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女嫌い王太子は恋をする。※ただし、そのお相手は乙女ゲームのヒロインではないようです  作者: ごろごろみかん。
一章:疑念

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手がかり



「調べたい花があって………図書館で探してたら………」


「そうかよ。…………そーいや、ヒューリーのじいさんがこの町にはいるな………」


「ヒューリー?」


「アンタ、まだその花を探したいのか?」


突然問われた質問に、しかし悩む隙間なんてなかった。私は一も二もなく頷く。


「ええ」


「そうかよ。アンタラッキーだな。この町には王宮薬物師の上の方にいたじいさんが引退しているんだ。あの人に聞きゃ少しはわかるかもな」


「本当!?」


思わず声をはりあげた私に、グランは目を丸くしていたが、ややあって頷いた。


「アンタ、そんな声も出せんだな。ああ、ちょっと待ってろ」


そう言ってグランは机の引き出しから一枚の便箋を取り出すと何事か書き始めた。スラスラと書かれた文字は恐らくそんなに長くない。


「ほらよ、これをヒューリーのじいさんに渡しな。ああ、その格好じゃ目立つか…………ちょっと待ってろ、妹のがまだあったはずだ」


そう言うとグランはおもむろに立ち上がり、部屋を横切った。どこに行くのかしら?目で追う私に、彼が言う。


「そこから動くなよ、いいな?」


「え、ええ………」


強く言われ、思わず頷く。私の反応を見たグランは軽く頷いて、再三私に言う。


「いいか、余計なことはするなよ」


余計なこととは。

とりあえずここから動かなければいいのかしら………。それより、私にみられたら不味いものでもあるの?それともただ単に私が怪しい人物に見えるとか………?

グランの意図が読めない。それに突然協力的になって…………なんのつもりかしら?


「………ここからどうすればいいの………」


花について調べたとして、どう王宮に戻るか、だ。長く不在にはできない。さすがに王太子妃の安否を問う声も出てくるだろう。体調不良で誤魔化すにも限度がある。

………それに、何よりフェシーに迷惑をかけている。心配しているかしら。いや、迷惑よね………何としてでも王宮に戻らなければ。

だけどそういえば……あの時の護衛アトランはどうしていたのかしら。彼は無事?

そもそもどうして私は、いえ。どうやって私は誘拐された?目的は?主犯は誰………?今考えても分かることではない。唯一の手がかりと言える馬車と御者は私が爆破してしまった。御者は生きてるだろうけど、今あったところで再度誘拐されるのが落ちだわ。

長い溜息をついてると、不意に扉が開いた。


「待たせたな。ほら、服だ。お貴族様の着るようなもんじゃねえだろうがその格好でうろつくわけにもいかないだろ?」


ばさりとおもむろに服が投げられる。顔に思い切りかかり、「うぷっ」という情けない声が出た。そろそろとそれを手に取って見ると、町娘のようなワンピースだった。これなら町を歩いても不審がられないだろう。


「………ありがとう」


「それと、この手紙を必ずヒューリーのじいさんに渡しな。あのじいさん頑固者だから、これがなきゃ話すら聞いてくんねえぞ。ああ、それとまあ………手紙を盗み見るようなはしたない真似、貴族のアンタがするわけねえよな」


「え………」


「んじゃ、幸運を祈るぜ」


そう言うとグランは私に手紙を押し付けてきた。咄嗟にそれを受け取る。手紙はきっちり便箋に入れられてるようだ。

………薄々思っていたけど、彼、ただの平民ではないと思う。

平民にとっては本も、手紙も、もちろん便箋だって高級品扱いだ。それを簡単に用意できるということは、それが可能な金銭状況ということ。

彼は貴族を嫌っているようだった。ということは、商家の遠縁?それとも…………。

黙り込んだ私の肩を急に押される。


「きゃぁっ………!?」


突然の事で思わずたたらを踏むと、グランが私の肩をおもむろに押していた。

な、何するのよ………!びっくりした。


「早く行けよ、こっちだって予定があるんだ」


「え?え、ええ、あぁ、そうね。分かったわ」


「ただでさえクソ忙しいんだ………さっさとじいさんとこ行って情報もらってきな」


グランにしっしっと追い出されるようにして部屋を出る。うーん、やっぱりコイツ失礼。

だけど家なし状態では何も言うことはできない。家に置いてくれるだけありがたいと思うことにしよう。

私は部屋を出ると、そのまま廊下を歩いた。便箋にはご丁寧に道順まで書いてある。

この家を出て右に曲がって真っ直ぐ行くと赤レンガの家がある…………そこを左に曲がり、右手に青い看板がぶら下がっているから、その家が例の“ヒューリーじいさん”の住処らしい。

迷わないでいけるかしら……?

何をどうすればいいか分からない。一歩先は闇の中。方針だってしっかりしたものではないし、最悪な事態だってもちろんありうる。その中で最善と思える、最善だと私が思う道を選んでいかなくては。

危機的状況だし下手ふむと命に関わる。

だけどその中でもイレギュラーなこの状況が。

王女の時でも、王太子妃になってからはもちろん。味わえなかった高揚感が少し………自分の中にあった。正直少しだけワクワクしている。サバイバルってこんな感じなのかしら?いやもっと過酷よね。

とにかく私は王宮に戻らなくては………。それには今ここでできることを最優先で行って、手がかりゼロで王宮に戻るようなことは避けたいわ。


町は相変わらず人通りが少なかったけれど、陽が高くなったからだろうか。先程よりはちらほら人が出てきていた。

その間を縫うようにして移動して歩いていくと、グランの便箋に乗っていたように青い看板が吊るされた家が見えた。



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