名前と婚約者の名前は?あと、アンタの名前も併せて言え」


………鋭い。こう言われると思っていたからこそ私が婚約破棄された令嬢ということにはしなかった。ありもしない名前を告げても調べられればすぐに嘘だとわかる。

下手な芝居はこいつには通用しない。私は背筋を張って答える。


「………私のお嬢様の名前はレイチェル・ミッドフォーニア伯爵令嬢。お嬢様の婚約者のお名前はニケル・アッドフォン伯爵子息。私の名前はユーリ・ランスターです。………私はお嬢様の婚約者………ニケル様のことを図々しくもお慕い申し上げておりました。だけどこれは叶わぬ恋」


突然始まった私の独白にグランが眉を顰める。言葉を切らしたら負けだ。一気に信憑性が落ちる。私は目をふせて、さながら悲劇のヒロインのように言葉を続けた。

ちなみにレイチェル・ミッドフォーニア伯爵令嬢もニケル・アッドフォン伯爵子息も実在する人物だ。もっと言えばユーリ・ランスターももちろん存在している。

私がこの知識を得たのはルデンにいる時で、念の為調べたのだがまさかそれがここに来て生きるとは思わなかった。文字通りこの知識が私の命綱だ。

ユーリ・ランスターの容姿は知らない。調べられたら間違いなく嘘だとわかるだろう。だけど髪色も瞳の色も染めたり魔術で誤魔化しているといえば何とか……。いや、詳しく調べられる前に蹴りをつけさえすれば。幸いにもレイチェルとニケルは実在するしユーリもまた然りだ。書面上ではその名があるし、簡単に調べられるだろうがそこは問題ない。書面に記された文字と私の口にした名前が一致するとあれば信憑性は高まるだろう。

まさかユーリ・ランスターの容姿までは探そうとはしないはずだ。そこまでしないはず。………しない、わよね?


ユーリ・ランスターの容姿と私が一致する可能性は低いだろう。私の髪はありふれた茶色だが紺の瞳は珍しい。容姿を探られたらおしまいだ。

そしてレイチェル・ミッドフォーニア伯爵令嬢もまたごく最近に婚約破棄されている。アヤナ様と何か関わりがありそうで念の為調べておいたのだ。本当、まさかこんなところで生きてくるとは…………。

思わなかったわ。


「報われないと分かっておりましたが、この想いを消すことは出来ませんでした」


私のキャラではないと分かっていても、だけど哀れな侍女を装わないと私が死ぬ。

私は悲しそうに言い切ると、そっと視線を上げた。そこには困ったような顔をしたグランがいた。そうよね、いきなり独白劇が始まったら誰だって困惑するわ。



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