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女嫌い王太子は恋をする。※ただし、そのお相手は乙女ゲームのヒロインではないようです  作者: ごろごろみかん。
一章:疑念

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大爆発



「………」


ふむ、とひと段落資料書を読み込んでぱたんと本を閉じた。どうやらこれも外れのようである。あの花の情報収集は思った以上に難儀していた。

集中しすぎるあまり、つい本を立ち見してしまう。テーブルに戻って確認する手間が惜しかったのだ。薄紫の花………ねえ。見つからないわ。


あの後朝食を終えた私は王立図書館に向かい、そこで本をあさり読んでいた。本日はデイ・トワール。聖なる日ということでほとんどの人は家から出ない。なので図書館は思った以上に人が少なかった。アトランを連れて図書館を回る。だけど私が往復するのはテーブルと本棚だけ。

わざわざ本棚まで付き合ってもらうのも悪いし面倒なのでアトランにはテーブルで待ってもらっていることにした。

何回もその間を往復することになるものね。

そんなに離れた場所でもないし問題ないだろう。テーブルは部屋の入口に近いから、不審人物が入ってこようとしたらアトランがすぐ気づく。


「あ、色はこれに近いわね………」


ベルフラワー。紫のインクをとかしたような、薄い色が染み込んだ花。だけど花の形はもっとこう………花の枚数が多かったような気がする。だけど雰囲気はだいぶ近い。花の情報が記載されており、その下に花言葉がのってある。

ベルフラワーの花言葉は感謝、誠実、楽しいおしゃべり…………。ふうん、まあ、社交界で渡すとしたらあまりいい意味に取られなさそうね。特に楽しいおしゃべり、なんて裏の意図を探らざるを得ないわ。これが気心のしれた友人からのプレゼントだったら嬉しいのでしょうけど。

そのままページをぱらりとめくる。あまりここに長居するとアトランが心配してきてしまう。実のある内容そうだったらテーブルまでもっていこう。

そのままペラペラとめくっていく。ああ、そうね………色味的にはこの花が近いかしら………。そっと視線を移す。


「ライラック………」


花言葉は確か…………

そこまで考えた時、不意に目の前に黒い影が過ぎった。何かしら………。そう思った時、頭に強い衝撃を受ける。


「っ…………!」


ぐらりと視界が揺れて、天井が目に入る。最後に目に入ったのは黒いフードをかぶった謎の人物………

私は誰かに襲われたのだと、床に打ち付けられた衝撃で気づいた。だけど、相手が誰なのか、一体何が起きてるのか把握するにはあまりにも時間が無く、ついで頭の中がぐらぐらと揺れ始める。

自分の体に起きた異常事態に、なにかされたのだと気づいた時にはどうしようもなく、私はそのまま意識を飛ばした。




×××



目が覚めると、手首が痛んだ。

いや、手首が痛んで目が覚めたのかしら………?しかしそんなことはどうでもいい。薄らと目を開けると、そこは何かの中らしかった。隙間から光明が僅かに差し込む。どうやらここは木箱のようだ。


………ここは?

恐る恐る手を動かす。箱、のようなものは狭い。そして縦に長いようだった。がたがたと揺れる音からして、ここは………

馬車の中?いや、荷台?どうにかして木箱から出られないか手を這わせる。だけどしっかり釘が打たれているのか、強く押しても箱は開きそうになかった。

じわじわと焦りが侵食する。私はさらわれた。

だけどなぜ?アトランはどうしたの?

ここはどこ?一体この馬はどこに向かっているの?

焦りはやがて焦燥へと変わり、パニックを引き起こす。自分が混乱していることを自覚した私は意識して呼吸を落ち着けた。

大丈夫、落ち着け。落ち着いて。

私はまだ生きている。隙さえあれば逃げることだってできる。

だから、その隙を見つけないと。ここで暴れたって何もいいことは無い。

だけど、何か行動に移さなければならないのでは。このまま私は死ぬのではないかと考えると恐怖で手足が硬直した。


「………………」


ゆっくり、長い息を吐く。耳をすますとガラガラとしいう車輪の回る音が聞こえる。そして、それ以外はなんの音もしない。………ということは、ここは人の少ない山道とか、かしら?

そのまま箱の四方にぐっ、ぐっ、と指に力を入れて押してみるが、開く気配は全くない。自分の力だけではどうしようもない。物理的にどうこうする選択肢はそうそうに潰えた。


………と、なれば。

のちのち考えると、この時の私は思った以上に焦っていたらしい。混乱してると自覚していても平常心を取り戻すのは難しい。

私はそうそうに手足を使っての脱出は諦めて、違う手を使うことにした。

私は魔力のコントロールが非常に苦手だ。それは自分の髪を乾かそうとしても爆発させてしまうほどには、苦手だ。

だけどこの状況であればそれは利点になる。魔力コントロールが苦手な私だからこそできること。

私は目を閉じて魔力をゆっくりねり始めた。ただでさえ苦手なコントロールを、自ら手を離す。

そして小さく呪文を唱えた。


結果は……………


大爆発である。







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― 新着の感想 ―
[気になる点] そろそろ、フェシーの心情が気になります。 [一言] いつも、楽しみに読んでます。 私の中で、1番楽しみにしている読み物です。 テンポよく書いていただけるのは、とても嬉しいです☆ 出来れ…
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