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女嫌い王太子は恋をする。※ただし、そのお相手は乙女ゲームのヒロインではないようです  作者: ごろごろみかん。
一章:疑念

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朝の攻防戦



そのままじっとしていると、静かな寝息が聞こえてきた。


………待って、嘘でしょ?

思わずちらりと視線を逸らすとそこには既に眠りの世界に入ってるフェシーの姿が。

…………寝付き早くない!?

緊張してたのは私一人だけかと思うと急にバカバカしくなってくる。ベッドに入って一分もしないうちに眠りに落ちるほど疲れていたのか、いつもそうなのか。

どちらなのかは分からないが、健やかに眠ることが出来て羨ましいような、憎らしいような。

私はこうも目が冴えてしまっているというのに。

じっとフェシーの顔を見る。眠っているからこそできることだ。

そして広い寝台の上、じりじりと近づくとじっとその顔を見た。………うーん、やっぱり綺麗な顔してわね。


(腹立つくらい、綺麗な顔)


そっと手を伸ばして、触れるのに躊躇う。


(ま、こんなお綺麗な顔じゃあトラブル三昧よね。そりゃ、女性が嫌いになっても……おかしくない、のかしら?)


そう思うとほんの少しだけ哀れになる。

そのままそろそろと手をおろして私はフェシーの指先に、小指に指をからませた。たったそれだけなのになんだか自分が非常にいけないことをしているような気分になる。


私、ほんと、何やってるのかしら………


そう思うとぼっと顔に火がついたように赤くなる。だけどなんとなく触れた小指は離せなくて、そのまま指を絡めた。


どうして触りたくなったのかは分からない。あまりにも綺麗だから、生きているのか確かめたくなったのかもしれない。

だって、ビスクドールかホムンクルスみたいだったから。


そのままそっと指を絡めていたがやがて、私はそろそろと指を動かした。

私よりも大きな手に、綺麗な指先。

あ、でも剣だこもある。意外、鍛えてるのね?


するりと指の腹で手の甲をなぞると、なんだかえも言えぬ感情を覚えた。


「うん。よしよし、フェシーは生きている、ということで」


さっさと寝よう。

そう思うとさっと指先を離して、私もゴロリと反対方向に寝転がった。

いつのまにかフェシーの寝息は聞こえなくなっていた。



×××




次の日。起きるともうフェシーの姿はなかった。朝早いようで何よりである。おかげで顔を合わせずに済んだ。

起き上がると私はぼんやりとする頭で窓の外を見る。うーん、今日もいい天気………

そのままぼんやりしていたが、扉を叩く音ではっとした。意識が覚醒する。


「起きてらっしゃいますか、ユーリ様」


「ミアーネ………うん、今起きたところよ…………」


「ユーリ様は朝が弱いですからね。特に昨日はファルシア殿下と一緒でしたし。もっと寝起きが悪くなるかと思いましたわ」


「………どういうこと……よ………うん……」


眠過ぎてまともな回答ができない。未だにうつらうつらしている私に、まともな返答は無理だと判断したのだろう。

掛け布団がべりっと剥がされた。冬に片足突っ込んでる季節だ。布団を取られればもちろん、寒い。


「きゃあ!」


「ユーリ様、今日は修道院を訪問するのでは?」


「えっ!?あ、ああ………そうね………そうだわ…………ねえ、ミアーネ。寒いわ」


「起きましょうね、ユーリ様」


そのままズルズルとベッドの中に籠城作戦をしていたが、しかしそれは呆気ないほど簡単に終わりを見せた。がちゃりと扉が開かれて、聞き慣れた声がしたからだ。


「あれ、ユティはまだ起きてないの?」


「おはようございます、ファルシア殿下。ユーリ様はお目覚めが悪………」


「おはようございます!今起きましたわ!こっち見ないでくださいませ」


まだいたのか!というか戻ってきたのか!はやすぎない!?神速でベッドから腹筋を使ってすっと起き上がった私を見て、ミアーネがなにか言いたそうにしている。

ええ、ええ、分かるわ。いつもなら何したって十分程度は布団から出てこないものね。なのに今日に限って起きるのが早いのだからミアーネの気持ちもわからないでもないわ。


「これは………使える」


そしてこの方法を常套手段にしないでほしい、ミアーネ。

フェシーに弱みを、というか情けないところを見せたくない。ただの意地だが見せたらなにかが負けなきがする。私は布団に戻りたくなる気持ちを抑えてふらふらとベッドから降りた。冷たい空気につつまれて温もりが恋しくなる。


「朝の庭園は美しいよ、一緒に見に行こうか。朝食まで時間はあるし」


「……………そう、ですね」


どうしてこの人は朝から元気なのだろう?

しょぼしょぼする目でさえない返事をする。

むろん顔は背けている。寝起きの顔など人様に見せたくない顔No1だ。


ぶっきらぼうな返答をされたにも関わらずフェシーは楽しそうに口端を上げている。珍しい。取り繕った顔じゃないんだ。

外行きの微笑みではない純粋な笑みを彼の顔にみつけて、思わず見つめてしまう。


「それじゃあ、ユティの用意ができた頃にまたくるから」


「ユーリ様をお待ちにならないのですか?」


「さすがに女性の身支度をそばで見るわけにはいかないよ、手伝っていいというのならするけど」


「結構です!大丈夫ですわ!お気持ちだけいただきます!」


声をはりあげたのは私だ。手伝いですって!?そんなのされたらたまったものではない。私は速攻でシャキシャキ動き、ミアーネの手伝いを借りて速攻でドレスを着た。

もちろんフェシーは客間である。私を待ってくれているらしい。

なんだか、いつもとフェシーの様子が違う気がする。

………気のせいかしら?

私はどことなく不安定な心を抑えながら客間へと向かった。


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